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メコン河開発メールニュース2013年8月26日
引き続き、日本とロシアから原発を輸入する予定のベトナムからのニュースです。
先日、同国で開催された「第10回全国原子力科学技術会議」では、原子力科学技術センターを建設するにあたり地元政府の同意がとれないこと、また、政府高官が「専門家、すなわち原発の安全を保障する法定機関で働く人員が非常に不足し、また原発を建設する幹部グループも非常に不足している」と発言したことが報道されています。情報によれば、この会合には複数の日本人関係者が出席していたとのことです。
匿名の翻訳者の協力によるベトナム語新聞『ラオドン(労働)』紙の報道をお伝えします。
2013年8月19日
『ラオドン(労働)』第190号
「第10回全国原子力科学技術会議」がこのたびブンタオで開催された。多くの専門家が原子力センターをダラットに建設すべきだとするのに対し、ラムドン省は観光への影響を恐れてまだ同意していない。
専門家が「白紙状態」
原子力エネルギー開発戦略はすでにあるのだが、これを実施する専門家が足りないことが緊急課題であることが、専門家たちによって言及された。
レ・ディン・ティエン氏(科学技術次官)の発言。「我々には人材が不足している。原子力エネルギー幹部、原発に詳しい幹部が必要だ。現在、国内の幹部らは、ニントゥアンの2つの原発の諮問結果の決裁に困難をきたしている。というのも、専門家、すなわち原発の安全を保障する法定機関で働く人員が非常に不足し、また原発を建設する幹部グループも非常に不足しているからだ。原発の核燃料廃棄物管理もまた重要な問題であるが、現在論争が続いていていまだ方向性が定まっていない状況だ。」
「もし、ずさんな方法で進めれば、効果の低いものになるだろう。」とティエン氏は言う。
チャン・チー・タイン博士(ベトナム原子力エネルギー局長)は強調する。「我々には指導的幹部が必要だ、実質的に原発のために人材育成をしなければならない。現在のところ我々はまだ国内で幹部グループを集められていない、彼らを集めて原発に向けて効果的に育成する必要がある。今後5−7年間は専門家の育成が一番の任務となる。」
「任務を展開し始めてから何年たつのか、その間、まったく専門家が育っていない。」とタイン氏はけしかける。
タイン氏はまた、これらのことを実現するためには、原子力科学技術センターを建設することは、非常に重要な目標だと言う。これは国立のセンターであり、開発に関係する科学者や大学、原子力研究所等に寄与するものだ。このセンターはロシアの援助で約5億米ドルの投資額となり、そこで開発される工業技術はベトナム原子力エネルギー局に属することになる。
ラムドン省は観光への影響を懸念!
タイン氏によると、基本的にセンターはダラット市(ラムドン省)に建設される予定だ。地元との入り組んだ事情があり、政府首相の批准を受ける前の段階で解決が模索されている。現在のところ、ラムドン省ではまだセンターの建設に同意していない。センターはダラット原子力エネルギー研究所の敷地100haを使用するものなのだが、省では観光への影響を懸念して、当初の予定よりもさらに30km離れた場所に建てるように要求している。
「そんなことは実現不可能だ。我々はラムドン省の説得を続けて、建設に同意を得るようにしたい。センターには放射能の危険や脅威はないのだから。」とタイン氏は言う。
もうひとつ別の計画が、より利便性に優れると見積もられている。もしもラムドン省がどうしても地元にセンターを建設させないというなら、ハイテクパーク(ドンナイ省)に持って行こうというものだ。交通はより便利だし、ドンナイ省では「喜んで」このセンターを建てたいと言っている。
会議ではまた、科学者たちがダラットの原子炉での低濃度燃料運転の結果や、ニントゥアン原発計画の実施状況について発表した。
ファン・ミン・トゥアン氏(ニントゥアン原発計画管理委員長)によると、ニントゥアン第一原発はファンラン・タップチャム市より25km南方に位置し、容量4,000MW、2段階に分け、段階ごとに1,000MWを2基ずつ建設する。
ロシアの軽水炉技術を利用するが、これについては検証を終えた。輸入燃料を使用し、生産した電気は500kVもしくは750 kVの電圧で国家電気網に送電する。起工予定は2014年、最初の原子炉の稼働は2020年を予定している。現在、第1段階の監察報告書を顧問が提出ずみであり、第2段階の監察に入っている。批准書類の作成は2013年12月に完成する予定だ。
ニントゥアン第2原発計画はファンラン・タップチャム市から約20km北方に建設するもので、容量は約4,000MW、2段階に分けて、段階ごとに1,000MWの炉を2基ずつ建設する。改良型軽水炉の技術を使用し、輸入燃料を使用する。生産した電気は500kVもしくは750 kVの電圧で国家電気網に送電する。現在、日本原子力発電株式会社とベトナム電力公社が共同で会議を開き、ベトナムの地質や工業技術専門家より意見を聞いている…
それ以外にも、関連の計画が展開されつつある。ビントゥアン省での原発人材育成計画が進められている。ベトナム電力公社、ニントゥアン原発計画管理委員会、ベトナム電力公社のコンサルタント会社、そして2ヶ所の原発の運転とメンテナンスに当たる2,200人が一緒になって…
【囲み記事】 科学技術省はすでに計画案で一致した
チャン・チー・タイン博士(ベトナム原子力エネルギー局長)は言う。「国家予算をこの原子力センター建設に投資するからには、将来必ずその効果が得られなければならない。このセンターをダラット市から離れた場所に建ててしまうと、効果が得られず、力を集められず、金銭の濫費につながるばかりでなく、この計画は早期に投資展開して建設してこそ原発に役立つのだ。」
「現在、わが局では原子力科学技術センターの建設地をダラット市中心部から13 km離れた地点に提案していて、原子力高度応用技術センター計画からの107haの敷地が用意されている。であるのにラムドン省はまだ同意していない。
センター内には小規模な研究原子炉が置かれるだけで、世界中で多くの国々が同じような炉を大学内に置いていて安全だ。30kmも離れた新たな地点に持って行くとしたら、センターで働く人々は嫌がるだろう、なぜなら彼らの大部分はダラット市内に住居があるからだ。
同時に今後、外国の専門家たちをダラット大学と協力して招へいするとなると、ここは集中的な研究センターとなるだろう。科学技術省としても、すでにこの計画で一致しているし、これを最善のものと考えている。現在、科学技術省ではラムドン省と話し合いを持ち、この計画を首相に提出することで同意するように働きかけている。」
ハー・アイン・チエン
原文はこちら
http://laodong.com.vn/sci-tech/lam-dong-so-trung-tam-hat-nhan-nua-ti-usd/133611.bld
(22/08/2013)
(文責 メコン・ウォッチ)