ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ・ティラワ経済特区>次期開発区域の「環境社会配慮文書の策定に関する質問書」をJICAに提出
メコン河開発メールニュース2015年11月9日
現在、国際協力機構(JICA)の支援の下、ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)次期開発区域(2,000ヘクタール)の戦略的環境アセスメント(SEA)、環境アセスメント(EIA)、および、住民移転計画(RAP)の策定が進められています。
10月30日、メコン・ウォッチは、これら環境社会配慮文書の策定プロセス・内容について、依然として不明瞭な点や改善が必要な点が見られることから、JICAに以下の質問書を提出しました。
2015年10月30日
独立行政法人国際協力機構 理事長 北岡 伸一 様
ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)整備事業
環境社会配慮文書の策定に関する質問書
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
代表理事 福田健治
現在、貴機構が協力準備調査を実施中のビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)整備事業(2,000ヘクタール)について、昨年に続き、「戦略的環境アセスメント(SEA)」や「住民移転計画(RAP)」に係る協議会が現地で開催されています。これら環境社会配慮文書の策定にあたっては、同SEZ早期開発区域(約400ヘクタール)の際に得られた教訓を踏まえ、協議会への幅広いステークホルダーの参加の確保など適切な配慮が見られる点もある一方、策定プロセス・内容等において、依然として不明瞭な点や改善が求められる点も見られます。
したがって、SEA、環境アセスメント(EIA)、および、RAPの策定にあたり、貴機構の協力準備調査における方針等につき、下記のとおり質問書を提出させていただきます。貴機構におかれましては、下記をご査収いただき、3週間を目処に書面にて御回答いただけますよう、よろしくお願い致します。
JICA環境社会配慮ガイドライン(以下、ガイドライン)の規定に則ったしかるべき対応がとられるよう、本質問書の内容にご留意いただくとともに、特に住民移転計画の策定にあたっては、(1)同SEZ早期開発区域の住民移転計画策定・実施において、すでに得られている教訓、(2)昨年6月に影響住民が異議申立書において指摘した内容、(3)同申立書に係る異議申立審査役による調査結果を踏まえた適切な対応がなされていくよう、貴機構に十分ご配慮いただけることを期待しております。
記
質問事項:
1.SEAとEIAの策定スケジュールについて
@すでに、昨年の協議会で説明されたスケジュールは大幅に変更になっていると理解しているが、現段階でのSEA報告書のドラフト版、および、最終版の完成予定時期、協議会、および、パブリック・コメント受付の予定時期/回数について、教えていただきたい。
AEIAは昨年の協議会で、スコーピング案が示されていたと理解しているが、現在、どのような策定段階にあるのか、教えていただきたい。また、現段階でのEIA報告書のドラフト版、および、最終版の完成予定時期、協議会、および、パブリック・コメント受付の予定時期/回数について、教えていただきたい。
B上記@、および、Aの情報は協議会等で住民にわかりやすく説明されるべきと考えるが、いかがか。
2.SEAとEIAの内容、および、議論に必要な情報について
※ SEA報告書ドラフト版(2015年8月公開)の内容に対する弊団体のコメントについては、添付のパブリック・コメント文書(2015年9月30日付)を参照されたい。
@SEAの策定プロセスにおいては、2,000 ヘクタール全体の開発による環境社会影響を評価する必要があるため、2,000ヘクタールの開発の全体像(どの場所が、どの時期に、どのような目的・業種で開発されるのか等)を理解しておく必要があると考えるが、いかがか。
ASEAの策定プロセスにおいて、住民が適切に環境社会影響の可能性を予測し、懸念を伝えられるよう、2,000ヘクタール全体の開発計画に係る情報(マスター・プラン、あるいは、実行可能性調査等)について、住民の理解できる言語・様式で公開するべきと考えるが、いかがか。
B今年9月、同SEZ次期開発区域(500〜700ヘクタール)に係るMOUが日緬両政府間で締結されたと理解しているが、EIAは2,000ヘクタール全体を対象に1回のみ実施する予定か、あるいは、フェーズ毎に複数回実施する予定か、教えていただきたい。
C上記Bの情報は協議会等で住民にわかりやすく説明されるべきと考えるが、いかがか。
3.RAPの策定スケジュールについて
@現段階でのRAP報告書のドラフト版、および、最終版の完成予定時期、協議会、および、パブリック・コメント受付の予定時期/回数について、教えていただきたい。
A上記@の情報は協議会等で住民にわかりやすく説明されるべきと考えるが、いかがか。
B今後、RAPの詳細な内容を詰めていくにあたっては、一つの議事事項に対して十分な協議時間の充当、もしくは、複数回にわたる協議の場の設定等を考慮すべきと考えるが、いかがか。
4.RAPの内容について
@今年10月に公開された住民移転計画に係る「フレームワーク」の内容は、同SEZ早期開発区域(400ヘクタール)の住民移転計画の内容と比較し、どの点において、どのような相違があるか、あるいは、どのような配慮がなされているか、教えていただきたい。
A上記「フレームワーク」では、移転対象地域を6区域に分割し、さらに、移転時期については4回に分けて実施されることが説明されている。この6区域、あるいは、4回という枠組みは、マスター・プラン、あるいは、実行可能性調査の内容に基づくものか。各々、そうなっている根拠を教えていただきたい。
BAで言及した移転時期については、明確な時期は示されていないと理解しているが、どのようなスケジュールで移転を実施する予定か(フェーズ毎の開発時期によるのか、あるいは、開発時期にかかわらず、1〜4回の移転時期について一定の期間毎、例えば、1年毎に実施を予定している等)、教えていただきたい。
C上記Bの情報は協議会等で住民にわかりやすく説明されるべきと考えるが、いかがか。
D同SEZ早期開発区域の住民移転にあたっては、補償内容に加え、生計回復支援の遅れが移転住民の生活悪化の一因であったと考える。同SEZ次期開発区域の着工時期については依然として定かでないが、移転住民の生活悪化を回避するため、生計回復支援、職業訓練、雇用斡旋等は着工前、つまり、移転の実施前に十分な時間的余裕をもって開始しておく必要があると考えるが、いかがか。
以上
連絡先:
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F
Tel: 03-3832-5034, Fax: 03-3832-5039
Cc: 外務大臣 岸田 文雄 様
JICA 環境社会配慮ガイドライン異議申立審査役
JICA 環境社会配慮助言委員会 各委員
※ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業
パッケージ型インフラ事業として、日本の官民を挙げて進められている。ヤンゴン中心市街地から南東約23kmに位置するティラワ地区2,400ヘクタールに、製造業用地域、商業用地域等を総合的に開発する事業。フェーズ1(400ヘクタール)に海外投融資による出資をJICAが決定(ODAによる民間支援)。三菱商事、住友商事、丸紅が参画。JICAは残り2,000ヘクタールにおいても協力準備調査を実施中で、環境アセスメントや住民移転計画の策定を支援している。フェーズ1は2013年11月に着工し、68家族(約300人)がすでに移転。残り2,000ヘクタールの開発では、さらに約1,000家族(約4,000人)が移転を迫られることになる。
→ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業についての詳細はこちら
http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html
(文責 メコン・ウォッチ)