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ラオス・社会活動家誘拐>強制失踪で夫を奪われた妻たちの訴え

メコン河開発メールニュース2016年12月26日

これまでもお伝えしているとおり、社会活動家ソムバット・ソムポーン氏の誘拐事件は、NGOや市民への弾圧が恣意的に発生するラオスの国家体制の問題点を浮彫りにしています。

同時に、似たような事件は、ソムバット氏誘拐の前後にも、そして他国でも発生しています【1】。そうした事件を「政治的強制失踪」として括ることで、きわめて非人道的な性格が明らかになってきます。とりわけ、強制失踪の被害は、残された家族の生活や心身にまで及びます。


左から、シュイメン氏、アンカナー氏、ピナパー氏

ソムバット氏の失踪から4年目を迎えて、12月19日、バンコク外国人記者クラブで開催された会見「ソムバット・ソムポーン、そして強制失踪の悲劇」(主催ソムバット・イニシアチブ)では、強制失踪によって夫を奪われた3名の女性が登壇し、彼女らを突然襲った出来事について語りました。

ソムバット夫人で訪日の経験もあるシュイメンさんは、「私たちにとって最大の恐怖は忘れ去られること。私たちのことを忘れないでほしい」と、この日の会見をしめくくりました。

メコン・ウォッチでは、シュイメンさんの呼びかけに応えるとともに、「強制失踪」という人権侵害が開発に及ぼす負の側面を重視し、今後も折にふれこの話題を取りあげていきます。

以下では、12月19日の会見で登壇した3名の女性たちの発言を紹介します。会見の様子は、映像(英語、約30分)でもご覧になれます。
・Sombath Somphone and the Tragedy of Enforced Disappearances(バンコク、2016年12月19日): http://www.sombath.org/en/2016/12/the-tragedy-of-enforced-disappearances/

 

■ピナパー・プルックサパン氏(Pinnapa Preuksapan)
ポンラチ・ラックチョンチャルーン氏(Pholachi Rakchongcharoen)、愛称「ビリー」の妻。ビリーさんは、タイ南部ペチャブリ県でカレン民族の土地の権利を守る運動に携わり、地区協議会のメンバーでもあった。2014年4月19日、母親宅から帰宅中に国立公園職員に拘束され、警察は「解放された」とするが、その後の行方は知れない。

「夫が失踪した日から、私はまるで別人です。幼い子の母親でありながら父親の役目も果たしつつ、老いた両親の面倒をみています。カレンの人びとへの支援もボランティアで続けています。

「夫が拘束されたと聞いて、私は近くの警察を訪ね、その日の午後、警察から「国立公園と相談してビリーを釈放した(その後の所在は分からない)」と言われました。私は警察に『夫を捜してほしい』と頼みましたが、聞きいれられませんでした。その後、カレンの友人たちと県知事にも会い、(夫をよからず思っていた)国立公園の所長を異動するよう申し入れましたが、「十分な証拠がない」と断られました。後に起こした訴訟でも『証拠不十分』との判断です。

「タイ政府には、『罰せられるべき人たちが罰せられずに放置されている』ことを強く訴えたいと思います。罰せられるべき人びとはむしろ昇進を果たして、これまで以上に権力をふるっているのが現状です。」

■アンカナー・ニーラパイチット氏(Angkhana Neelapaijit)
ソムチャイ・ニーラパイチット氏(Somchai Neelapaijit)の妻。NGO「平和のための公正財団」を率いるとともに、タイ国家人権委員会のメンバーでもある。夫のソムチャイさんは人権派弁護士として、とりわけタイ南部のイスラム教徒の支援に奔走していた。2004年3月12日、バンコク市内で複数の男たちによって拉致されたとの目撃情報もあるが、その後12年9か月間、行方は知れないままである。

「夫は失踪の直前、拘留中のイスラム教徒に対する警察の暴行・拷問をタイ社会に広く訴えていました。私は看護師でしたが、夫の失踪後は自営業を立上げ、5人の子どもたちを養ってきました。

「タイのマス・メディアは、夫が犯罪者たちの手助けをしていたかのように報道しました。子どもたちも周囲から夫の陰口を聞かされるので、私は、『耳をかさずに。いつか社会の方がお父さんの行動から学ぶ日が来るから』と励ましました。

「私は法律の知識もなにもありませんでしたが、勉強して(強制失踪の)問題を訴えつづけています。政府などに宛てた書簡は100通を下らず、首相や法務大臣とも面会しましたが、決定的な情報は得られずじまいです。2015年になって、最高裁判所が警官1名の責任を認めるなどの判決を下しましたが、この警官もその後行方が分かりません。

「タイ政府は、人権を守るための闘う人びとを保護する制度を確立すべきです。被害者の家族への支援も十分ではありません。また、罰せられるべき者たちが罰せられずに放置されている現状にも目を向けるべきです。」

■シュイメン・ウン氏(Shui-Meng Ng)
農村開発での功績などによりマグサイサイ賞を受賞したソムバット・ソムポーン氏(Sombath Sompone)の妻。ソムバットさんは、2012年12月15日夕刻、ラオスの首都ビエンチャンで帰宅途中に警察の検問で停止させられ、その後、現場に現れた別の車で何者かに連れ去られた。その時の様子を近隣の監視カメラがとらえているにもかかわらず、捜査はまったく進展せず、今日に至るまで行方が知れない。

「先のお二人と同じく、夫のソムバットも農村の貧しい家庭に生まれ、それゆえに、困っている人びとに手を差しのべようとしました。機会に恵まれ、米国に留学することになりましたが、出発当時の写真を見ると、空港ロビーで同じ便に乗る裕福な家庭の子弟に囲まれて、どこかぎこちないソムバットの姿が目立ちます。結局、同期の留学生でラオスにの戻ってきたのはソムバットだけでした。

「夫は農民指導に携わりましたが、その手法は教えるというより、農民たちの話によく耳を傾けました。だれからも『ソムバットおじさん』と、親しまれていました。

「夫の失踪後、時間が経っても私の傷は癒えません。それどころか、毎日、事件を思い出し、『なぜ?』と自問します。でも、答えがみつかろうはずもありません。

「失踪直後、夫が何か悪いことに関わったに違いないとのうわさが広まりました。家族や親せきも恐れをなして、私に近づかなくなりました。私は夫が活動の一環で立ち上げた民芸品店を営み、子どももいませんので、先のお二人に比べれば経済的には恵まれています。お二人のご苦労は、並大抵のものではないと思います。

「ソムバットが始めた複合農園は姪が受けついでいます。農園には若い人びとがやってきて、学んでいます。こうした小さな営みが開花する未来を描くことで、私はなんとか前向きに生きていくことができます。

「捜索願を新聞に掲載しようとしても、料金を支払うと言っても断られるようになりました。ラオス政府への訴えは壁に阻まれています。訴えても答がもらえないことがとてもつらい。罰せられるべき者たちが罰せられていないことがとても腹立たしい。政府が国際人権条約に署名をしても、現場では拷問や殺害が横行しています。

「被害家族にとって最大の恐怖は、忘れ去られることです。この場にいるジャーナリストをはじめとするみなさんに訴えたい。私たちのことを忘れないでほしい。」

【注】
1)12月15日にNGOが発した声明「ラオス:強制失踪から4年、市民社会が問い続ける『ソムバット・ソムポーンはどこに?』」では、ラオス国内での強制失踪の被害者として、他の10名にも言及している。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20161215_01.html
また、Enforced Disappearances in Thailand(Justice for Peace Foundation発行、2015年、英語)では、1991年以降タイで発生した強制失踪41件を紹介している(以下の2012年版では、ビリーさんの事件を除く40件)。
http://justiceforpeace.org/wp-content/uploads/2012/06/Enforced_Disappearances_in_Thailand_03.pdf

2)会見を取上げた報道(英語)には、以下のものがある。
・Thailand: Wives of 3 Missing Men Discuss Their Grief(Benar News、2016年12月19日):
http://www.benarnews.org/english/news/thai/forced-disappearance-12192016162703.html
・Wives of missing Thai, Lao activists seek action over disappearances(ロイター、2016年12月20日):
http://www.reuters.com/article/us-thailand-laos-rights-idUSKBN1491Q4
・Wife of Lao Activist Calls on Government to 'Come Clean' on Husband’s Fate(Voice of America、2016年12月21日)
http://www.voanews.com/a/wife-of-lao-activist-calls-on-gov-to-come-clean-on-her-husband-s-fate/3645054.html

3)ソムバット氏と氏の強制失踪に関する情報のまとめ(多言語)
・Sombath Somphone:http://www.sombath.org/en/

(文責 メコン・ウォッチ)

 

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