ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >メコン本流ダム>MRC評議会をめぐる動き(4) ドナー国、下流セサン2ダムにも警鐘
メコン河開発メールニュース2014年6月27日
タイ・バンコクで開催されたメコン河委員会評議会(MRC Council)第20回会合には、日本政府も「開発パートナー」の一員として出席しています。開発パートナーは、これまで、メコン河ダム開発がもたらす影響やMRCの協議手続きの不備に関して、一定の懸念を表明してきました。
今回も、開発パートナーは、流域におけるダム開発の現状、とりわけ国境を越えて環境・社会影響が発生する危険性と、そうした影響を十分に検証した調査が存在しない点に懸念を示しています。また、注目すべき点として、昨年7月の非公式会合に引き続き、カンボジア政府が支流のセサン川で進めているセサン下流2ダムに対して、「現在の設計のままで」は、「魚類の回遊、堆砂の流れ、住民の移転など」の点で大きな影響をもたらしかねないとし、カンボジア政府に現状報告を促している点です(セサン下流2ダムについては、http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html)。
以下では、昨日(6月26日)公表された今回の開発パートナーの共同声明から、ダム開発に関わる部分を日本語訳で紹介します。
なお、この共同声明には、オーストラリア、米国、欧州各国、欧州連合などと並んで、日本政府も賛同者として名前を連ねています。
<事前協議手続きと水力発電事業>
私たちは、ラオス政府がドンサホン事業を事前協議に諮る決定を下したことを歓迎する。これは、メコン河委員会(MRC)が流域の対話の場として有効であること、そして加盟国がその点にコミットしていることのあらわれだと思う。
開発パートナーは、「通知・事前協議・合意手続き」(PNPCA)が持続可能な開発にとって重要であると認識している。本流・支流での水力発電開発をめぐる昨今の状況は、PNPCAを実施する上での課題、とりわけ事前協議の運用に対する見解の相違を映し出している。MRCは、合同委員会作業部会と手続きのための合同プラットフォームにおいて、PNPCAの運用のこれまでを検証することを決めている。開発パートナーは、この検証作業を歓迎し、進捗状況についての報告を期待する。
開発パートナーは、サイヤブリダムやドンサホンダムをはじめ、本/支流ダムが国境を越えて甚大な影響を及ぼす可能性のある点、とりわけ国境を越えた環境影響の評価が不在である点に懸念を表明してきた。私たちは、MRCにおいて情報共有が中心的な役割を果たすことをあらためて強調し、加盟国が当然のものとして抱く懸念が考慮の対象となるようにしたいと考える。そこで、開発パートナーは、2012年7月、ラオス政府も合意したように、サイヤブリ水力発電所の設計変更に関わる追加情報をMRC事務局に提出するよう合同委員会が求めた件について、対応がなされることを期待する。
開発パートナーは、先の非公式ドナー会合で、セサン下流2ダムなどの支流開発が、現在の設計のままでもたらしかねない国境を越えた影響(魚類の回遊、堆砂の流れ、住民の移転など)に懸念を表明した。開発パートナーは、カンボジア政府が、MRC事務局に対して、同ダムの現状について報告してくれることを期待している。開発パートナーは、MRCが、国境を越えて影響をもたらしかねない支流ダム事業を事前協議手続きに諮るよう検討することを提案する。
<MRC評議会調査(Council Study)の進展>
開発パートナーは引き続き、評議会調査が、水力発電所によってもたらされるメコン河本/支流への影響を優先課題とすることに賛同する。開発パートナーは、評議会調査が遅れている点を懸念している。私たちは、開発パートナーなどの関係者(ステークホルダー)と実施している協議などの席で、調査開始の報告を受ける機会があるものと期待している。
(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)