ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>設計変更に関する情報公開を求める共同声明をメコン河流域NGOが発信
メコン河開発メールニュース2014年10月23日
10月16日、セサン下流2ダム(LS2)の設計変更に関する情報公開と、その設計変更に基づく新たな環境影響調査(EIA)実施を求める共同声明を、カンボジアやメコン河流域で活動するNGO18団体が発信しました。【1】
このダムは、カンボジア北東部のセサン川とスレポック川の合流地点から約1.5km下流、両河川がメコン河本流と合流する約25km上流に位置します。建設されれば、メコン河全体の魚類や生態系に深刻な影響を与え、その影響ははるか下流のベトナムメコンデルタや上流のラオスやタイにまで及ぶとみられています。しかし、2009年に承認されたEIAでは、調査範囲が貯水池周辺に限定され、メコン河上流や下流への影響評価は含まれていません。【2】
事業主は、中国企業ハイドロランチャン国際エネルギー社(Hydrolancang International Energy Co. Ltd.)とカンボジア企業ロイヤルグループ(Royal Group)からなる合弁事業で、資金源の大半は中国の銀行からの融資であるとみられています。
2014年7月に、ダム壁の高さや構造上の変更を含む大幅な設計変更が行われるという非公式の情報が出回りました。しかし、政府や企業はその情報を一切公開せず、建設工事を進めています。
今回の共同声明は、2009年のEIAの限定的な調査範囲、調査過程における不十分な住民協議等を取り上げ、このEIAがカンボジア国内法、中国国内法および国際法のどの基準も満たしていないことを指摘し、カンボジア政府と事業主に以下のことを求めています。
この共同声明は中国やタイのメディアでも取り上げられ、国際的な関心が向けられています。【3】しかし、カンボジア政府や事業者が声明に誠実に向き合うかどうかは不明です。カンボジアの影響住民は既に9月29日付にて、移転を拒否する声明を、州政府宛てに提出していますが、当局はメディアの取材に対し「受け取っていない」と答え、さらに、事業を即刻中止することを求めた別の声明を訪問提出した際には、受け取りを拒否。このような態度をあらため、住民やNGOの意見に耳を傾けるかどうかが注目されます。【4】
注
【1】声明にはメコン・ウォッチも賛同しています。声明はこちらからご覧になれます。
原文(英語)
カンボジア語訳
中国語訳
【2】セサン下流2ダムについては、こちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
【3】Yicai China Business News (2014年10月16日)
http://www.yicai.com/news/2014/10/4029022.html
Bangkok Post(2014年10月17日)
http://www.bangkokpost.com/news/asean/438093/environment-groups-express-concern-about-cambodian-dam-project
【4】影響住民は、政府の影響解決委員会宛てに声明を提出するため9月29日に州政府の事務所を訪問しましたが、委員会は委員長不在を理由に受け取りを拒否しました。10月1日にも同理由で受け取りを拒否しました。声明は電子メールでも提出されていますが、メディアの取材を受けた当局は「声明は受け取っていない」と答えています。また、10月3日付の別の声明を提出に訪問した際には、声明の日付が提出日でないことを理由に受け取りを拒否しています。
住民声明についてはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20140930_01.html
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20141008_01.html
(文責 メコン・ウォッチ)