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メコン本流ダム>NGO「ダムは気候変動を悪化させる」

メコン河開発メールニュース2015年12月17日

12月11日、パリの気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が閉会しました。気候変動という難題で国際的な合意を形成することは重要です。しかし、個別の課題もていねいに検証してゆく必要があります。

例えば、COP21をはじめ国際機関や日本政府(経済産業省)も、水力発電/ダムを「CO2排出量が非常に少ないクリーンなエネルギー」と位置付けていますが、ほんとうなのでしょうか?

メコン・ウォッチの経験で言えば、ラオス中部で操業中のナムトゥン2ダムでは、表面積450平方kmの貯水池から排出する温室効果ガスの量をかなり過小評価していたとの報告があります[1]。貯水前の除去が不徹底なまま腐食した樹木や草など(バイオマス)がメタンガスや二酸化炭素をかなりの量で放出しているようです。

水力発電、とりわけ巨大なダムをクリーンなエネルギー源と認知しつづければ、気候変動対策の名目でダム建設を正当化し、ほんとうに必要な対策を圧迫することになります。この件に懸念を持つ科学者やNGOが、COP21の参加国政府に対して声明と報告書を発表しました。

カンボジア・プノンペンポスト紙の報道の日本語訳を通して、この件を紹介します。

COP21で、NGOがダム建設を批判

2015年12月11日
プノンペンポスト[2]
Zoe Holman記者

カンボジア国内の河川で建設中の大規模ダムをはじめ、おもな水力発電事業は気候変動の「解決策」にはならないと、NGO連合300団体が、先週、パリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)の参加国政府に対して、水力発電事業を気候変動対策から除外するよう呼びかけた[3]。

この声明の中でNGOは、水力発電が「クリーンでグリーンな」エネルギー源であるかのように、世界銀行の気候投資基金(Climate Investment Funds)といったクレジット制度を通じて、気候変動対策資金を受給していると指摘した。この声明には、カンボジアからも5団体のNGOが名前を連ねている。

世界3,700か所あまりで建設予定のダムは、気候変動の影響を緩和するよりも、かえって悪化させる可能性が高いと声明は述べている。悪影響の中では、特に熱帯地方の貯水池から発生する温室効果ガスの増加が、航空機の運航に匹敵したり、石炭火力発電所の排出量を上回る場合もあるとしている。

最近、「メコン河を守る科学者たち」を名乗るグループが、COP21での交渉を視野に水力発電の問題を警告する目的で発表した報告書も、流域全体を視野に同様の懸念を示している[4]。報告書によれば、メコン河の11か所に建設予定のダムによる影響で、カンボジアとベトナムの漁獲高が年間約56万トン減少し、大ナマズや川イルカなどの種も絶滅する危険性がある。

「COP21では、水力発電所を『クリーンでグリーンなエネルギー源』だとして推進していますが、これほど真実から遠い話はありません」と、報告書を執筆したLilliana Corredor博士は述べ、水力発電にクリーンなエネルギーというお墨付きを与えれば、中国のダム建設が勢いづくと指摘した。

「私たちは、COP21に対して、水力発電は巨大な汚染源で、気候変動を加速するという観点から検証すべきだと提言します。また、裕福な国々が排出量をクリーンなエネルギーによって相殺できる世界炭素市場(Global Carbon Market)の対象から、水力発電を外すべきです」。

カンボジア政府は、すでに水力発電を「約束草案(Intended Nationally Determined Contribution)」と呼ぶ気候変動対策の重要項目に位置付けており、これを変更する可能性は低い。しかし、カンボジアのNGOは、ダムの建設によって生態系や社会・経済が破壊されると主張している。

「ダムが長期的な経済成長に有効だと思われたとしても、貧困の削減に資したり、環境破壊を正当化できるものではありません」と今回の声明に署名したNGOであるEquitable CambodiaのEang Vuthy代表は語った。

Vuthy代表は、セサン下流第二ダムが河川に依存する百万人もの人びとの生計を破壊することへのさまざまな懸念点をあげた[4]。「カンボジア政府はダムの影響にかんするきちんとした調査を行っていません。私たちで代替案を検討し、クリーンな計画を立てる必要があります」。

これに対して、セサン下流第二水力発電会社のZhonghua Ren役員会事務担当は、同ダムがカンボジアの電力不足へのクリーンで経済的な解決策であると語った。また、事務担当は、「(セサン下流第二ダムが)カンボジアの電力網に、安全・安定・安価ですぐれたクリーンエネルギーを供給し、地域経済の活性化や雇用機会の創出といった(数多くの)分野で積極的な役割を果たします」とも述べた。

昨日の時点で、カンボジア政府・環境省COP21代表団からのコメントは得られていない。


訳注
[1] Jiaoni Zhou. 2001. Nam Theun 2 Hydroelectric Project, Laos: A Life Cycle Assessment of Greenhouse Gas Emissions. Lap Lambert(2011年)
Melinda Boh. “A Dam too Far in Laos”. Asia Times(2013年4月12日)
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/SEA-01-120413.html
ナムトゥン2ダムについては、以下を参照
http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_nt2.html
[2] 原文(英語)は、以下で閲覧可能
http://www.phnompenhpost.com/national/ngos-condemn-dam-power-cop21
[3] 10 Reasons Why Climate Initiatives Should Not Include Large Hydropower Projects: A Civil Society Manifesto for the Support of Real Climate Solutions(2015年12月3日)
http://www.internationalrivers.org/node/9204
[4] Lilliana Corredor. COP21: Mekong Dolphin Extinction, Hydropower and Climate Change(2015年11月25日)
https://scientists4mekongdotcom.files.wordpress.com/2015/11/cop21-dolphin-extinction-dams-climate-change.pdf

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

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