ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ・ティラワ経済特区>JICA審査役の現地調査後、住民グループが記者会見 「移転問題に関し、より建設的な交渉の場を期待」
メコン河開発メールニュース2014年7月22日
ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区開発(SEZ)事業について、6月に来日し、国際協力機構(JICA)へ異議申し立てを行なった住民グループ(ティラワ社会開発グループ)が、本日、ラングーン(ヤンゴン)で記者会見を開催しました。同会見の場で、住民らは、異議申し立て後の経過(JICA、ビルマ政府との交渉内容)、また、JICA異議申立審査役との面談内容などを説明しました。
JICA異議申立審査役(原科 幸彦 氏)は7月16日にミャンマーへ到着し、20日に帰国するまで、ミャンマー政府関係者、住民、市民団体などと面談を行ないました。18〜19日には移転地やSEZ開発予定地域を自ら訪問。JICAへ異議申し立てを行なった住民3名の他、移転した住民などへのヒアリングを行ないました。
今後、審査役は9月初めまで(異議申立て手続きが開始された7月4日から2ヶ月以内)に、JICA環境社会配慮ガイドラインの遵守に関する調査結果、当事者の対話の進捗状況、状況の改善に必要な方策についてまとめ、JICA理事長に対し、報告書を提出することになっています。
今回、審査役が現地を訪問し、直接住民の話を聞いたことは、歓迎すべき動きです。移転後、8ヶ月以上も生活が悪化したまま、困窮してきた住民がいることを重く受け取め、住民の生活状況がこれ以上悪化せぬよう、また、状況が速やかに改善されるよう、JICAは早急に対策を講じるべきです。
以下、住民グループが記者会見で発出したプレスリリース を日本語訳でご紹介します。
プレス・リリース
ティラワ社会開発グループ
2014年7月21日
ティラワ住民、移転問題についてより建設的な交渉を求める
ミャンマー・ヤンゴン発 - ヤンゴン近郊のティラワ経済特別区(SEZ)(2,400ヘクタール)の住民らが、ヤンゴン管区政府、国際協力機構(JICA)とのより建設的な話し合いの必要性を訴えました。本日の記者会見の場で、住民らは、JICAの異議申立手続きの下で申し立てを行なって以降、幾つかの注目すべき進展があったものの、同事業フェーズ1(400ヘクタール)における移転住民の問題、また、同事業の今後の開発地域において移転予定の住民の問題を解決するためには、依然としてより生産的な交渉が必要であると、説明しました。
ティラワ地域の住民3名は、6月2日に東京で異議申立書を提出しました。同申立書では、同事業のフェーズ1において住民が被った損害、また、残りの開発区域内の住民が被る恐れのある損害について提示しています。これらの損害には、農地の喪失や農地へのアクセスの喪失、生計手段の喪失、貧困化、住民の子どもたちの教育機会の喪失、ミャインターヤー移転地における標準以下の居住環境や基礎インフラ、清潔な水へのアクセスの喪失などが含まれます。
同申立書に関する調査を行なうJICA異議申立審査役 原科幸彦氏は、この土曜にヤンゴン、および、ティラワ地域への訪問を終えました。今回の訪問中、審査役はティラワ住民、市民社会組織(CSOs)、また、ヤンゴン管区政府やティラワSEZマネージメント委員会の代表らと面談しました。
「審査役が私たちを訪ね、彼自身の目で私たちの生活状況を見に来たことを大変歓迎します。」と、400ヘクタール地域の住民であり、東京で原科 審査役に異議申立書を提出した申立人の1人でもあるカインウィン氏は述べました。「事業によって、どのように影響を受けたか、審査役に率直に話すことができました。彼の調査後に出されるJICA理事長への提言を期待しています。」
異議申立書の提出後、JICAはヤンゴン管区政府、ティラワSEZマネージメント委員会、ティラワ住民らとの会合の場を設定することに合意しました。「7月8日の会合で、私たちは、移転地の住民が依然としてどのように生活に苦しんでいるのか、政府の代表らに話しました。彼らが私たちに対して幾つかの約束をしたので、次回の会合までに、それらの約束が実行されるか見ていきたいと思います。しかし、依然として、さらに交渉が必要な点も残っています。」と同事業の2,000ヘクタール開発地域の住民であるチョーチョー氏は述べました。
ミャンマーの上席弁護士であるミントゥウィン氏は、「ティラワSEZ地域では、1894年土地収用法の手続きに則った土地収用が行なわれていませんでした。1997年に土地が収用されたにもかかわらず、農民は2012年まで土地に対する税金を支払ってきました。したがって、政府は2012年農地法や細則を遵守していなかったと言えます。」と述べました。
「400ヘクタール地域の移転住民の問題に対処することは大変重要です。2,000ヘクタール地域の住民が同様の問題を抱えることになるからです。」と、2,000ヘクタール地域の住民であるミャーライン氏は述べました。「ティラワはミャンマー全体の先例ともなりえます。政府が私たちの移転にあたり、十分な住環境や代替の土地の提供、生計回復、そして補償を行ない、私たちの意見や合意を取り入れるなら、それは私たちにとっても良い方向と言えますし、私たちの国の他の事業にとっても良い例となるでしょう。」
JICA審査役は、9月初めまでに、調査結果とJICA理事長に対する提案について報告書を公表することになっています。ティラワ住民らは、ヤンゴン管区政府、JICAとの次回の会合を来月持つ予定です。
(以下、連絡先)
※同事業の詳細はこちら
http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html
※ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業について
ビルマの最大都市ラングーン(ヤンゴン)近郊で約2,400ヘクタール(東京ドーム513個分)をSEZとする同事業のフェーズ1(400ヘクタール分)は、三菱商事・住友商事・丸紅など日本企業の関わる共同企業体が、2013年11月に土地造成作業を開始。国際協力機構(JICA)は、2014年4月23日、政府開発援助(ODA)の民間向け「海外投融資」制度で同事業への出資を決定。
(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)