メニューを飛ばして本文へ移動。

    English site

[メコン・ウォッチ]

ホーム | お問い合わせ | メールニュース登録 | ご支援のお願い


イベント | メコン河とは? | 活動紹介 | 追跡事業一覧 | 資料・出版物 | ギャラリー | メコン・ウォッチについて

ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオス > セピアンセナムノイダム > セピアン・セナムノイダム決壊事故(1):事故の概要

ラオス>セピアン・セナムノイダム決壊事故(1):事故の概要 

メコン河開発メールニュース2019年4月18日


ラオス人民民主共和国(ラオス)は、海洋にアクセスできない内陸国で、経済発展の機会が限られています。ラオス政府は経済成長の手段として、豊富な水を活用した水力発電ダム開発に注力してきました。

しかし、2018年7月23日、誰も予想していなかった大規模な事故が、南部で建設中のダム事業で発生しました。メコン河の支流、セコン川水系に建設中のセピアン・セナムノイ水力発電ダム(以下XPXNN)の貯水池に作られたサドルダム(*1)が7月32日に崩壊し、下流のアッタプー県サナームサイ郡の19村が浸水、うち6村(コッコーン*2、サモーンタイ、ノーンヒン、ターセンチャン、ヒンラート、マイ)が水とともに流れてきた膨大な土砂によって、壊滅状態となりました。メコン・ウォッチが現地から入手したラオス・アッタプー県の同年7月31日の報告によると、6村の被害者は1,611世帯7,095名、10月のビエンチャン・タイムスの報道では、全体で影響を受けた住民は14,440名に上ります。

緊急支援の段階がすぎなければ、訪問が現地の負担になることから、情勢を見守っていましたが、昨年12月に地方政府の許可を得て現地を訪問しました。メコン開発メールニュースではその情報も含め、7回にわたってこの問題についてお伝えしていきます。長文となる回もありますがお付き合いいただければ幸いです。 第1回目はまず、事故の概要を振り返り、過去の事業に見られるラオスの水力発電事業の安全性を考えます。

 

事故の概要

XPXNNは韓国企業、タイ企業、ラオス国営企業の共同出資によって進められてきたBOT(build-operate-transfer)事業で、企業が32年間建設・操業した後、ラオス政府に移管されるという方式で開発されてきました。発電所の発電能力は410メガワット、発電した電気の9割はタイに輸出される予定で、関連企業は以下の通りです。

合弁会社:Xe-Pian Xe-Namnoy Power Company (PNPC) 
PNPC出資企業:SK Engineering and Construction (SK建設)
Korea Western Power:KOWEPO(韓国西部電力)
タイ企業のRatchaburi Electricity Generating Holding (RATCH)
ラオス国営企業Lao Holding State Enterprise (LHSE)

建設は事業参画企業のSK建設が進めていました。

施設は、南部のボロベン高原上に貯水池を持つため、3つのダムと5つのサドルダムを建設しています。そこから600メートル以上の落差のある発電所に導水する設計です(*3)。この貯水池を支えるサドルダムDが決壊し、50億トンもの水(*4)が山肌や川沿いの樹木や土砂を巻き込みながら流れ落ち、流域の村を押し流す大惨事に至ったものです。ダムの水がほとんど抜けた状態になっているのは、衛星写真から国連が作成した資料で確認できます(*5)。

アッタプー県の報告(7月31日付)によると、事故時に病院で亡くなった方も含め48名(うち女性22名)の死亡が確認され、23名が行方不明となっています。当初、事故の被害が甚大だったことから、死亡者は千人規模ではないかと推測されていました。事故の初期、情報統制も行われたため、ラオス政府が被害を隠しているのでは、という憶測も飛びました。私たちも同様の懸念を持っていましたが、昨年12月の現地調査で被害を受けた村を訪ね、発表された数字が正しいことを確認しました。

アッタプー県情報文化局の担当者によると、取材制限を行ったのは最初だけで、当初情報が錯綜したのは、前例のない事故で混乱し当局も事故の様相から、行方不明者がもっと多いと考えたのが原因、と説明しています。また担当者は、人口が少ないラオスで、これだけの人的被害が出たことは、大きな損害だと理解してほしい、とも語っていました。確かに、当初飛び交った情報よりは実際の死者・行方不明者は少なかったものの、7,000名もの人が家と土地を一瞬にして失った大事故であることには変わりありません。

また、ダムの水は国境を越えてカンボジアに達し、同国ストゥン・トレン州でも被害が広がりました(*6)。

 

ラオスの水力発電事業の安全性

実はラオスでは、これまで何度も水力発電所建設現場で大きな事故が起きています。2017年7月には、関西電力が建設中のナムニアップ1水力発電ダム建設現場で高圧ガスボンベが破裂、下請け企業のベトナム人作業員6人が死亡しています(*7)。ナムニアップ1には国際協力事業団(現国際協力機構=JICA)が実施可能性調査を実施、国際協力銀行、アジア開発銀行(ADB)が民間金融機関と協調融資を行っている事業です。また同9月には北部で中国企業が建設中のナムアオダムが決壊、工事車両が流されるショッキングな映像がソーシャルメディア上で広く拡散し、隣国タイでも大きく報道されました(*8)。今年3月初旬にも、チャンパサック県のダムへの導水工事現場で、3名の労働者が事故で亡くなった模様です(*9)。

たしかに、世界銀行などが中心に進めてきたナムトゥン2ダム以降、水力発電は、数字に表れる経済成長に貢献してきました。しかし、増える発電所に比して経済発展をしているはずのラオスで、労働者や住民の安全が向上している、とは言えない状況となっています。

XPXNNの事故は、折からの大雨がきっかけになったことから、韓国のSK建設は自然災害だと主張しています。しかし、状況を鑑みると、明らかに人災であると考えられます。次回では、事故発生前の状況について報道情報や現地での聞き取り内容をお伝えします。(文責:メコン・ウォッチ)

 

注:


1) 山間の鞍部などをふさぐ補助的なダム。この事業の場合、ダムの貯水池の周囲に5つのサドルダムがあった。決壊したのはサドルダムD。
2) 一部資料ではヤイテー村となっているが、ここでは聞き取り時に聞いた村名に従った。
3) Xe Pian Xe Namnoy Hydroelectric Power Project
(https://www.power-technology.com/projects/xe-pian-xe-namnoy-hydroelectric-power-project/)  参照
4) 企業からラオス政府関係機関に宛てとされる書簡が掲載されており、そこからの引用。
(https://www.idsala.com/2018/07/5000.html)(2018年7月28日閲覧)
5) United Nations Institute for Training and Rsearch.
https://www.unitar.org/unosat/map/2829
6) The Guardian. 2018/7/28 Laos dam collapse sends floods into Cambodia, forcing thousands to flee
(https://www.theguardian.com/world/2018/jul/26/laos-dam-collapse-sends-floods-into-cambodia-forcing-thousands-to-flee)
7) 毎日新聞.2017/8/1「関西電力出資のダム工事作業員6人死亡」
(https://mainichi.jp/articles/20170801/k00/00e/030/223000c) など。
8) Vientiane Times. “Hydro company denies responsibility for Xaysomboun flash flood” 2017年9月13日, Matichon TV. (タイ語メディアhttps://www.youtube.com/watch?v=55p5IPTas8g)
9) Radio Free Asia. 2019/3/7 Three Lao Workers Killed in Landslide While Diverting Water to Dam
(https://www.rfa.org/english/news/laos/landslide-03072019165839.html?fbclid=IwAR3FeubRgLRonV5MfUHdq3-YOs2rsHsYHR2P4qxCPbqptVpA9DryY-0ElQI)

(文責/メコン・ウォッチ)

このページの先頭へ

サイトマップ
特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F(地図
電話:03-3832-5034 Fax:03-3832-5039 
info@mekongwatch.org
© 2000-2013 Mekong Watch. All rights reserved.