ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ベトナム・石炭火力発電>ブンアン2、問われるブンアン1の影響
メコン河開発メールニュース2020年3月6日
三菱商事が事業者として参画しているベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業は、ブンアン湾に面した土地に発電所が建設される予定で、隣接地には、既にブンアン1石炭火力発電所が稼働しています。3月2日のロサンゼルス・タイムズ紙【1】によると、地元住民は、5年前に稼働が始まったこのブンアン1発電所が、胸に感じる苦しさや、地下水の悪臭、稲に付着する細かい黒い粉塵の汚染源だとしています。
さらに、記事には、ブンアン2の事業推進において適切な住民移転プロセスや土地補償プロセスが踏まれていないことを示唆する内容があります。地元政府が昨年10月の会合で住民に、まだ金額が不明であるにも関わらず、農地を売る契約に署名するよう促した。ブンアン1で移転して、発電所と同じキーロイ・コミューンに暮らす世帯が、再びブンアン2で移転しなくてはならないのかどうか知らされていない、など。また記事には、「この汚染の横では暮らしたくないが、今後どうなっていくかわからない」「貧しい者には選択肢がない」という、同コミューンの住民の声も取り上げられています。報道通りであれば、事業について十分な説明が影響住民に対してなされておらず、また、住民の意見も事業に反映されていないことになります。
ブンアン1は2011年に、国際協力銀行(JBIC)および三井住友銀行が融資した発電所です【2】。この地域にはこの他に、コンテナ船などが行き交うブンアン港と、近隣に2016年にベトナム史上最悪の環境汚染とされる海洋汚染を引き起こしたフォルモサ・ハティン・スチールの製鉄所や、同社による石炭火力発電所などがあり、一帯は既に様々な汚染に晒されています。以前は静かなビーチが続く場所でした。しかし、ブンアン港が2000年にできてからは、希少なウミガメが姿は見せるもののブンアンのビーチで産卵することはなくなったと報告されています【3】。その後の発電所等の開発で、さらに自然環境が損なわれたことは想像に難くありません。
ブンアン2事業についてはこちら
http://www.mekongwatch.org/PDF/VungAng2_FS.pdf
JBICおよび日本貿易保険(NEXI)は、ブンアン2に対する融資および付保の検討を2月25日より開始しましたが、既存の周辺工場からの複合汚染との累積影響が懸念されます。また、主に漁業に従事する住民が多いこの地域に、現状よりさらに自然環境を損ない、環境負荷の高い石炭火力発電所を建設することを、日本の公的機関は果たして後押しすべきでしょうか。同地域では、太陽光など環境負荷の低い発電事業も展開可能であり、その点でも、ブンアン2石炭火力発電所への公的資金による支援は正当化されないはずです。
注
【1】Los Angeles Times、 2020年3月2日、“GE says it’s going green. Overseas, it’s still pushing coal”
https://www.latimes.com/world-nation/story/2020-03-02/ge-green-overseas-pushing-coal
【2】 JBIC報道発表、2011年8月12日、「ベトナム国営石油ガスグループに対する輸出金融供与について 日本企業の発電所関連設備の輸出を支援」
https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2011/0812-6370.html
【3】 ブンアン2石炭火力発電事業、環境影響評価報告書2010年12月
(文責 メコン・ウォッチ)
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