ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>影響住民が中国大使館に中国資本の撤退を求める書簡を提出
メコン河開発メールニュース2013年12月13日
12月12日(木)、カンボジア・ラタナキリ州とストゥントレン州の住民が、セサン下流2ダムからの中国資本の撤退を求め、Bu Jianguo在カンボジア中国大使に要請書簡【1】を提出しました。
セサン下流2ダムは、カンボジア企業ロイヤルグループ(Royal Group)と中国企業ハイドロランチャン国際エネルギー社(Hydrolancang International Energy Co. Ltd.)が共同で実施する事業で、カンボジア北東部ストゥントレン州のセサン川に建設を予定しています。出資割合は不明ですが、中国資本が大部分を占める様相です。
メコン河最大の支流であるセサン川の河口付近をせき止めるこのダムは、完成すればセサン川流域だけでなく、カンボジア・トンレサップ湖、下流のベトナム・メコンデルタをはじめ、上流のタイやラオスも含むメコン河流域全体の生態系に甚大な影響を与えると言われています。
また、約5,000人の住民が移転を余儀なくされるとも言われていますが、企業やカンボジア政府と住民との協議が不十分で、住民は、移転や補償の詳細、ダム計画の基本的な情報すら正確に知らされていません。【2】
要請書簡では、住民がこうした環境・社会影響への懸念を述べ、ラタナキリ州とストゥントレン州のセサン・スレポック・セコン川流域の住民923名の署名とともに、中国大使館に提出されました。
書簡を持参した住民代表6名の内1名と、現地NGOスタッフ1名が大使館内に入ることを許され、大使館職員に直接書簡を手渡しました。この大使館職員は、書簡を大使に渡し後日回答を送ることを約束しました。
また、大使館職員は、「カンボジアで事業を行っている中国企業は、カンボジアと中国の法律を順守し、中国の海外投資ガイドライン【3】に則って環境社会影響に配慮している。もしこれに反する事業がある場合は、大使館から政府や企業に働きかけ、住民との協議を設定することもできる」と話したとのことです。
大使館職員の言う通りであれば、セサン下流2ダム事業では、事業主と住民との対話の場を設定する必要があります。住民からの聞き取りによると、事業主、および土壌調査や貯水池の森林伐採を請け負った中国企業は、住民と適切な協議を行っているとは言えないからです。
メコン・ウォッチは、今後も現地NGOと協力し、セサン下流2ダムに対する中国大使館や事業主の対応を注視していきます。
また、日本政府は、メコン河の共同管理機能を担うメコン河委員会(MRC)の開発パートナーとして、例年MRCに活動資金を提供しています。MRCの開発パートナーは、今年6月の非公式会合で、カンボジア政府に対し、セサン下流2ダムの設計変更と、メコン河委員会での事前協議を提案しました。
日本政府には、本日12月13日から始まる日・ASEAN首脳会談の場を利用し、この提案が実現するよう、MRCの開発パートナーとしての働きかけを期待します。
【1】住民の書簡の原文はこちらからご覧になれます。
【2】セサン下流2ダムについてはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
【3】2013年2月、中国環境省が公表した、海外投資・協力に際して環境・社会影響に配慮することを定めたガイドライン。英訳はこちらからご覧になれます。
http://english.mofcom.gov.cn/article/policyrelease/bbb/201303/20130300043226.shtml
【4】関連報道”Villagers Ask Chinese Embassy to Intervene Against Dam Investors”(Cambodia Daily 2013年12月12日)
(文責 メコン・ウォッチ)