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ビルマ・ダウェイ経済特区>「事業再開前に人権侵害への取り組みを」現地グループ、報告書のなかで関連政府・投資家に提言

メコン河開発メールニュース2014年10月27日



出典Dawei Development Company Limitedウェブサイト
http://www.daweidevelopment.com/index.php/en/dawei-strategic-location/gms-southern-corridor

ビルマ南部のダウェイ経済特別区(SEZ)開発は、2008年からタイ企業が主体となり進められてきましたが、2013年に資金調達の失敗から同企業が撤退した後も、土地収用や補償問題などは残されたまま、多くの住民が苦しい生活を強いられてきました。こうした問題の解決を求め、ダウェイの現地グループがタイ国家人権委員会(NHRC)に申立てを行なっていましたが、その公聴会が10月21日、タイ・バンコクで開催され、ダウェイの住民・NGOがNHRC等に問題を訴えました。

現地グループは、この公聴会に合わせ、自分たちでまとめた調査報告書「現場からの声:ダウェイ経済特別区および関連事業に関する懸念(Voices from the Ground: Concerns Over Dawei Special Economic Zone and Related Projects)」を発表。NHRCにも提出し、更なる調査を求めました。

同報告書(本文84ページ)は、ダウェイSEZ開発の影響を受ける20村で行なった調査結果をまとめたもので、適切な情報公開や協議、補償がないまま、住民が農地を失った実態などを伝えています。また、タイ・ミャンマー政府や将来、同事業に関わるであろう投資家に対し、これまでに起きた人権侵害の問題をまず解決できるよう、早急な対処を求めています。

報告書の全文は、こちらでダウンロードできます。(PDFファイル18MB)
http://www.mekongwatch.org/PDF/news20141027_Dawei_Voice_Eng.pdf

報告書の要約(和訳)は、こちらでダウンロードできます。(PDFファイル)
http://www.mekongwatch.org/PDF/news20141027_Dawei_Voice_summaryJP.pdf

また、同報告書の内容に基づくビデオもこちらでご覧いただけます。
「ダウェイ、開発で失われたもの(Dawei, Lost in Development 」(英語)
http://www.youtube.com/watch?v=IvORiETvChU&feature=youtu.be

ダウェイSEZ開発事業は、現在、日本が官民をあげて進めているヤンゴン近郊のティラワSEZ開発の数倍の規模となり、完成すれば、東南アジア最大の工業地帯になると言われています。タイ企業の撤退後、タイ・ミャンマー政府の出資する特別目的事業体(SPV)が事業の運営責任者となり、新たな投資元を模索していましたが、タイの政情不安もあり、約1年間、同事業の先行きは不透明な状況が続いていました。

しかし、10月に入り、タイ暫定首相のミャンマー訪問中、両国政府が同SEZ事業の再開を確認。以前から同SEZ事業への参画に関心を示してきた日本政府も、10月初めに外務副大臣がタイ政府に対し、3者協議の再開の方針を示したとの報道がなされています。

ロイター通信「タイ、ミャンマーのダウェ経済特区開発で日本交え3者協議再開へ」
http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPL3N0RX1OO20141002

日本の政府・企業も、ダウェイSEZ開発事業に参加するのであれば、まずは、既存の問題の解決を求める現地グループの声に耳をしっかり傾け、しかるべき対応を検討する必要があります。

以下、現地グループDDA(ダウェイ開発連合)が10月21日に発出したプレスリリースを和訳でご紹介します。

ダウェィの地元コミュニティー、経済特別区における人権侵害への取り組みを要求

プレスリリース
(2014年10月21日付)(英語版を和訳)

タイ・バンコク発―本日、ダウェイ経済特別区(DSEZ)の影響を受ける地域のコミュニティー代表らは、非常に多くの社会・環境影響と人権侵害がすでに起き、対処されていないなか、どうやって巨大事業を進めることができるのか疑問を投げかけた。すでに問題となっている同事業の新しい局面を検討する前に、まず、これらの問題が解決されなくてはならない。

「私の村で道路建設が始まったとき、私たちは何も知らなかった。私たちは農地やきれいな水、そして、生計手段を失った。……なのに、補償は一切受け取らなかった。事業がもたらすであろうあらゆる問題を彼らは私たちに話さなかった。」ミャンマーのダウェイ県タビュチャウン村から、バンコクまでやってきたSaw Keh Dohは、タイ国家人権委員会に懸念を表明した。

「私たちは情報が必要だ。誰が責任をとることになるのか、既存の問題を救済するために何がなされるのか、その責任者らが悪影響がこれ以上起きないようどのような保護策をとるのか、正確に知る必要がある。」タボイ女性連合のDaw Su Su Sweは述べた。

「私たちは、事業の結果、私たちの生活水準が悪化してはならないことを知っている。私について言えば、土地1エーカー当たり、たった50万チャット(訳者注:約5万円)が支払われただけだった。他の人は1エーカー当たり300万チャット(約30万円)だった。でも、その300万チャットでも、現在の地価で新しい農地を購入するのに十分ではない。」DSEZ事業地域にあるモドゥ村出身のU Aung Myintは述べた。「開発事業は住民や環境に損害を与えるものであってはならない。」

コミュニティーの懸念は、ダウェイ開発連合(DDA)が新しくまとめた報告書「現場からの声:ダウェイ経済特別区および関連事業に関する懸念」に記録されている。同報告書は、本日、バンコクのタイ外国人記者クラブ(FCCT)で発表され、政府合同庁舎で開かれた公聴会の場でも、タイ人権委員会に提出された。

報告書は、タイ、および、ミャンマーの国家人権委員会に対し、タイやミャンマーに所在地をもつ企業が行なったダウェイSEZ事業の関連作業等に伴い起きた土地収用、強制立ち退きに関連する人権侵害のあらゆる申立てについて、徹底した共同調査を実施するよう要請している。

DSEZは、ミャンマー南部の農業・沿岸地域に位置する。2008年に着手され、なかでも、深海港、工業団地、水供給用貯水池、両国間の道路連結などの事業を含んでいる。完成すれば、東南アジア最大の工業地帯の一つとなる予定だ。イタリアン・タイ・ディベロップメント社(ITD)が2008年から2013年まで同事業の運営責任者だった。資金不足で事業が立ち往生した2013年11月以降は、同事業の直接的な責任は、タイ・ミャンマー政府が均等に出資する特別目的事業体(SPV)に移譲された。タイのプラユット・チャンオチャ首相がミャンマーに最近訪問した後、両国政府は、新しい投資家が同事業に入札したことを示唆したが、公にされている情報は非常に限られている。

両国、とりわけ、武装グループの統制下にあるミャンマー国境地帯では、虚弱な政治的背景がある。「投資家はそうしたリスクについて、十分な情報を持っているのか? また、環境・社会・人権に対する責任が及ぶ範囲を認識しているのか?」コミュニティーの持続的な生計と開発(CSLD)のSaw Khoは述べた。

20から36村の住民が、DSEZ、および、関連事業の直接的な影響を受けると予測されている。DSEZ事業の直接影響を受ける20村で行なった量的かつ質的な調査の結果では、コミュニティーは事前の情報提供がないまま、彼らの生計にとって非常に重要な農地や自然資源を失ったことが明らかとなった。意味のある住民協議は一切なく、補償手続には深刻な欠陥があった。報告書は、タイ・ミャンマー政府、および、タイ、日本、そして同事業への投資を検討する可能性のある他国からの投資家を含む、主要なステークホルダーへに対し、一連の提言を示している。

さらに、報告書は、DSEZの開発業者が、強制立ち退きや適切な食と住へのアクセスの権利、先住民族の権利に関連する国際・地域・国内の関連法規、水準、その他の責任義務を遵守してこなかったことを示している。こうした違反は、同事業のパートナーによる早急な対応が必要である。

「同国の市民を保護するのは、国の主要な責任だ。人権侵害や環境破壊、そして、住民の生活破壊を引き起こす同事業を再開すれば、両政府は歴史によって非常に厳格な評価を下されるだろう。」DDAコーディネーターのU Thant Zinは述べた。

(以下、連絡先)

(以上)

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

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