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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ・ダウェイ経済特区>ビジネスと人権(3)タイ国家人権委員会:企業による人権侵害を報告

ビルマ・ダウェイ経済特区>ビジネスと人権(3)環境アセスメントなしで進んだ工事

メコン河開発メールニュース2016年5月30日

ダウェイ経済特区(SEZ)は、ミャンマー(ビルマ)南部の農・漁村である事業予定地に、日本第2位の湖面積を持つ霞ヶ浦とほぼ同じサイズの工業団地20,451ヘクタールを開発し、そこに深海港、石油精製コンプレックス、発電所等を建設するという巨大事業として計画されました。また、SEZ地域外の関連インフラ事業には、SEZとタイを結ぶ国際幹線道路連結事業、SEZへの水供給を目的とした大型貯水ダム事業もあげられています。

 この事業は2008年から、イタリアン・タイ・デベロップメント社(ITD社)(75%)とマックス・ミャンマー社(25%)の出資で作られたダウェイ・デベロップメント社が進めてきました。前回ご紹介したタイ国家人権委員会(NHRC)の報告書「コミュニティの権利 タイ政府が共同開発の覚書を交わしているミャンマー連邦共和国内ダウェイ深海港、経済特区事業におけるダウェイ住民に対する人権侵害(2015年11月23日付)」は、ITD社が主導して進めてきた開発が現地住民に対し様々な人権侵害を引き起こしたことを公式に認め、改善を促しています。

報告書の非公式英語訳
(全文)
http://www.mekongwatch.org/PDF/daweiNHRCT_ReportFull_ENG.pdf
(サマリー)
http://www.mekongwatch.org/PDF/daweiNHRCT_ReportSummary_ENG.pdf

チュラロンコン大学環境研究所はITD社からの委託で、道路事業などでの環境アセスメントを手がけました。しかし、2014年10月21日に開かれたNHRCのコミュニティ権小委員会会合での聞き取りで、「自分たちの調査開始後に、ITD社が既に建設を始めていたことが分かり、研究所が行うはずであった世界銀行の基準にしたがった環境影響評価を実施することが不可能であった」、と証言しています。

環境アセスメントは、大規模開発事業を実施する際に環境社会影響の回避・軽減を目的とし、事業開始前に影響を予測・評価し、適切な環境配慮を策定するものです。世界銀行などが定める基準では当然、工事を始める前の環境を評価しなくてはなりません(しかし、その世銀も過去にはラオスのナムトゥン2ダムの事業で、大規模な森林伐採後に実施された環境アセスメントを承認していますが)。

環境研究所は、他にも以下のような問題を発見したことを小委員会に口頭で報告しました。

 ・道路はすでに完工しており、調査中に地滑りや土壌浸食、新規参入者による森林地域の占有、多数の外部者の流入といった悪影響がすでに生じている。その新規道路は村人の利用する既存の地方道路へのアクセスを遮断している。

 ・タニンダーリ川と後背地に沿った道路建設の悪影響(注:斜面の切り出しによる土砂崩れなどを指すと思われる)が出ており、今後も生じ続けることが判明した。

 ・村人の土地は既に接収され補償支払いに関して問題が生じていた。土地利用も制約を受けている。

 ・地元住民が作物を植え農耕している丘陵における道路建設の場合、土壌浸食や地滑りが生じており、作物が土に埋まってしまったり、村人の水路が詰まったりしている。このような農耕や水資源を破壊した影響に対する補償はない。

 ・ミャンマーは生物多様性条約(CBD)を批准しているが、タイのカンチャナブリからミャンマー南部に至る象の移動経路が悪影響を受けている。

 ・山岳地帯や河川に沿って暮らす村人は自然資源利用に生活の多くを依存しており、事業による土地利用や環境の変化がその生業・生活に悪影響をもたらしている。

 ・現地住民はITDの事業が自分たちの貧困を緩和するとは思っていない。事業から便益が得られるとは考えていない。

同研究所の証言者は、事業の妥当性や持続可能な開発、タイへの恩恵、また、ミャンマーの人々にどのような影響を及ぼすのかという観点から、本事業の評価をやり直す必要があると発言しています。更に、8カ月間の調査結果がITDに提出されたものの承認されず、その後、ITD側が最終報告書の作成に関する契約を打ち切ったと報告しました。

一方、2015年の8月には、一度開発権を喪失したITD社が再びダウェイSEZの初期開発段階(面積27 平方キロメートル)を運営する開発事業権をミャンマー政府から得て、タイ企業ロジャナ工業団地社とLNGプラス・インターナショナルと提携し事業に返り咲いています。また、2016年2月のメコン・ウォッチの現地訪問の際、道路事業に関する住民協議会のスケジュールについて周知に来ていたITDの合弁企業MIE(Myanmar Industrial Estate Company Limited)スタッフに現場で出会い、環境アセスメントが始まっていることが分かりました。同時に、事業の実施ありきで行われている環境アセスメント調査に住民が強い懸念と不満を持っていることも明らかになっています。

次回はタイ国家人権委員会の事業に対する見解についてご紹介します。

(文責 メコン・ウォッチ)

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