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ミャンマー・ティラワ経済特区>初期対応の失敗で遅れる移転世帯の生計回復(1)  

メコン河開発メールニュース2019年4月11日


ミャンマー・ティラワ経済特区(ティラワSEZ)は、ヤンゴン中心市街地から南東約23kmのティラワ地区約2,400ヘクタール(ha)に、製造業用地域、商業用地域等を開発する大規模事業です。工業区域の開発は、日本の三菱商事、丸紅、住友商事が参画するミャンマー・ジャパン・ティラワ・ディベロップメント社(MJTD)が行っています。また、事業実施前の各種調査は、前述の三商社に加え、経済産業省、国際協力機構(JICA)が実施、区域A(400ha)の開発には、JICAがODAによる民間支援である海外投融資というスキームで出資、日本貿易保険(NEXI)が付保している他、JICAは港湾など関連インフラ事業にも円借款を供与しています。

日本の官民が関与するこの大規模事業では、区域Aの開発が終わり2015年9月にSEZは正式開業し、入居企業も操業を始めています。また、区域B(700ha)も工事が進行中です。MJTDは区域Bうちの工業区域(262ha)の開発も進めています。

JICAは同事業を「海外直接投資の誘致や雇用創出が行われ、ミャンマーの経済社会開発へ貢献」するとして協力していますが、開発地から移転させられた住民の多くは、未だ開発の恩恵を十分に受けられない状況が続いています。

この地区で暮らしてきた住民は、ミャンマーが強権的な軍事政権下にあった1990年代終わりに、工業団地などの開発のため、非常に少ない補償で土地を強制収用され、立ち退き対象となりました。しかし、当時の政府の開発が頓挫したことから多くの住民は同じ場所で生活を続けてきました。また、2000年代に入り、他の地域から同地区に移り住んだ人もいます。農民はここで耕作を続けながら、収穫物に関する税を納入していました。つまり行政も住民の耕作を黙認していたことになります。

ところが、日本の協力でティラワSEZ事業の計画が動き始めると、2012年12月、ある村では政府職員から、代替地も補償の協議もないまま、口頭で移転が言い渡されました。2013年 1 月 には、開発予定地から14日以内の立ち退きを求める書面が複数の村の各戸に配布されました。ここには、立ち退かない場合 30 日間拘禁するということも明記されていました。対象住民は約3,800名にのぼり、この時点では、ほとんどの住民が依然として政府関係者に対する恐怖感を抱いたままで、住民は十分な情報を得たり、補償についてNGOなど外部の人に相談することが困難な状態でした。しかし、一部住民やNGOの指摘を受け、日本政府がミャンマー政府に国際水準の対応を求めたため、この時点での強制移転は回避されました。


ODA支援案件「ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区開発」で 強制立ち退き500世帯 強引な立ち退きと人権侵害の防止を訴え、外務省・JICAに要請書を発出(2013/2/8)


ビルマ(ミャンマー)・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業 強制立ち退きの恐れに関し、住民が日本政府へレターを提出 (2013年3月)

その後、早期開発区域である区域Aの着工に伴い68世帯(約300人)が2013年11月に移転しました。しかし、移転地は水田だったため水はけが悪く、当初の居住条件は劣悪で、生活用水の入手も困難な状態でした。もともと家庭菜園や周辺での採集などに食料を依存し、現金収入が少ない暮らしを送ってきた住民は、狭い移転地では食料や水を購入しなくてはならなくなりました。また、農地という生計手段を失う、または仕事場が遠くなり収入が減少したことで、生活のために高利貸しから借金をする事態に追い込まれ、生活できずどこかに移っていった人もでています。

JICAは事業実施に際しての環境社会配慮ガイドラインを備えています。これは「開発と自然環境、住民生活等とのバランスを考え、開発が持続可能となるよう配慮」し、そのために、「必要に応じて、JICAは相手国等が適切な環境社会配慮を実施できるよう支援を行う」ことなどを定めています。世界銀行やアジア開発銀行なども同様の政策を持ち、援助を実施しており、国際的な基準となっています。この中には、ティラワの事業で発生したような「非自発的住民移転」の対象者に注意を払うことも求められています。
JICAの環境社会配慮ガイドライン

 

軍事政権下にあったミャンマーのようにガバナンスに問題がある国では、農民や漁民が、適法であるための土地や資源の利用権を得られないことはしばしば起こります。ミャンマー政府は当初、ティラワの住民を不法占拠者と認識していましたが、国際的な水準の開発では、そのような立場の人たちにも配慮が求められます。また、貧困であることで権利が弱く、権利が弱いことでその能力を十分に発揮できず貧困から抜け出せない、そういった人々が世界には数多く存在しています。開発事業はそもそも、そういった人たちの生活を経済発展によって改善することを目指していたはずです。ガイドラインもまた、このような人たちが、JICAの関連した事業で開発から取り残されないよう定められたものです。

事業開始前から現地NGO、住民グループ、メコン・ウォッチからの指摘があったにも関わらず、移転・補償措置が十分でないまま事業が進行したことで、区域Aから移転した人たちのなかには5年以上経った今も生計を回復できず苦しんでいる世帯が見られます。次回は住民が起こした異議申し立てと、現在の状況についてお伝えします。

ティラワSEZの問題については こちら をご覧ください。

 

(文責/メコン・ウォッチ)

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