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カンボジア・セサン下流2>合意形成なく進む開発と中国の影響

メコン河開発メールニュース2018年4月23日


セサン下流2水力発電所(LS2)は、カンボジア北東部ストゥントレン州、メコン河の支流セサン川に建設されたダムです。この地域は、セコン、セサン、スレポックという3つの支流が扇を広げ横にしたように広がり、まず一番南を流れるスレポック川がセサン川に合流し、それから更にセコン川に合流して本流メコン河に注ぎます。ダムの建設地は、セサン川とスレポック川の合流地点から約1.5km下流で、メコン河本流と合流する約25km上流に位置しています。

地図はこちらのファクトシートからご覧いただけます。

http://www.mekongwatch.org/PDF/LS2_FactSheet_JP_20140918.pdf

2012年11月、カンボジア政府はLS2の建設を承認し、2014年2月に建設が始まり、2017年9月に落成式が行われました。LS2は「建設・運営・譲渡方式」 (BOT)の事業で、40年の操業後にカンボジア政府へ譲渡されます。事業主体企業のセサン下流2水力発電社(Hydro Power Lower Sesan 2 Co., Ltd.)には、カンボジアのロイヤルグループ社(39%)と中国のハイドロランチャン国際電力会社(51%)、ベトナムのEVN国際合弁企業(EVNI)が10%を出資しています。セサン下流2水力発電社のホームページはありますが、詳しい情報は公開されていません。

Hydro Power Lower Sesan 2 Co., Ltd. のページ。

http://www.hydrosesan2.com

このダムは建設地がセサン川なので「支流ダム」として扱われています。しかし、環境影響はメコン河本流ダムと同等、またはそれ以上に大きいとみられています。2012年に米国科学アカデミーの紀要が掲載した以下の論文は、このダムによって、メコン河流域に生息する魚類の9.3%が減少し、50種以上が絶滅の危機に瀕すると予測しています。

Trading-off fish biodiversity, food security, and hydropower in the Mekong River Basin
http://www.pnas.org/content/109/15/5609

2013年6月、メコン河委員会(MRC)のドナー国はダムが流域に及ぼす悪影響を鑑み、カンボジア政府に対し、事業の設計変更やMRCでの事前協議実施を勧告していますが、結局MRCでの協議は行われませんでした。

人権侵害は既に発生しています。企業の情報では、849世帯、3845人が移転を強いられているのですが、確認できる限りでは100世帯以上が移転を拒み、今も村に残っています(下記報告では63世帯となっている)。つまり、移転の合意形成ができていないのに、村は水没したのです。影響住民の大多数は、同国内では少数派のラオ民族、またモン・クメール語群に属するとされるブラオ民族の人たちです。貯水が始まった村から避難した後、家財を取りに戻った男性は水に沈んだ村と自分の家を見て、涙を流したと話しています。
メコン河流域で活動する米国NGO、EARTHRIGHTS INTERNATIONAL のサイトに、その2月初旬の村の様子が写真付き紹介されています(英語)。
https://earthrights.org/media/cambodian-village-now-fully-submerged-lower-sesan-2-dam/

今、移転を拒んでいる村人に、外部からコンタクトをすることは非常に困難です。軍や警察による検問所が設置され、居住者以外の出入りが厳しく制限され、昨年は国連人権高等弁務官事務所の訪問さえ拒否されています。

試運転の浸水で住民避難、村では当局の圧力
(メコン河開発メールニュース2017年8月3日)

http://www.mekongwatch.org/resource/news/20170803_01.html

メコン・ウォッチでは、移転前のストゥントレン州の村人の暮らし、ダムの上流にあたるラタナキリ州の住民の気持ちや、それ以前に起きていたベトナムの上流ダムによる被害について、映像をまとめています。あわせてご覧ください。

カンボジア 失われる豊穣の時−セサン下流2ダムのもたらす悲劇
(日本語・クメール語 日本語字幕 23分28秒)

https://www.youtube.com/watch?v=l30tIzb0tyY

中国主導で進むカンボジアの開発は、ここ10年で急速に広がりました。カンボジア経済財政省が2017年に発表した報告によると、1993年からの公的な債務の契約金額での総額は、二国間では中国が断トツで39億9515万ドル(全体の43.0%)を占めています。日本は10億3363万ドル(11.1%)です。日本が主導する国際金融機関アジア開発銀行が20億7518万ドル(22.3%)なので、両者を合わせても、中国一国の金額の方が大きいことになります。

経済財政省レポート

http://www.mef.gov.kh/documents/shares/publication/public-debt-bulletin/Cambodia-Public-Debt%20Statistical-Bulletin-Vol-4.pdf

公的債務以外にこのLS2のように、中国企業主導でBOT方式で進む大規模事業も存在しているわけです。

前回のメールニュース「カンボジア・NGO法>業務停止NGO、活動を再開」

http://www.mekongwatch.org/resource/news/20180420_01.html

でお伝えしたように、カンボジアでは民主的な選挙実施が危ぶまれています。これには中国の影響、つまり欧米からの支援が途絶えても中国の資金があるとカンボジア政府が考えている、ことが関係していると言われています。開発の現場や債務状況からも、中国の影響が強まっている状況はうかがえます。

日本政府と中国政府は、次のカンボジア国政選挙支援を続けると表明していますが、米国、欧州連合(EU)は既に支援を凍結しています。日本政府はカンボジア政府に対し、多党制を維持するよう説得し、聞き入れられないのであれば、援助効果の期待出来ない選挙支援を状況が正常化するまで凍結し、カンボジアが民主的な国家に戻るようメッセージを送る必要があるのではないでしょうか。

(文責/メコン・ウォッチ)

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