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ラオス「持続的な開発のモデル」を検証する(2)

ナムトゥン2ダムの事業概要と出資者

メコン河開発メールニュース2017年11月17日


ラオスの開発モデルであるナムトゥン2ダム(以下、NT2)は、その環境・社会影響が甚大であることから、メコン・ウォッチは、1990年代から同事業に注目し、財務省(旧大蔵省)との定期協議などの場で、日本政府と議論を続けてきました。

第2回大蔵省-NGO定期協議議事録(1997年9月4日)
http://www.jacses.org/sdap/mof/gijiroku/mof02.pdf

ラオス中部、カムアン県に建設されたこのNT2は、メコン河支流のナムトゥン川に位置します。支流とはいえ、流域面積は約1万4000平方キロメートル、日本の石狩川(流域面積第2位)に匹敵する大きな川です。NT2は、ナムトゥン川の中流を堰き止め、そのダム湖から導水トンネルを通し発電所に水を送ります。発電後の水は、ナムトゥン川ではなくもう一つのメコン支流、セバンファイ川に放水されます。

地図はこちらのページをご覧ください。

http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_nt2_details.html

プロジェクトは民間主導のBOOT方式で進められ、開発企業体であるナムトゥン2電力会社(NTPC)が、建設(Build)、所有(Own)、操業(Operate)し、25年後にラオス政府に移管(Transfer)します。発電能力は1,070メガワット、そのうち95パーセントにあたる995メガワットを隣国タイのタイ発電公社(EGAT)に輸出しています。総事業費は約14.5億ドル、これは2005年のラオスの約GDP50%に匹敵しました。

このNTPCには、当初、フランス電力公社、ラオス電力公社、タイ発電公社の子会社EGCO社、イタリアンタイ・デベロップメント社(ITD)が出資しました。ダム建設終了後ITDは持分をフランス発電公社とEGCOに売却し、現在の出資比率はフランス電力公社(40%)、ラオス電力公社(25%)、タイ発電公社の子会社EGCO社(35%)となっています。

この事業に対して、世界銀行(世銀)は、1997年に日本の信託基金の1つである開発政策・人材育成(PHRD)基金から99万5千ドルを供与し、社会・環境調査を行いました。更に、事業を進めるため出資企業の政治的リスクをカバーする部分的リスク保証(5000万ドル)とラオス政府出資分に対する2000万ドルの融資、多国間投資保証機関(MIGA)による保証(1億ドル)を供与しています。

一方のアジア開発銀行(ADB)は、プロジェクトの準備のため技術援助特別基金(TASF)170万ドルを支援、さらに公共セクター融資(2000万ドル)、民間セクター融資(上限5000万ドル)及び政治的リスク保証(上限5000万ドル)の供与を行っています。

この政治的リスクとは、政治的に不安定な途上国で起こりうる、配当や融資の返済金の兌換停止と送金制限、国有化・収用などで事業が継続できなくなるような政策導入、戦争・内乱等による資産の破壊や事業の中断、政府の契約不履行、などを指します。世界銀行グループのMIGAやADBは、途上国への企業投資を促進するために、こうしたリスクの保証を行っています。

ラオスのように政治的リスクが高いと見なされる国で、多額の民間投資を必要とするNT2建設を実施するためには、世銀とADBの支援が不可欠で、それがなければ、この事業を進めることは不可能だったと言えます。そこには日本政府の意向も強く働いています。

様々なスキームを駆使し、事業を支援した世銀とADBは、「持続的な水力発電開発のモデル」「貧困削減のモデル」としてNT2の成功を宣伝し続けています。しかし、事業のプロセスから、貧困削減・環境保全のシナリオに至るまで、様々な問題があると私たちは考えています。第3回では、事前に指摘されていた事業の問題点をまとめます。

(文責/メコン・ウォッチ)

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