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メコン河開発メールニュース2015年6月26日
ラオスで建設予定のドンサホンダムは、流域4か国の調整機関であるメコン河委員会(MRC)の「通知、事前の協議および同意の手順(PNPCA)」に則った協議が続いていましたが、ラオス政府は2月7日、協議が終了したと発表していました。
6月19日、MRCの正式発表があり、協議が政府レベルの会合に移ったことが明らかになりました。
メコン河下流国はドンサホンダム事業の事前協議を政府レベルに:
ドンサホンダムは、メコン河の生態系と流域の人々の暮らしに、大きな影響を及ぼす事業ですが、今後の意思決定のプロセスは、ますます不透明になってきました。MRCは1995年に結成された際、流域の持続的な開発をうたい、設置の前文には「水資源利用及び開発から発生しうる係争、問題をゆだね、円満迅速かつ友好的に解決するために効率的・機能的共同組織機構を設置する必要性を自覚」とあり、調整機能を持つとされました。しかし実際には、最初の下流域での本流ダムであるサイヤブリダムの計画が持ち上がった際、市民社会の意見を吸い上げることはできず多くの批判を受け、今回のドンサホンダムでは政府間の合意形成にも失敗したことになります。
日本のMRCに対する関与は、農林水産省が約3500万円(平成25年度)の拠出金を出すにとどまりますが、2009年の「『グリーン・メコンに向けた10年』イニシアティブに関する行動計画」で日本政府として、「メコン河委員会を通じて総合水資源管理(IWRM)のアプローチを促進していく」としています。しかし、その実現は難しい状況と言えるでしょう。
また、6月24日にはMRCを支援するドナー国の声明が発表され、MRCが2016年以降に今までどおりに活動を続けるだけの資金を調達できていないことが明らかとなっています。
まずは、ドンサホンダムの協議について、カンボジアのプノンペン・ポストの記事をご紹介します。
2015年6月20日
プノンペン・ポスト Shaun Turton記者
メコン川委員会(MRC)のメンバーは、計画されているドンサホンダムの将来についてMRCの評議会を通じた合意形成に失敗し、今後は政府レベルで議論を行っていく、と昨日発表された。
声明でMRCは、この260メガワットの水力発電所の事前協議をいつ終わらせるべきかについては、まだ異なる見解があり、カンボジア、タイ、ベトナムとラオス政府が、外交ルートを通じて解決に至るよう委ねるとした。
この声明の発表は、6か月前にこの件(訳注:MRC合同委員会では合意形成に至れないこと)が、政府間組織の最高統治機関であるMRC評議会に付託されたのを受けてである。
ラオスはこのダムを進める決定をしているが、その他のメコン河下流国は、川の生態系に与える影響を更に調査するためにももっと時間を確保すべきだと主張している。
MRCによると、いかなる決定についてでも、各国政府は更なる手続のためにそれを MRC評議会に伝えることができ、また、国際法の原則に従って、相互の合意により調停に訴えることができる。
自然保護グループのインターナショナル・リバーズ(注:米国NGO)は昨日、発表の意味するところは依然不明瞭であり、この件の国際的な重要性を鑑みると、各国政府に委ねるという決定をした点についてより明白にすべきと訴えた。
インターナショナル・リバーズのタイのキャンペーンコーディネーター、Pianporn Deetesは「この、流域にとって重要な件について誰が責任を持つのか、また、MRCがまだこの件について議論と検討をする政府間プラットフォームとしての役割を果たせるのか、明らかではない」と述べた。
(翻訳・文責 メコン・ウォッチ)