ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >ドンサホンダム >メコンデルタ住民はドンサホン水力発電所建設に不同意
メコン河開発メールニュース2014年12月4日
現在、中国より下流のメコン河本流では、2つの本流ダム事業が進行しています。一つはラオス北部のサイヤブリダム、そして南部のドンサホンダムです。ドンサホンダムはカンボジアとラオスとの国境から2キロメートルほどしか離れておらず、カンボジアのみならずベトナムへの影響も強く懸念されています。このドンサホンは発電可能量約260メガワットでそれほど大型のダムとは言えません。しかし、建設地は魚を中心とする水生生物がとても豊かな場所で、研究者が「生態学的にみて最悪の場所」と指摘するほど大きな影響が懸念されています。
ドンサホンダムについて
http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html
建設地の魚と漁業についてWorldFish Centerのレポート(翻訳)
http://www.mekongwatch.org/PDF/DonSahong_WorldFish2007_j.pdf
その他にも、メコン河の水の流れを変え、流れる土砂を堰き止めるなど、たくさんの環境影響が指摘されています。流域住民の懸念は非常に大きいのですが、その意見をダム事業の決定に反映させる仕組みは脆弱です。流域の開発調整機関として結成されたメコン河委員会(MRC)は11月になって、ドンサホンダムに関する意見聴取の手続きは、実は7月に始まっていた、と突然公表しました。多くの市民グループはこれに反発、MRCの言うところの「公聴会」をボイコットする動きがある一方、市民の政策への意思表示の機会が限られるベトナムでは、会合を使って、自分たちの懸念を最大限伝えようという努力が続いています。その会合でメコンデルタに暮らす住民から強い懸念が示された、という現地の報道を新聞記事の翻訳でお伝えします。
2014年12月1日
『ベトナム青年連合会機関紙タインニエン(青年報)』
Chi Nhan記者
ベトナム・メコンデルタ六省・市(カマウ、ソクチャン、アンザン、キエンザン、ヴィンロン、カントー)で11月下旬に二週間かけて行われたドンサホン水力発電所建設に関する行政区レベル公聴会の結果、百パーセントの住民がラオス・チャンパーサック県で行われるドンサホン水力発電所建設に不同意であることが判明した。
公聴会はベトナム・メコン河委員会の委託を受けた(訳注:市民団体)グリーニッドと、ベトナム河川ネットワーク(VRN)、生物多様性及び代表者開発センターがベトナム政府メコンデルタ指導委員会及び各省・市婦人会の協力を得て実施した。
今回の公聴会は、メコン河流域国で初めて、外国に建設される水力発電所・ダムについて関係する流域住民の意見を聴取したものである。住民によれば、もしドンサホン水力発電ダムが着工された場合、まったく利益がないばかりか、沖積土がメコンデルタに来なくなって土地の肥沃さが失われ、各地の河岸で深刻な侵食が起き、乾季の淡水量が不足して各地でさらに塩害が悪化し、漁業資源が完全に失われて住民の生計を破壊する恐れがある、という。
ラオス政府は去る2013年9月にカンボジア国境から2キロメートル、ベトナム・国境から420キロメートル離れたドンサホン水力発電所建設計画を発表した。公聴会の最終報告は2015年1月にメコン河委員会の閣僚級会議で発表される予定である。
(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)