ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ベトナム・石炭火力発電>遅れる石炭火力、急拡大する再エネ
メコン河開発メールニュース2019年8月20日
今年、ヨーロッパでは記録的な暑さとなっていますが、メコン河流域では7月は各地で干ばつが、8月に入ると各地で豪雨による洪水が報告されるようになっています。人間の経済活動によって加速している地球温暖化の影響は、私たちの日常に、目に見える姿で現れています。
(温暖化の問題については下記のリンク等にあります)
環境省地球環境局「おしえて!地球温暖化」 https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/oshiete201903.pdf
気候ネットワーク「はじめに:地球温暖化とは」
https://www.kikonet.org/info/what-is-global-warming/intro
2015年のパリ協定後、世界の潮流は「脱石炭」です。しかし日本は未だに二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電事業を推進し、特にアジア各国への輸出を続けています。メコン圏ではベトナムへの輸出が顕著です。メコン・ウォッチでは、日本政府や日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、商社、銀行等に対し、ベトナム等で石炭火力発電事業を展開したり、融資や付保をするのを止めるよう、訴えて来ました。
これまでに提出した要請書等は以下からご覧いただけます。
http://www.mekongwatch.org/report/vietnam/coal.html
ベトナムでは現在、2016年3月に策定された「電力開発計画7改訂版(Revised PDP7)」に基づき発電事業が進められていますが、このほど、ベトナム商工省が6月4日付で同計画の進捗状況を報告しました【1】。
同計画は、2016年から2030年までの期間について示された計画で、GDPの平均伸び率を年7%程度と見込み、それに見合う電力を供給するために、水力・火力・再生可能エネルギー(再エネ)・原発それぞれの事業が計画として挙がっていました。全体の大きな方針としては、火力のうち石炭の割合を増やし、同時に再エネも重点的に伸ばしていくというものでした。なお、原発については2016年11月に、議会が経済性を理由に白紙化を決定しています。
進捗報告書をみると、石炭火力事業には遅れが目立ち、一方で再エネ事業は当初計画よりも大幅に増加されています。
石炭火力の遅れの一因として挙げられているのは、特にベトナム南部での反対です。地方政府代表は石炭火力を支持せず、電力開発計画で示された事業であっても地元への建設に難色を示しており、結果、事業の遅れにつながっているとされています。しかし、遅れが出ているのは南部の計画だけでなく、北部や中部も同様です。
一方の再エネ事業ですが、首相と商工省は、8,500メガワット以上の太陽光発電事業、約2,000メガワットの風力発電事業を、計画に追加承認したとしています。
8月7日の報道【2】によると、ベトナム電力公社(EVN)の統計で、ベトナムはこの2か月間で82の太陽光発電所が電力網につながり、そこから計4,464メガワットの電力が供給されるようになりました。そしてこれは、ベトナムのエネルギーミックスの8.28%にあたる量ということです。「電力開発計画7改訂版」で目標にしていた、2020年に850メガワットという数字を、大きく上回っています。
商工省の進捗報告書でも、電力需要を満たして行くために、太陽光事業を電力開発計画に追加していくことや、太陽光・風力・バイオマスといった再エネについて、普及を図るための支援メカニズムを継続して設けていくことなどが提案されています。日本政府や企業もこういった再エネ拡充の流れを支援していくべきで、石炭火力発電事業からは速やかに手を引くべきです。
【1】Report on the Implementation Progress of Power Projects in the Revised Power Development Plan 7
http://vepg.vn/legal_doc/moit-report-58-bc-cbt-on-the-implementation-progress-of-power-projects-in-the-revised-pdp7/
【2】Vietnam: 4 GW PV Installation Finished in Past Two Months
https://www.pv-magazine.com/press-releases/vietnam-4-gw-pv-installation-finished-in-past-two-months/
(文責 メコン・ウォッチ)
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