ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー・ダウェイ経済特区>開発企業の社長、野生動物保護区で密猟の疑いで逮捕される
メコン河開発メールニュース2018年3月5日
2月初旬、タイではイタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)社 の社長逮捕のニュースが大々的に報じられました。日本でも2月6日に日本経済新聞が報じています。
イタリアンタイ社長、密猟で逮捕
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26591870W8A200C1FFE000/
各社の報道によると、同社プレムチャイ・カンナスート社長は、タイ西部カンチャナブリ県内の世界自然遺産であるトゥンヤイ・ファイカーケーン野生動物保護区で、許可された場所以外で同社社員らとキャンプをしていたところ、身柄を拘束されました。その際、黒ヒョウなど野生動物の死骸の他、猟銃、大量の弾薬を保持しており、密猟と銃器違法所持の罪に問われています。身柄を拘束されたプレムチャイ氏は容疑を否認、2月6日に15万バーツの保釈金を支払って帰宅しました。しかし、同氏と思われる人物が逮捕直後、係官に見逃すよう頼んでいると取れる発言をした音声録音が公共放送タイPBSで報じられ、収賄容疑が加わった他、DNAの検査で、キャンプで調理されていた肉が黒ヒョウのものだったこと、また、家宅捜索で見つかった象牙もタイで所持が禁じられているアフリカゾウであったことも明らかになった模様です。
一般に、タイの人々の司法への信頼はあまり高くなく、富裕層は罪を逃れられるのではないかという懸念がソーシャルメディア上で広く表明されています。ツイッターで、「黒ヒョウは犬死にしない」という意味合いのタイ語のハッシュタグが広くつぶやかれている他、著名な署名サイトchange.orgでは、事件の透明性のある捜査と野生動物保護の法の強化を訴える署名に数日で10万名以上がサインしました。フェイスブックでも様々なイラストと共に、関連情報が拡散しています。
この状況下、プレムチャイ氏はタイを離れミャンマー・タニンダーリ管区のダウェイに身を潜めていると報じられていましたが、3月2日、警察の求めに応じて出頭したことが報じられました。ITD社の株価は2015年から下落傾向にありますが、事件が明らかになった2月初旬から振れ幅は小さいものの、さらに下落しています。
この野生動物保護区を含むトゥンヤイ・ナレスワンの森は、野生動物の生息地として重要なだけでなく、タイの政治的な変動を人々に連想させる特別な場所でもあります。タイが軍事政権下にあった1973年、軍・警察上層部によるトゥンヤイ・ナレスワンでの密猟事件が発覚。狩猟には軍や警察の銃やヘリコプターが使われていたため、エリートの腐敗を印象付けたと言います。関係者をかばった当時の軍政指導者タノーム首相らにも批判の矛先が向きました。この森の名は同年に起きた「血の日曜日(10月14日)事件」と民主化革命の成功と共に、タイの人々の記憶に残っています。この件がそのような政治的な意味合いを持つようになるのかは不明ですが、今後もタイの人々の関心を集めることになると思われます。
また、ダウェイ経済特別区開発事業の地域への影響を懸念する市民グループ、ダウェイ開発協会のタズン氏は、タイ語のインターネットニュースサイトTransborderNewsの事件を受けてのインタビューで、これまでダウェイに起きている問題に触れ、「自国の法に敬意を払わない企業が海外ではどう行動するだろうか」とコメントしています。
インタビュー映像はこちらに掲載されています(英語)。
http://transbordernews.in.th/home/?p=18392
ダウェイ経済特別区開発事業について、メコン・ウォッチがまとめた情報はこちらに掲載しています。
http://www.mekongwatch.org/report/burma/dawei.html
(文責 メコン・ウォッチ)