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セサン下流2水力発電事業
住民によるダム建設抗議デモ
- プロジェクト名
- セサン下流2水力発電事業
- プロジェクト所在地
- カンボジアストゥントレン州セサン郡、セサン川とスレポック川との合流地点の約1.5キロ下流
- 実施主体
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セサン下流2水力発電会社。カンボジアのロイヤルグループ(Royal Group 出資比率39%)、中国ハイドロランチャン国際エネルギー社(Hydrolancang International Energy 51%) 、ベトナムのEVN 国際ジョイントストック社(EVNI: EVN International Joint Stock Company 10%)の合弁企業。
当初、カンボジアとベトナム企業(EVNI)の共同事業と言われていたが、中国企業主導で建設が進んだ。
- 事業費
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7.81億米ドル(約800億円)
(企業体の資本30%、残りは中国の銀行の融資で賄われたと見られている)
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- セサン下流2ダムとは
- 2008年にベトナム企業が環境アセスメントを実施、その後設計変更があったと言われていますが、変更後に環境アセスメントは行われていません。現在、ダムの最終的な仕様は一般に公開されておらず、ダムの堤高が何メートルかもわからず、正確な水没面積も不明です。それにもかかわらず、2012年11月にカンボジア政府はLS2の建設を承認しています。
- ダムが建設されれば、ストゥン・トレン州に暮らす先住少数民族を含む約1,100世帯(約5,000人)が移転を余儀なくされます。既に一部、住民移転が始まっていますが、そのプロセスは問題が多いものです。合意形成はなされておらず、少なくとも100以上の世帯が、精霊信仰や従来の生活様式を守りたいと移転を拒んでいます。移転対象村では、資産測定の際に住民に十分な説明もなく、行政官などによる脅迫を恐れ測定に応じた人もいます。国道沿いに作られた移転地は、住民の生活様式に合わないもので、数世帯が元の村に逃げ帰ったといいます。
- また、ダムの上流のラタナキリ州の住民約8万人にこの事業の説明は全くされていません。この地域は、上流のベトナムのダムによって既に甚大な被害が出ており、セサン下流2ダムによって、魚の回遊が阻害され更に魚が減り、洪水被害がさらに悪化すること懸念されています。しかし、企業とカンボジア政府はラタナキリの住民を影響住民とは見なしていません。ダムの建設はトンレサップ湖にも影響するとみられています。湖の周辺で漁業に従事する人たちは推定120万人です。
このダムは、2014年2月に建設が始まり、移転を拒む住民が村に残っていたものの2017年7月から貯水開始、9月に落成式が行われました。
2018年4月現在、移転を拒否し村に留まっていた住民の中には、村の近くの水没しなかった土地へ移り、そこで暮らしている人もいます。
- 懸念される問題点
- ・メコン河下流域全体の魚の資源量減少
2012年にアメリカの科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)が発表したメコン河支流ダム計画による影響を調査したレポート“Trading-off fish biodiversity, food security, and hydropower in the Mekong River Basin”は、2015年から2030年までに支流に建設が計画されている27のダムのうち、セサン下流2ダムの影響が最も大きいと指摘しています。この報告はセサン下流2ダムが建設により、メコン河下流域に生息する魚類の9.3%が減少し、50以上の魚種が絶滅の危機にさらされると予測しています。
- ・洪水の悪化
ラタナキリ州のセサン、スレポック川流域は上流ベトナムに作られたダムによって水質悪化による健康被害、放水による資産の喪失、洪水被害の激化、と言った問題に悩まされてきました。下流にセサン下流2ダムができることで、ラタナキリ州の河川沿いの住民は、各ダムの運営状況に強い不安を抱いています。ダムによる水の停滞は、更なる水質の悪化を招く恐れもあります。
- ・下流への流下物減少によるトンレサップ湖、メコンデルタへの影響
トンレサップ湖は世界有数の淡水の漁場であり、カンボジアの農村部で暮らす人々のタンパク源となる天然魚を供給する一大産地でもあります。土砂や栄養分の減少は、トンレサップ湖に強い影響を及ぼすと考えられますが、これに関する詳しい調査は行われていません。また、メコンデルタでは、ここ20年間で流れる土砂が半分になってしまっていると言われています。この状況にセサン下流2ダムの影響が加われば、デルタでの塩害の激化が懸念されます。
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