ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>来月中旬に開業-式典にはフン・セン首相も
メコン河開発メールニュース2018年11月27日
セサン下流2水力発電ダム(LS2)は、カンボジア北東部ストゥントレン州、セサン川とスレポック川の合流地点から1.5キロ下流、さらに25キロ下るとメコン河本流に達するところに位置します。中国のハイドロランチャン国際電力、ベトナムのEVNインターナショナル、カンボジアのロイヤルグループの出資により2014年2月に建設が始まり、2017年9月25日には落成式が行われました。
LS2はメコン河の魚類の回遊や栄養分の運搬を妨げるため、カンボジア国内ばかりか流域全体の生態系や自然資源に深刻な被害を及ぼす恐れがあります。また、7,500ヘクタールもの土地が水没し、1,500世帯あまりの住民が立退きを強いられています。
先ごろメコン・ウォッチが入手した情報によると、貯水池周辺では100世帯以上の住民が依然として移転を拒み、州政府と交渉を続けています。一方、移転を受け入れた住民の多数は飲料水や電気の確保に苦労するなど、生活再建上の困難に直面しています。また、上流では魚が増えたとの報告がありますが、これは魚が閉じ込められたために発生する一時的な現象とみられ、住民はやがて起こる魚類の激減や水質の悪化を心配しています。
このような問題が未解決なまま、来月中旬、LS2はいよいよ本格的な操業を開始し、記念式典にはフン・セン首相も出席する模様です。以下、この件を伝える『プノンペン・ポスト』紙の記事【1】を日本語で紹介します。
なお、LS2については、以下をご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
2018年11月16日
Phnom Penh Post
Khouth Sophak Chakrya記者
カンボジア政府は来月中旬、セサン下流2ダム(LS2)の操業を開始する予定で、式典にはHun Sen首相も出席する模様だ。11月14日(水)、ストゥントレン州当局のMen Kong報道官が語った。また、同州のNou Sovannara鉱山エネルギー局局長は、LS2が州民の生活を向上させることを期待していると述べた。
ラオスとの国境に近いストゥントレン州に建設されたLS2には、疑問の声もあがっている。同州セサン郡では、約1,500世帯が立退きを強いられ、何千ヘクタールもの森林が水没した。環境団体はメコン河流域の生態系への被害を警告している。
LS2は国内最大のダムで、発電予定量は400メガワット。昨年9月25日、貯水と発電機の試運転のために水門を閉鎖した。Kong報道官は、LS2によって州内全戸への電力供給が可能になると語った。引き続き、他州への電力供給も視野に入れている。「順調に進めば、12月中旬に正式開業し、式典にはHun Sen首相も出席する」。また、Kong報道官は、安価な電力の供給で州内のカシューナッツ、ゴム、キャッサバ産業が恩恵を受けるとした。「豊富で安価な電力によって、内外の投資家がカシューナッツ、ゴム、キャッサバを生産する州内の工場に投資する可能性が増し、州民のための雇用を創出する」。
一方で、専門家は魚類の回遊への悪影響を警告している。米ウィスコンシン州立大のIan Baird氏(地理学)は、メコン河での調査に基づき、魚が産卵するにはセサン、スレポック両河川とトンレサップ湖の間を回遊する必要があると語った。氏は同時に、メコン河の周期的な干満が河岸に養分を運ぶラオス、タイ、ベトナムにもLS2の影響が及ぶと述べた。三か国への魚の回遊にも支障が生じる可能性がある。
LS2は、中国のHydrolancang International Energy、ベトナムのEVN International、カンボジアのRoyal Groupが7億8,152万米ドルを投じる民間合弁事業で、40年間の操業の後にカンボジア政府に移譲される。
【1】原文(英語)
Hun Sen to inaugurate final phase of ‘controversial’ dam
https://www.phnompenhpost.com/national/hun-sen-inaugurate-final-phase-controversial-dam
(文責・翻訳/メコン・ウォッチ)