ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ドンサホンダム>ラオス政府、MRC協議を経ずにダム関連工事を開始
メコン河開発メールニュース2013年8月2日
ラオスで建設が予定されている、ドンサホンダムについての続報です。観光や漁業で暮らす地域でのダム開発は、長い間議論されてきました。ダムの情報はこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html
ラオス政府は、流域の水管理を4か国の合意で行うために結成されたメコン河委員会(MRC)の協議が終わらないうちにメコン河本流でサイヤブリダムの建設を進めるだけでなく、協議を経ずにこのドンサホンダムにも着手しようとしています。このままでは、ダムによる地域の環境・社会への影響が詳細に検討されないことはもとより、MRCの存在意義も問われる事態となります。
日本政府は、「日メコン協力のための東京戦略2012」の中で、環境及び気候変動課題のための行動及び措置として、「メコン河委員会の枠組みにおける,メコン河本流での水力発電案件による影響を含む,メコン河の持続可能な管理と開発に関する調査のための行動と措置」を掲げています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/j_mekong_k/s_kaigi04/joint_statement_jp2.html
下記は、Radio Free Asiaの関連報道の翻訳です。
2013年7月31日
RFA
ラオス(政府)は今週、論争の渦中にあるドンサホンダム事業に先立ち、労働者住宅を建設するための整地をしていることを認めたが、ダム本体の作業は始まっていないと述べた。
この水力発電事業は、東南アジアの動脈とも言うべきメコン河の「4,000 の島々(シーパンドン)」と呼ばれる地域で予定されている。事業は合弁で、マレーシアのメガファースト社が80%、ラオス政府が残りのシェアを保有する。
環境団体は、この事業が、川魚の遡上や降下両方の回遊を混乱させ、村人の生活と地域の生物多様性を破壊すると述べ、ラオス政府に対し、地域へダムがもたらす可能性のある影響について、建設を始める前に4カ国が参加するメコン河委員会(MRC)で協議するよう求めている。
「いや、まだ建設は始まっていない」とラオスのエネルギー·鉱業省の当局者は月曜日にRFAに語った。
「彼らはデータを収集し、環境への影響の評価を見直し、社会的な問題を見て、何をどこに建設するか決めている最中だ」、と関係者は匿名を条件に語った。
しかし関係者は、その土地が労働者住宅の建設用用地にあてるため整地され、約15世帯がダムサイトであるサダム島の上部から、提案された3−5km離れたサダム島下部へ移転する必要があることを認めた。
ダム本体の建設は2014年初頭に開始予定だ、と彼女は述べた。
「想像を絶する厄災」
ドンサホンダムは35億米ドルを投資するサイヤブリダムに続き、2つめのメコン本流ダムになる。サイヤブリダムの建設はラオスの周辺国からの反対により遅れていたが、昨年再開した。
NGOインターナショナルリバース(以下IR)は7月16日の声明で、ラオスは今、「単純に無視されるべきではない、環境、社会、経済的コスト」への懸念にもかかわらず、ドンサホンダムの建設続行を決めたようだ、と警告した。
「ドンサホンダムが計画通りに進めば、メコン河とその漁業は想像を絶する厄災を被ることになるだろう」とIRは述べている。
IRは、ラオスがこのダム建設に関しカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムから成るMRCと協議していないことも指摘した。
「準備作業やその他の名目でなされるとしても、あらゆる形態のプロジェクト実施は、事前協議のプロセスが完了するまで」国際法で禁止されている、と声明は述べている。
MRCの広報担当者は、MRCは「公式に」ダム建設の計画を知らされていないことを認めている。
「我々は正式に通知されていない」、MRCの広報官Sourasak Klaharnは水曜日にRFAに語った。
「そのため、協議や調査に関して現時点で私たちに出来ることは何もない。現地に行って調査することも、私たちの任務ではないので出来ない。」
MRCに正式に通知されれば、事業の実施が広範囲に及ぼす影響について議論するため、4加盟国の会議を招集することになるだろう、と彼は言った。
危険な先例?
IRは、ドンサホンダム事業についてMRCの協議プロセスが始まっておらず、ラオスのサヤブリダムと同様に、MRCの管轄外で「建設活動と裏の相互取引が進む深刻な懸念がある」と指摘した。
環境団体は、既に10%建設が完了しているサイヤブリダムの開発者は、MRCでの議論がまだ進行中であったにも関わらず、ダムサイトで作業を始め、タイとの売電契約を結び、タイの銀行との融資契約を締結したと述べた。
IRのAme Trandem東南アジア・プログラムディレクターは「サイヤブリダムは、将来の地域協力を損なう危険な先例となる。追加の事業を進める前に、MRCの事前協議プロセスを早急に改革する必要性がある」と述べた。
IRは、ドンサホンダムの2012年環境影響評価報告書は、ラオスの法律に従えば一般に公開されるべきだが、まだ公開されていない、とも述べている。
一方、昨年事業地を調査したエネルギーとダムの専門家によると、影響地に住む村人たちは行われる作業について、等しく何も知らなかったという。
「明確なデータはありませんでした」彼は匿名を条件に、RFAに語った。
「幾人かは知っていたと述べ、別の何人かは知らなかったという。人々は、ドンサホンダムが建設されることだけは知っていましたが、誰も詳細は知りませんでした。」
RFAラオス語サービスによるレポート。 Viengsay Luangkhot翻訳、Richard Finney英文執筆。
原文(英語)はこちら。
http://www.rfa.org/english/news/laos/confirms-07312013151754.html
(文責 メコン・ウォッチ)