ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >ドンサホンダム >流域住民6,400名、政府に直接対話を求める
メコン河開発メールニュース2018年6月18日
先日、中国より下流のメコン本流のラオス領域内で、パクベンダムの建設計画が進み始めた件をお伝えしました。
パクベンダム:事前協議を延長すべきと市民ネットワークが声明 (5/29)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20180529_01.html
パクベンダム:売電決定をタイが延期 (5/31)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20180531_01.html
現在、ラオスでは他に本流2つのダムが建設中です。その一つ、ドンサホンダムは260MWの水力発電ダムで、建設地はカンボジアとの国境から上流に約2キロメートル弱の位置です。この地域はシーパーンドン(4千の島)と呼ばれ、メコン河が分流し、河の中に多くの島があるユニークな環境を持つ場所です。ダムはフーサホンと呼ばれる分流に造られますが、ここは魚の回遊に非常に重要な場所でした。また、ダムのすぐ近くには絶滅が危惧されるイラワジイルカ(カワゴンドウ)の生息する淵があります。カワゴンドウとメコン河の自然を目当てに、毎年多くの観光客がこの場所を訪れています。周辺ではラオスの人々によるゲストハウスの経営や住民の観光客向けのボートの提供など、小規模なビジネスが盛んです。
ラオス政府は2013年10月、同国も含め流域4カ国が加盟する流域の開発を調整する機関、メコン河委員会(MRC)に対し建設を通知しました。その際、ダムの建設地はメコン河が17に分れて流れるうちの分流のひとつでしかなく、流量もメコン河の総流量の5 %だけなので、隣国と協議の必要がある本流ダムとは認識していないと公言しています。しかし、この発言は過去の各国との合意とは異なっています。MRCが委託して行った本流ダムに関する戦略的環境アセスメント、また他の過去の資料でも、ドンサホンダムは一貫して本流ダムの一つとして扱われてきているからです。
本流開発の際、周辺国と協議するようMRCが協定で定めていた「通知、事前の協議および同意の手順(PNPCA)」という手続きがありますが、2014年7月25日に協議が始まっていたことを、MRCは6ヶ月間の協議期間の半分が過ぎた同年10月2日まで公にしませんでした。理由は不明ですが、MRCが調整機関としての役割を十分果たせないことが露呈した形です。
同ダムは、マレーシア企業メガ・ファースト社(Mega First Corporation Berhad: MFCB)が進めています。2015年3月に事業主体となる現地会社が設立され、同年10月にダムの技術・調達・建設が中国のシノハイドロ社に50か月、3億2千万米ドルの契約で委託されています。
MRCの評議会でも流域4カ国の合意は成立せず、ドンサホンダムの建設の是非は、外交レベルでの話し合いに持ち込まれました。下流のベトナム、カンボジアは、このダムの建設に批判的な発言を繰り返し、MRCは評議会が主導して累積影響調査を実施することを決めました。しかし、ラオス政府はその調査終了を待たず、2016年1月に事業者が建設を開始することを認めました。
ドンサホンダムが建設されるフーサホンの様子、人々の暮らし、そしてダムの影響についてメコン・ウォッチで制作した映像は以下のYouTubeのサイトに公開しています。22分半と長いですが、ぜひご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html
次回以降、このダムの問題点について順次ご紹介していきます。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)