ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ドンサホンダム>ラオス政府が建設を公言
メコン河開発メールニュース2013年11月14日
ラオス政府は10月、サイヤブリダムに続いてメコン河本流でのドンサホンダムの建設推進を公にしました。
メコン河の本流での開発は、本来、下流4か国(カンボジア、タイ、ベトナム、ラオス)で構成するメコン河委員会(MRC)が合意した、1995年の「メコン河流域の持続的開発のための協力に関する協定」が定める「通知、事前の協議および同意の手順(PNPCA)」を通した関係各国の合意が条件とされてきました。今回ラオス政府は、建設予定地はメコン河が17に分流するうちのひとつでしかなく、流れる水はメコン河の総流量のわずか5 %を占めているだけなので、隣国と協議の必要がある本流ダムとは認識していない、と強弁しています。
しかし、MRCが委託して行った本流ダムに関する戦略的環境アセスメントで、このドンサホンダムは本流ダムの一つとして扱われています。
ドンサホンダムの位置(International Rivers のサイト)
http://www.internationalrivers.org/resources/don-sahong-map-4575
ラオス政府の強引な決定は、環境や社会への影響はもとより、日本や欧米各国が健全な流域開発のためにサポートしている調整機関の存在すら無視しています。このような決定を周辺国やドナーが許してしまえば、メコン河の環境とそれに依存する流域の社会は、乱開発の元で崩壊してしまいます。
以下にラオス政府の見解を報道した現地英字紙ビエンチャン·タイムズの記事をご紹介します。メコン・ウォッチでは引き続き、この件に関して情報を発信していきます。
2013年10月12日
ビエンチャン·タイムズ
チャンパサック県のフーサホンと呼ばれるメコン河の分流部分でのドンサホンダムの開発は、1995年のメコン協約に違反していない、とラオス政府高官が地元メディアに語った。エネルギー・鉱業副大臣Viraphonh Viravong氏が発言したのは木曜日(10月10日)、ラオス政府が260MWの流し込み式ダムの開発実施を決断した旨を政府間機関であるメコン河委員会(MRC)に通知した10日後のことだった。
一部の外国メディアや環境活動家は、ラオス政府はプロジェクト開始前に下流国との事前協議を経ておらず、メコン協約に違反していると主張している。
Viraphonh氏は、ラオスはメコン河の持続可能な開発のために1995年メコン協約を遵守していると述べた。ラオスはドンサホンダムが、協約が定めるところの「流域内の水利用」というカテゴリー、つまり開発者による下流隣国への通知が求められているだけで協議はなされない、に位置づけられると説明している。
Viraphonh氏は、ラオスはこのダムを事前協議が求められる「メコン本流(ダム)」とは捉えなかったと述べた。彼は、フーサホン(分流)はシーパンドン地域を流れる17の分流のひとつでしかなく、ここを流れる水はメコン河の総流量のわずか5 %を占めているだけだという。しかし、Viraphonh氏は、ラオスは懸念されるすべての問題についての議論を歓迎すると述べた。彼は、「我々は、下流の隣人からの妥当な意見を、喜んで考慮する」と語った。
また、MRC閣僚会議や政府高官の会合では、いかなる問題でも提起することができる。 Viraphonh氏は、フーサホンが乾季における魚の回遊の唯一の経路だ、と示唆する外国メディアの報道を否定した。彼は、年間を通して魚の回遊が可能な分流がいくつかあったと述べた。「私はこのプロジェクトが、下流の隣人に重大な影響を及ぼすことはないと確信している」と彼は言う。
ラオス当局は近く、メディアやNGO、関心のある団体や利害関係者の代表をプロジェクトサイト見学に招待する予定だ。Viraphonh氏はラオス政府が、国際的に認められたコンサルタント―AECOMオーストラリア·ニュージーランド社とSMECニュージーランド社−を開発監督者として雇用したと述べた。この7.231億米ドルのプロジェクトは来月着工、 2018年2月に完了する予定だ。商業運転開始は2018年5月に設定されている。発電されたすべての電力は、増加するラオス南部の電力需要を満たすために、ラオス電力公社(EDL)に販売される。EDLは ダム(操業権)の20%のシェアを25年間保持する予定だ。
(注)流域4カ国(タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム)が合意したメコン河流域の持続的な開発のための協力に関する協定。
(翻訳・文責 メコン・ウォッチ)