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ラオス「持続的な開発のモデル」を検証する(1)

メコンの開発加速の引き金となったナムトゥン2ダム建設

メコン河開発メールニュース2017年11月16日


メコン河は6カ国を流れる国際河川です。それは一つの国の中で行われる河川開発が流域全体に影響することを意味します。

中国・ミャンマーを除く下流4カ国(ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)が加盟するメコン河委員会では、本流での開発を一旦止め流域単位のダムの累積影響調査をしよう、という提案が議論されたこともありましたが、開発は中断されませんでした。今、中国を除くメコン河下流では、本流だけでも3つのダムの計画が進行中で、支流ではさらに多くのダム開発が行われています。

流域国の中でもラオスは、アセアンのバッテリーとなることを目指しています。同国は貿易に不利な内陸国のため、メコン河の豊富な水を使った発電が、ほぼ唯一の経済発展モデルのように言われているためです。

ラオスのこの政策が具体化するのに、重要な役割を果たしたのが中部のカムアン県に建設され2010年に操業を開始したナムトゥン2ダム(以下、NT2)です。「ラオスの貧困削減と環境保全につながる持続的な開発のモデル」として実施されているこの事業には、日本政府が世界銀行(世銀)やアジア開発銀行(ADB)を通し、今も支援を続けています。同事業の前に操業されていた1MW以上の水力発電事業はわずか10基でしたが、現在は操業13、建設段階22、MOU(了解覚書)段階39、事業開発合意の段階は23、という数の水力発電ダム計画が進んでいます[1]。

NT2を契機に、ラオスの水力発電計画の承認が加速したと言えるでしょう。 日本の報道を見ても、発電による売電がラオス経済の中核を担い発展の要になる、という認識が一般的です。しかし、私たちはその開発現場で、「成功」とは程遠い多くの問題を見てきました。 NT2以降のラオスは、タイやマレーシアの民間資本でメコン河本流に大規模ダムを建設しています。また、支流でも中国、ベトナム、韓国、日本などの投資によって次々とダム建設を進めています。今メコン流域では、自然科学や社会的配慮の進歩はなかったかのように、60年前の青写真のほぼそのままダム開発が進んでいる、と言っても過言ではありません。環境や社会への配慮がこれほど議論される中、なぜメコン河流域ではこんなことが起きているのでしょうか。

それは、国際機関である世銀やADBがNT2を良い開発モデルとして強力に推進したことを抜きには語れない、と私たちは考えています。メコン開発メールニュースでは今号から5回にわたって、NT2建設を振り返ります。

【1】ラオスエネルギー鉱業省関連サイト
http://www.poweringprogress.org/new/power-projects

(文責/メコン・ウォッチ)

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