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 メコン本流ダム>日本の国立環境研究所、メコン河の魚の回遊の一部を解明

メコン河開発メールニュース2014年9月8日

日本の国立環境研究所がメコン河の魚の回遊の一部を解明し、ダム開発による回遊魚への影響を明らかにしました。この調査では、耳石(注1)と呼ばれる骨組織に貯まる、魚が生存中に河川水から取り込んだ微量元素と各河川の水の中の微量元素を分析し、両者を比較することで、コイ科魚類Siamese mud carp(注2)の回遊行動を調べています。論文では、すでに支流に建設されたダムの影響を評価、さらにラオス政府が同国南部のメコン河分流で進めるドンサホンダムが、調査対象の2種に与える潜在的影響について予測しています。Siamese mud carpは20cmほどの小さな魚ですが、資源量が多く、漁獲量がメコン河の魚の中で最大で、さらに肉食の魚の餌となって生態系を支える重要な種です。

以下、同研究所のプレスリリースより引用します。

***
研究では、タイ、ラオス、カンボジアの3カ国のメコン川流域から採集した本種の耳石に蓄積された様々な元素を化学分析し、主に3つのことを明らかにしました。1)本種が地域ごとに特異的な回遊経路を持ち、群れを成して回遊すること、2)ダムで分断された支流において、すでにその回遊行動が著しく制限されていること、3)ラオスに計画されたドンサホンダムは本種の重要な回遊経路を分断し、メコンの漁業生産に甚大な影響を及ぼす可能性のあること。
本研究の成果は科学誌PLOS ONE誌オンライン版に2014年8月6日に掲載されました。
   (http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0103722)

***引用ここまで

同研究所のリリース本文はこちらです(日本語)>
http://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140807/20140807.html


アマゾン河に次ぎ、1200種と推測される豊かな魚類生態系を持つメコン河では、今でもほとんどの魚の生活史が不明です。また、これまであまり議論されてきませんでしたが、メコン河の本流だけではなく支流での開発が、生態系に大きな影響を与えてきたと考えられます。その累積的な影響を明らかにするよう、NGOや市民、一部の研究者が指摘してきてはいますが、包括的な調査は未だ行われないまま、ダム開発が進められています。

更に、この研究には7年の歳月がかかっています。生態系について調べるには、一定の時間がかかります。このような研究が更に増え、経済的利益と失われる生態系サービスの費用便益がきちんと検証されることが流域社会にとって望ましいのですが、残念ながら発電からの利益ばかりが強調される現在の拙速なダムの開発がそのような道をたどっていないことは明らかです。

ドンサホンダムについてはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html

また、少し古いですが、天然魚に関する知見の少なさを知っていただくため、ダムによる漁業資源の激減が大問題となったタイ・パクムンダムに関し、影響緩和のためのダムの水門開放についてタイの新聞に2008年に投稿した記事の翻訳をご参照いただければ幸いです。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20080306_01.html


(注1)耳石とは、脊椎動物の内耳にある炭酸カルシウムの結晶からできている組織で、人間にもある。魚の場合、耳石を切った際の断面が木の年輪のように同心円状の構造になっており、1日に1本が形成される。これを日輪(にちりん)と呼び、年齢推定を日単位で推定することなどができる。
(注2)Henicorhynchus siamensisおよびHenicorhynchus lobatu

 

(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)

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