ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>移転を迫られる村(1)人びとの暮らし
メコン河開発メールニュース2015年4月1日
先日、セサン下流2ダムの影響を受けるクバールロミア村(北東カンボジア、ストゥントレン州)の住民が、川の重要性を訴えるイベントを開催したことをお伝えしました。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20150324_01.html
このクバールロミア村はスレポック川沿いにある村で、少数民族プノンの人びとが多く暮らすところです。村人は農業を中心とした生活を営み、川を水源、食料採取の場として利用しています。しかし、スレポック川はここ10年ほどで大きく変わってしまいました。上流のベトナム国内に、ブオンクオップなど複数のダムが建設され、河川環境が激変したからです。村の周辺では魚が減り、急な増水を伴う洪水も多発するようになりました。川沿いの豊かな土壌の水田で、あまるほどとれた主食のコメの生産量は世帯が1年間生活するのに足りなくなったともいいます。しかし、その劣化した環境でも、村人は周辺の林産物を利用できることなどから、この土地で暮らし続けたいと言います。
今、村はセサン下流2ダムの水没予定地となり、建設に伴う強制移転に直面しています。メコン河開発メールニュースでは、3回にわたり2月の現地訪問の際に聞いた人びとの声をお伝えします。
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刺し網漁をする男性
ダムの影響を受けても、村人は頻繁に川で漁をしているといいます。
夕方、刺し網で漁をしていた年配の男性は、「漁にいかなければ何を食べるのかい」と穏やかに笑っていました。朝、暗いうちから船着き場に集められた魚は、仲買人に買い上げられ町に届けられています。魚は、現金収入としても重要です。
村の周囲には、魚の保護区も設けられ、住民自身によって管理されているとのことです。
村人は今の村の場所が、精霊との約束の地だとも言います。人びとは、土地が豊かだというだけでなく、目に見えない精霊の意向をとても気にかけているのです。
村の女性Sさんは「ポルポト時代、何度か村を移しました。前の場所では、病人が出たり事故が起きたりと悪いことが続きました。そこに人が住むのを精霊が好まないと、そういったことが起きるのです。今の村はコメが不足しても森からイモを掘ってきて、代用にすることもできる、暮らしやすい場所です。それだけではなく、私たちはここに住んで祭祀をすると、精霊や先祖の霊にも約束しています。私はここで生まれたし、何があっても離れない。ここは運の良い場所だから」と言い、移転には応じないと強い調子で話しました。
魚の保護区の看板
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)