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ミャンマー・ティラワ経済特区>次期開発事業の概要・現状と課題(1)

メコン河開発メールニュース2016年7月7日



一部開所したティラワSEZ初期開発区域のゲート(2016年2月)

工事の進むティラワSEZ初期開発区域(2016年3月)

ミャンマー(ビルマ)の最大都市ヤンゴン近郊で、日本が官民を挙げて進めている「ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業(※)」(総面積:2,400ヘクタール)は、初期開発区域の一部が2015年9月に正式開業。同時に、次期開発区域に関する覚書も締結され、具体的な事業概要が徐々に明らかになってきました。現地では、次期開発区域に関する環境アセスメント(EIA)や移転計画の策定のため、住民協議会等が頻繁に開催されていますが、その過程では、適切な情報公開や意味ある住民参加の確保など、改善が求められる面も見られます。また、初期開発よりも影響を受ける世帯数が格段に多くなるなか、初期開発から得られた教訓を次期開発でどう活かし、移転世帯の生活悪化を回避していけるのか注視が必要です。


●次期開発事業(B区域)の概要とJICA出資検討

ティラワSEZ次期開発区域は当初、250ヘクタールとも500ヘクタールとも言われており、正確な規模が不明でした。700ヘクタールという最終的な数字が明らかになったのは、2015年9月23日に事業関係者間で了解覚書(MOU)が締結されたときです。また、700ヘクタール全体が以下のように3つの用途区分に分かれ、各々の開発業者も異なることが判明したのは、後述の環境アセスメント(EIA)の策定手続きが始まった2015年12月頃でした。

用途       面積(ヘクタール)   開発業者
工業区域       約262       MJTD
物流区域       約267       TPD
住宅及び商業区域    約169    TPD

 

MJTD(ミャンマー・ジャパン・ティラワ・ディベロップメント社)は、ミャンマーと日本の出資比率が51%:49%で、日本側はすでに3商社(三菱商事、丸紅、住友商事)が初期開発区域に続き、出資を決定しています。JICAは初期開発区域に続き出資するか否かを検討中で、現在、JICA環境社会配慮ガイドラインに則った適切な環境社会配慮がなされているか審査を行なっています。

MJTDが開発する工業区域262ヘクタールは、さらに100ヘクタールの先行開発区域と残り162ヘクタールに区分けされており、移転計画の策定・協議も前者は移転区域2-1、後者は移転区域2-2と分けられて進められています(移転区域の分類については、後段の補足を参照)。EIA(2016年5月http://www.jica.go.jp/english/our_work/social_environmental/id/asia/southeast/category_a_b_fi.html )によれば、100ヘクタール区域は2016年10月に着工し、2018年初期に開業が予定されています。残り162ヘクタール区域の具体的な開発スケジュールは未定とされています。

工業区域以外を担うとされるTPD(ティラワ・プロパティー・ディベロップメント社)は、MTSH(ミャンマー・ティラワSEZホールディング・パブリック社:ミャンマー企業9社で構成)とティラワSEZ管理委員会で構成されており、日本の出資はゼロになっています。

結果として、現在JICAが行なっている環境審査は、工業区域(262ヘクタール)のみのEIA、および、移転計画を対象に行なわれています。しかし、残りの物流・住宅・商業区域を含むSEZ事業全体の累積的影響も、当然、考慮の対象とすべきです。

●EIA策定段階の問題

その工業区域(262ヘクタール)部分のEIA報告書は、2016年5月27日にMJTDからティラワSEZ管理委員会に提出され、早くも2016年6月10日に承認されています。そして、同日にJICAのウェブサイトでもEIA報告書等(すべて英語版)が公開されました(http://www.jica.go.jp/english/our_work/social_environmental/id/asia/southeast/category_a_b_fi.html )。

EIAの策定にあたっては、スコーピング(検討評価項目の範囲や調査方法の決定)段階、および、EIA報告書ドラフト版の段階で住民協議、および、パブリック・コメントの受付が行なわれました。ティラワSEZ初期開発(400ヘクタール)のEIA策定過程では住民参加・情報公開等に多くの問題点が見られましたが、今回は、幅広い住民が協議に参加するなど、改善がみられた面もあります。しかし、以下のとおり、情報公開の方法や意味ある住民参加の確保など、改善が求められる面も依然として見られました。

<スコーピング段階>
12月下旬に住民協議が開催され、EIAスコーピング報告書ドラフト版(工業区域)へのパブリック・コメントの受付が1月中旬まで行なわれましたが、このドラフト版の情報公開方法・内容に問題が見られました。(注:物流・住宅・商業区域のEIAスコーピング報告書ドラフト版の公開、および、パブリック・コメント受付は1月下旬に実施。)

・・・・・文書の現地語版の公開は要約版のみで、全文は見られず

スコーピング報告書ドラフト版の文書は、全文版のほか要約版が準備されていましたが、両方が公開されたのは英文のみで、現地語であるミャンマー語では要約版しか公開されていませんでした。現地住民は英語を理解できないため、同事業において最重要のステークホルダーである影響住民が情報を適切に入手できない状況が生じていたことになります。

この点について、JICAは「ミャンマー法で(ドラフト版全文の現地語公開が)求められていない」、また、「JICAガイドラインではEIAスコーピング報告書ドラフト版の要約版の公開をもって不十分であるとは規定しておらず、JICAガイドライン違反ではない」とし、手続きに問題はないという見解を示しました(2016年1月15日JICA環境社会配慮助言委員会 全体会合)。

こうしたJICAの姿勢は、「住民参加」を謳いながら国際援助を進めるJICA事業の現場でいかに「参加」が形骸化しているか、その実態の一端を示すものだと言えます。JICAは住民が英語の読み書きも会話もできないことを承知している以上、住民の生活に影響を及ぼす事業の意思決定に住民自身が適切に参加できるよう、事業情報を現地語でしっかりと準備するなど、最大限の配慮を行なうべきです。

・・・・・文書の公開は各村に1冊ずつのみ

EIAスコーピング報告書ドラフト版は各村に1冊ずつ配置され、閲覧のみ可、つまり、持ち出しは禁止されていました。数百世帯を抱える村もあることを考慮すれば、この情報公開の方法が適切であるとはとても言い難い状況でした。

・・・・・翻訳の正確性に疑問

EIAスコーピング報告書ドラフト版の要約版を確認したところ、英語版と現地語版の内容に齟齬が見られる点が数箇所ありました。どちらの言語が原文であったにせよ、翻訳版の内容は原文に一致すべきであり、この点、翻訳の精度を高めることが求められます。

<EIA報告書ドラフト版段階>
4月上旬に住民協議が開催され、EIA報告書ドラフト版(工業区域、および、物流・住宅・商業区域の2種類)へのパブリック・コメントの受付が4月下旬まで行なわれました。今回は現地語でも要約版ならびに全文版が準備・公開され、文書の公開場所についても4箇所が増加されるなど、スコーピング段階より一定の改善が見られました。

一方、このEIA報告書ドラフト版に関し、現地住民組織ティラワ社会開発グループ(TSDG)は同事業の環境アセスメント請負企業に対し、4月27日付で要請書を提出。同要請書のなかでTSDGは以下の点を指摘しました。

こうした意見を踏まえ、メコン・ウォッチからはJICA、および、同環境社会配慮助言委員会に対し、5月13日付で意見書を提出。JICA環境社会配慮ガイドラインにおいて、「環境アセスメント報告書は、 …… (中略) …… 説明に際しては、地域の人々が理解できる言語と様式による書面が作成されねばならない。」と規定されていることから、同事業についても、地域住民が理解できる様式による書面が作成された上で、丁寧な説明がなされることが、ガイドライン遵守の観点からも必要であることを指摘しました。⇒ メコン・ウォッチ意見書の全文はこちら

現地ではこの後、MJTDが5月10日と18日にTSDGとの会合を開き、住民との質疑応答の場が持たれました。また、TSDG側からは、特に建設中や操業中のモニタリングに住民代表が参加できる仕組みを整えたり、今後SEZ内に入るテナント企業の各事業毎のEIA等を公開するなど透明性を高めるよう、提案がなされました。

EIA報告書最終版を読むと、こうした住民側の提案を受け、コミュニティー・エンゲージメントについて追記がなされるなど、配慮された部分も見られます。しかし、具体的な方法等は記述されていないため、今後、同事業が進められていくなかで、モニタリング等への住民参加を実際にどのように確保していくのか、住民側との継続的な話し合いが必要です。

また、実際には、TSDG側はEIA報告書が5月18日の会合後に、そのまま最終化されるとの認識は持っておらず、対話が続けられるものと理解していました。現地でも、EIA報告書が最終化されたとの情報周知は十分なされていない他、EIA報告書最終版のミャンマー語版が公開されているとの情報も周知されていません。結局、住民側がEIA報告書がすでに最終化され、さらに、ミャンマー政府によっても承認されていたことを知ったのは、上述のJICAのホームページにEIA報告書が掲載されていることに気づいたNGOが住民側に伝えたときでした。こうした事業者側の情報周知・説明の不備は、住民の不信を増幅させてしまいます。事業者には、より木目細かな意義ある「コミュニティー・エンゲージメント」を実践することが求められています。

 

※ミャンマー(ビルマ)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業
パッケージ型インフラ事業として、日本が官民を挙げて進めている。ヤンゴン中心市街地から南東約23kmに位置するティラワ地区2,400ヘクタールに、製造業用地域、商業用地域等を総合的に開発する事業。初期開発区域(A区域。400ヘクタール)に海外投融資による出資をJICAが決定(ODAによる民間支援)。三菱商事、住友商事、丸紅が参画。A区域は2015年9月に一部開業している。JICAは残り2,000ヘクタールにおいても協力準備調査を実施していたが、次期開発区域(B区域。700ヘクタール)の了解覚書(MOU)の締結後、上記の日本3商社が出資を決めた262ヘクタール(B区域内)の産業区域の開発に出資を検討中。2016年6月現在、同産業区域の環境アセスメントや住民移転計画の審査を行なっている。A区域は2013年11月に着工し、68世帯(約300人)がすでに移転。残り2,000ヘクタールの開発では、さらに995世帯(3,829人)が移転を迫られることになる。

 

<補足>初期開発区域(400ヘクタール)以外の2,000ヘクタールにおける移転について、今年2月に発表されたミャンマー政府側の移転方針

ティラワSEZ管理委員会が作成した「ティラワ経済特区2,000ヘクタール開発区域のための移転作業枠組み」(以下、「移転枠組み」。http://www.myanmarthilawa.gov.mm/resettlement-plan )によれば、図(出展:同枠組み)で色分けされているような形で、2,000ヘクタールは大きく6つの区域に分けられ、各々の区域内でさらに細分化。計11の区分けがなされています。

そして、下表(同「移転枠組み」内に掲載された表等を加工)のとおり、各々の区毎に、移転計画策定のための準備・協議が順々に開始され、移転計画が11冊用意されることになっています。実際の移転も、準備・協議の開始時期と同じ順番で区毎に進められるようです。

 

移転作業計画の区域

移転作業の暫定開始時期(個々の移転計画の準備開始時期)

移転
世帯数

農地等の影響を受ける世帯数

区域1

2016年半ば

588

12

区域2-1

2016年初め

217

23

区域2-2

2016年初め

区域2-3

2016年半ば

区域2-4

2016年末

区域3-1

2017年初め

30

6

区域3-2

未定

区域4-1

2017年初め

12

15

区域4-2

2017年半ば

区域5

未定

52

13

区域6

未定

96

24

995

93

ティラワSEZ次期開発区域は、この移転区域1〜4までが該当しますが、現地では、先行して進められる予定の工業区域(262ヘクタール)にあたる移転区域2-1、および、2-2の移転協議がすでに開始されています。

しかし、先行する移転区域の移転計画、すなわち、移転・補償措置の内容は後発の移転区域の措置にも色濃く反映される可能性は否めないことから、区域外の住民にとっても重大な関心事です。また、逆に先行移転区域の住民の交渉力が弱く、後発移転区域の住民のほうが交渉力が強かった場合、各移転区域間の移転・補償措置に無用な差が生じ、コミュニティー間の不和につながる可能性も否めません。各区域の移転協議を対象区域の世帯に限定せず、どのように広く意見を吸い上げ、透明性を保った形で進められるかが長期的な視点からも重要です。

 

→ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業についての詳細はこちら
http://www.mekongwatch.org/report/burma/thilawa.html

(文責 メコン・ウォッチ)

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