ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>試運転の浸水で住民避難、村では当局の圧力
メコン河開発メールニュース2017年8月3日
中国、ベトナム、カンボジアの企業の投資で建設が進むセサン下流2ダム。延期を求める住民の声を退け、予定通りの7月15日(土)からテスト(貯水・試運転)が始まりました。移転を拒み、住民が残っている村は2つあり、その一つスレコー村では家屋浸水が起きたため住民は避難を余儀なくされましたが、一旦水が引いたため今は村に戻っています。
前回のメールニュースはこちらです。 カンボジア・セサン下流2>住民の訴え退け、貯水・試運転か (2017.7.14) http://www.mekongwatch.org/resource/news/20170714_01.html
一方、とりあえず今回のテストでは浸水が起きなかったクバールロミア村でも、すべての水門が閉じた場合やそれが今回のように豪雨と重なった場合どうなるかはわかりません。「カンボジアデイリー」および「プノンペンポスト」の記事【1】【2】を和訳し、お伝えします。
残っている人々は、先祖代々の土地を離れるわけにはいかない、などを理由に移転を拒んでいますが、その住民への当局の圧力は、今回、大勢の警察が村に派遣されていることからもわかります。警察は村を訪れようとする人を追い返しており、ジャーナリストやカンボジアの他地域から支援に駆け付けた少数民族グループも警察に一時拘束されています 。【3】 国連人権高等弁務官事務所のモニタリングチームも2村への訪問を試みたものの、警察による道路封鎖に遭い、安全確保を理由に許可されなかったようです。【4】
セサン下流第2ダムについては、こちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
2017年7月31日
The Cambodia Daily
Aun Pheap記者
下流セサン第2ダムの試運転により家屋が水没するとの政府警告に抵抗していた ストゥントレン州の世帯は、浸水が1メートルに達したため、週末にかけて近隣の丘に避難した、と住民は昨日語った。
400メガワットのダムが試運転を開始して2週間が経とうとしていた水曜夜、水はスレコー村まで達した。そして土曜日、村を飲み込んだ。
「村は1メートルほど水没し、ほとんどの人が安全な丘に移動した」とSuth Thoeun氏は語った。丘とは、住民が一時避難シェルターを設置した、村から数キロ離れた小高い場所のことである。
スレコー村と近隣のクバールロミア村は、ダムの36,000ヘクタールの貯水池へと変わろうとしている場所に位置する。この地域の5,000人の住民の過半数が、近くの移転地への移転に、仕方なく応じたが、この2村の120世帯ほどは退去を拒み、貯水により家屋が破壊されることには懐疑的であった。
州の報道官Men Kong氏によると、セサン川は土曜日、主要計測地点で71メートルを超える高さまで水位が上がった。これは以前伝えられていた、スレコー村が水没すると予測される境界値68メートルを大幅に超えるものだった。
しかしKong氏によると、昨日、川は少し水位を下げ、もし継続して水が引くようであればスレコー村の住民は帰宅できると予想しているとした。彼は、クバールロミア村はまだ浸水していないと付け加えた。
また、浸水の悪化に備え、「この数日で我々はスレコー村にフェリーを用意した」と語った。担当者たちは「フェリーにおり、人びとを避難させる手はずは整っている」と。
しかし人権団体Adhocの同州コーディネーターHon Sam Ol氏によると、2村に緊急避難のためと称し送り込まれた当局担当者たちは、救援どころか、住民たちを移転地への移転に合意させようと、脅しているということだ。
「スレコー村の住民数人に2日前に会ったが、当局が圧力を掛けてきており、移転するよう迫っていると、彼らはAdhocの職員に語った」という。
この指摘をKong氏は否定したが、同時に、スレコー村には30名以上の軍警察、さらにクバールロミア村には20名の軍警察・警察が派遣されていると言い、「住民を保護したいだけだ」と述べた。
2017年8月1日
Phnom Penh Post
Phak Seangly 記者、追加取材Martin de Bourmont
セサン下流第2ダムの公式稼働により影響を受けるストゥントゥレン州の2つの少数民族コミュニティの代表者と、州当局との会合は、州当局が多すぎる条件を付けたことで中止になった、と活動家は語った。
Mother Natureの活動家Thun Ratha氏によると、会合は、クバールロミア村およびすでに浸水したスレコー村の200ほどの住民の何人かと、彼らの移転したくないという希望について話し合うために開かれるはずであったが、代表者35人ではなく10人しか参加できないと言われたため中止になったという。
会合を主催したNGO Forumの開発問題プログラム主任Sun Youra氏は、州当局は、参加するいずれの報道関係者にも会合内容の記録は許可しないと述べ、住民の不信を買ったという。
「私たちは秘密裏の会合など望んでいない。[会合に]開かれたジャーナリストの参加がなければ意味がない」とクバールロミア村のSrang Lanh氏は語った。
ストゥントゥレン州の報道官Men Kong氏は、どちらの条件についてもそれが会合の中止につながったことを否定し、NGO Forumが、2村が席に着くことをきちんと調整できなかったのだと述べた。
Youra氏は、ダムが公式に稼働する前に、スレコー村とクバールロミア村の残留問題がどのように解決されるのか現時点では不明だという。
「残念ながら合意には達せない」「彼らが顔を合わせられないとしたら、我々はこの問題にどう取り組めるのかわからない」と語った。
一方、セサン下流第2ダムでは10個ある水門のうち、試験閉門として8個が2週間ほど閉門されていたが、昨日、うち4個が開門された。
事業者の代表Chhay Meng氏によると、ダム自体の水位は現在69メートル付近に留まっていて、フンセン首相が主宰する9月25日の公式落成の際には、52メートルまで下がるだろうということだった。
深刻な水没を回避するため、式典までの間は、ダムの事業者は水門のうち3個か4個を開けたままにしておく、とMeng氏は述べた。ダムの閉門と豪雨が重なり、スレコー村では村が部分的に1.5メートル水没するという先週の浸水につながった。
註
【1】原文(英語)
https://www.cambodiadaily.com/news/villagers-find-temporary-shelter-sesan-dam-floods-homes-133052/
【2】原文(英語)
http://www.phnompenhpost.com/national/meet-between-officials-dam-villagers-cancelled
【3】http://www.phnompenhpost.com/national/officials-stop-outsiders-travelling-sesan-dam
【4】http://www.phnompenhpost.com/national/un-officials-blocked-visiting-villages-near-dam
(文責・翻訳/メコン・ウォッチ)