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 メコン本流ダム>MRC評議会をめぐる動き(3) ラオス政府は協議に応じたが…

メコン河開発メールニュース2014年6月27日

メコン河委員会(MRC)が発した記者発表によると、昨日(6月26日)開催されたMRC評議会の席で、ラオス政府が「ドンサホン水力発電事業を再提出して事前協議に諮る」と明言しました。

ラオス政府が、同国南部のメコン河本流で建設を進めているドンサホンダム(発電容量260メガワット)は、乾季に魚類が回遊する水路を遮断することから、メコン河の豊かな水産資源に打撃をもたらすなど、各方面から懸念の声があがっています(ドンサホンダムの問題点については、http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html)。

ラオス政府は、昨年9月、MRC事務局にドンサホンダムを建設する計画を通告してきました。本来であれば事前協議が不可欠であるところを、ラオス政府は、ドンサホンダムが本流ダムでも支流ダムでもなく、わずかな水量を使うのみで影響は少ないと強弁し、通告手続きだけで済ませようとしました。現地では、すでに関連工事が始まっています。

ドンサホンダムに反対する住民組織やNGOはこれに強く反発し、MRCの他の加盟国であるタイ、カンボジア、ベトナムはラオス政府に事前協議を求め、日本政府をはじめとするMRCの「開発パートナー」も協議を行うよう声明をくりかえし発してきました(経緯については、http://www.mrcmekong.org/highlights/don-sahong-hydropower-project/

ラオス政府が、各方面からあがる声にようやく応えたことは歓迎したいと思います。

しかし、これでドンサホンダムをめぐる問題が解決したわけではありません。ラオス政府は、事前協議中も工事を止めようとはしない様子です。ドンサホンダムがメコン河流域全体に及ぼす影響を科学的に検証するには、検証作業が完了するまで工事を中止しなければなりません。

また、MRCの協議手続きにはあいまいな点が多く、このままでは、サイヤブリダムの失敗をくりかえすことになりかねません。MRC史上初めて事前協議に諮られたサイヤブリダムは、カンボジア・ベトナム両政府の異議を無視したラオス政府によって、刻一刻と既成事実化しています。協議のあり方自体が問われています。

以下では、昨日の動きを、現地紙の日本語訳を通してお伝えします。

 

ラオス政府、ドンサホンダムの建設を続行

2014年6月27日
『バンコクポスト』【訳注1】
Apinya Wipatayotin記者

ラオス政府は、論争の種となっているメコン河本流のドンサホン(Don Sahong)ダムを近隣諸国による検証に委ねることに同意する一方で、建設工事については進めてゆく模様である。

3日間にわたるメコン河委員会評議会(MRC Council、タイ政府主催)会合の2日目にあたる昨日、ラオス政府は、メコン協約が体現する協調の精神に則って、他の加盟国の要請に応え、ドンサホンダムに対してより細部に踏み込む協議手続きを適用したいと述べた。

ラオス政府のViraphonh Viravongエネルギー鉱山副大臣は、 持続的なやり方で責任を持ってドンサホンダムを建設する姿勢を示すために、告知手続きから、より煩雑で時間のかかる事前協議手続きに切り替える決定を下したと述べた。

Viraphonh副大臣によると、告知から事前協議への変更によって、話合いはすべて記録されることになる。また、意見交換は一定の手順にしたがって行われ、ラオス政府が他のMRC加盟国や開発パートナーと緊密かつ公明に協力する約束を果たしていることが示されるとした。

ラオス政府は、昨年、MRC事務局に告知手続きを取り、ドンサホンダムの技術的な実行可能性調査一式、環境・社会影響評価、魚類調査などを提出した。こうした情報は、タイ、カンボジア、ベトナム政府にも送付されている。

ラオス政府は、ドンサホンダムが本流ダムでも支流ダムでもないため、告知手続きを取ることにした。ドンサホンダムは、メコン河が10キロ以上にわたって十数もの分流に分岐し、下流のカンボジア国境で再び一つの流れとなる部分の一か所に建設されるためである。

ラオス政府の説明では、ドンサホンダムを建設する分流には、メコン河の自然な流量のうち年間で約5%が流れている。一方、Somphamit分流では約60%、Phapheng分流では約30%である。

回遊魚類への影響に関して、ラオス政府は、ドンサホン分流が乾季に重要な回遊路である点を認めつつも、魚類の回遊を可能にする水路は他にも複数存在するとしている。

Viraphonh副大臣は、さらに、ラオス政府がコーン瀑布(Khone Falls)近辺の水路に手を加えて魚類の回遊を促し、地元行政と協力して魚類の管理・保全および持続可能な漁業を奨励し、漁業を営む住民に対しては生計の機会を拡大すると付け加えた。

タイ政府のChote Trachu環境・自然資源省事務次官は、ラオス政府が「前向き」な決定を下し、ドンサホンダムが環境に及ぼす影響をさらに検証できるようになったことを歓迎した。

Chote事務次官によると、ドナー国や開発機関もドンサホンダムやサイヤブリダムといった本流ダムが国境を越えて環境や生態系に及ぼす影響への懸念を表明し、メコン河流域の持続可能な開発のためにはダムの影響を調査する必要があると述べた。

また、Hans Guttmanメコン河委員会CEOは、事前協議手続きはMRC加盟国の協調の拡大を意味すると述べた。

一方で、Guttman CEOは、「事前協議の手続を完了するには約6カ月を要する。MRCの規則は、協議中の事業の中断を義務付けてはいない」とした。

MRC理事会第20回会合の目的は、河川流域管理機能の核部分をMRC事務局から加盟各国に分権する機構改革で合意に達することにある。


【訳注1】英語原文は、以下で閲覧可能
http://www.bangkokpost.com/news/local/417617/laos-presses-on-with-don-sahong-dam

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

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