ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>住民の訴え退け、貯水・試運転か
メコン河開発メールニュース2017年7月14日
ダムの最終的な仕様が公開されないまま、建設が進められてきたカンボジアの下流セサン第2ダムでは、住民の訴えが聞き入れられることなく、明日7月15日(土)から貯水が始まり、一カ月間の試運転が行われる予定です。水没予定地にはまだ多くの住民が残っており、住民は、木曜日の記者会見で貯水の延期を求めましたが、その願いは退けられてしまった様です。「カンボジアデイリー」の記事【1】を和訳し、お伝えします。
水没予定地からは、すでに補償を受入れ移転した住民もいますが、その過程には脅しや資産測定結果の改ざんなどがありました。さらに移転地は川や森、畑から遠く、これまで同様の自然資源とともにある生活は営めません。移転を拒む理由はそれぞれですが、移転地での生活再建が厳しいものだと予測されることもその一つです。
補償移転プロセスにおける問題(聞き取りノート(英語))
http://www.mekongwatch.org/PDF/LS2_NotesCompensationResettlement.pdf
http://www.mekongwatch.org/PDF/LS2_FieldNoteRegardingAssetSurvey.pdf
また、このダムによって上流のラタナキリ州にも影響が出ますが、こちらの住民には影響はおろか、ダム建設自体の情報が伝わっていない状況です。
セサン下流第2ダムについては、こちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
2017年7月14日
The Cambodia Daily
Aun Pheap記者
土曜日に下流セサン第2ダムのテスト(貯水・試運転)が始まると、家屋が数日内に水没するとされる住民たちが、木曜日、猶予を求めたが、それを受け、ストゥントゥレン州の担当者は、その余地はないと述べた。
100家族以上の代表者約10人が、木曜、プノンペンまで出向き、NGOフォーラム主催の、政府にテストをあとひと月延期するよう公に懇願する記者会見に臨んだ。家族らのほとんどは先住少数民族で、政府の用意したセサン地区の移転地に移ることを断り、先祖代々の土地を手放すことには消極的で、伝統的な生活を失うことに不安を感じている。
また彼らは、ダムの貯水が村にまで及ぶかには懐疑的で、近くの丘を移動場所として選んだ。
「みんな、村を離れるのを拒んだ。なぜなら、民族の伝統に則り、漁をしたり家畜を育てて生計を立てやすいからだ」と、村人のひとりChoeun Sreymomは木曜日述べた。「私たちは政府にひと月の延期を求める。スレコー村とクバールロミア村の住民には、新しい丘に所有物を移動する時間が必要。」
さらに彼女は、私たちは丘に道路やクリニック、学校や清潔な水を配備するよう、そして後に補償交渉ができるよう現在の住居を測定するよう、政府に求めると述べた。
政府は、約120家族が村を離れていないとしている。木曜日の村人たちによると、その数は180だ。Duong Pov副知事にあとで問い合わせると、いかなる延期も論外だという答えだった。
「移転地を用意したのに、家族たちはそれを断ったのだ」と。「ダムはスケジュール通りに閉門する。数人のために延期することはできない。」
Pov氏は、家族は自分たちで選んだ丘に滞在することは許されるが、その場所は、政府が別の複数企業に許可したゴム植林プランテーションの中に位置しているため、一時的という条件でだと述べた。
Pov氏は日曜、政府は、水位上昇に合わせ家族を避難させるために、20隻ほどのボートとトラックを待機させると述べていた。400メガワットの下流セサン第2ダムは、カンボジアのロイヤルグループと中国のハイドロランチャン国際エネルギー社の合弁で、スケジュール通り9月25日に運転が開始されれば、カンボジア最大の水力発電ダムとなる。
註
【1】原文(英語)
https://www.cambodiadaily.com/news/govt-rejects-11th-hour-reprieve-for-sesan-dam-families-132499/
(文責・翻訳/メコン・ウォッチ)