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原発輸出>ベトナムの予定地の暮らし(5)終りの日を待つ漁村

メコン河開発メールニュース2013年8月14日

7月21日の参議院議員選挙の結果を受け、日本政府によるベトナムへの原発輸出が加速することが強く懸念されます。原発輸出の経緯は、こちらをご覧ください。

http://www.mekongwatch.org/report/vietnam/npp.html
http://www.mekongwatch.org/report/tb/nuclear.html

複数の日本のベトナム研究者からも、輸出に対し懸念の声が上がっています。

京都大学、伊藤正子さんのホームページ
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/ito/n-power.html

三重大学、吉井美知子さんの研究論文
2013「日本の原発輸出―ベトナムの視点から―」三重大学国際交流センター紀要第8号、pp.39-53, http://miuse.mie-u.ac.jp/bitstream/10076/12365/1/63C16255.pdf

ぜひ、ご覧ください。

引き続き、昨年11月の現地訪問の様子をお伝えします。


タイアン村の入り口(左)   村の前の海(右)

建設予定地のニントゥアン省ビンハイ地区タイアン村で村の人の話を聞けないかと、通訳の方とキョロキョロしながら歩いていると、海辺の瀟洒な家の前から、手招きする男性がいます。彼は友人と大きな網をつくろっていました。家の奥には赤ちゃんをあやす女性がいます。家は、海の色に生えるきれいなペイントがされていて、テレビなどの家電も揃っており、余裕のある暮らしぶりが伺えました。私たちを待っていたかのように、彼の横には清涼飲料水やお茶を用意したお盆が置いてあります。いつ、だれが来てもいいように用意しているそうです。お茶を勧めてくれるので、天候や村の暮らしを挟みながら、移転について話を聞きました。

彼は楽しそうに話し始めました。

「この間、日本人を船に乗せてあげましたよ。うちの行事にも参加してもらったな。」

「漁の様子が見たい?明日の朝、早く来てくれればいいですよ。夕方5時に出て、たくさん獲れれば夜10時ごろ戻ってきて休憩、その後朝まで漁をします。昼間に休んでいます。魚が獲れる日と獲れない日がありますけど。」

「ベトナムは人が来たら必ずお茶を出しますが、日本はどうですか?緑茶ですか。へぇ同じですね。都会では私のような接待はしないでしょうね。ここは田舎だから。もう少し日が落ちたら、近所の人が遊びに来て、皆でおしゃべりをするんです。」

「ここも移転するのですか?」

「そうです。皆で引っ越しです。政府に土地を返して、ここには工場が建てられます。普通に暮らしていけるので、移りたくはないのですが、国の要請なので従わざるを得ません。ここでの暮らしは安定しているので、引っ越したくはないのですが。」

「引っ越したら漁業はどうなるのでしょう?」

「移転先の状況次第です。移転先で今のような仕事をできるかどうか分からないですから。できなければ仕方ないですね。」

「移転はいつですか?」

「テレビのニュースでは2014年と言っていました。」

「テレビのニュースで知ったのですね?」

「そうです。」

「村長さんから連絡があったりしないのですか?」

「公式な知らせはまだないです。メディアの報道で知りました。地元の人たちはまだ何も知りません。日本人の技師が今、地質調査をやっていますね。調査が終わって、ここで建設が決まれば、移転の話が始まるでしょう。」

人びとは何も知らされず、自分の暮らしがどうなるのか、テレビのニュースの報道で知るしかないというのです。これがベトナムの現実です。

「この集落は古いのですか?」

「(ベトナム)戦争の前に人が住んでいましたが、戦争中は革命軍に土地を明け渡し、戦争が終わってから戻ってきました。村の歴史は古いです。村は革命の拠点の一つだったのですよ。」

「自分には戦争の記憶はありませんが、お年寄りたちは、戦争中にも村は犠牲を払ったのに、平和になってからも犠牲になるのかととても怒っていて、反対の気持ちを持っている人がいます。しかし、政府のやることなので反対できません。皆、さびしい気持ちを持っています。」

「また来年、こちらに来たらぜひ寄ってください」と、にっこり微笑む彼を目の端で見ながら、これからこの村に起きるかもしれないことを考え、お茶と話のお礼を言いながらも目を合わせることができませんでした。

私たちは、原発輸出は特定の関連企業のみに利益が回り、日本の国民に裨益するとは考えていません。仮に日本の「経済成長」のためになるとしても、それと引き換えにこの村と周辺の豊かな暮らしを破壊することが許されるとは到底思えません。私たちは引き続き、各方面と協力し原発輸出に反対していきます。

(文責 メコン・ウォッチ)

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