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メコン河開発メールニュース2020年3月30日
前回、タニンダーリ管区コータウン地区の真珠養殖と住民への影響について、
開発に脅かされる先住民(1)海のジプシーと真珠
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20200327_01.html
としてお伝えしましたが、今回は2019年12月29日付の『フロンティア・ミャンマー』誌の記事「モーケン、ミェイ諸島での海の争奪を懸念(Moken fear a sea grab in the Myeik Archipelago, Frontier Myanmar, December 29, 2019)を紹介します。
同記事は政府の政策などが原因で島に定住する人が増え、かつて住居としていた「カバン」と呼ばれる家船の作り方を知る人も少なくなるなど、モーケンの海上での生活様式が消えつつある状況を紹介しています。また、ミャンマー・タサキの事業拡大の可能性にも言及しており、以下はその部分を翻訳したものです。
前回紹介したRFAの記事と数字などが異なる箇所もありますが、そのまま訳出しています。
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民間企業であるミャンマー・タサキは2001年に、軍事政権を相手に、ミェイ諸島で真珠を養殖する契約を結んだ。契約のもと、生産された真珠の25パーセントがミャンマー真珠公社(MPE)に分配されていたが、2018年以降は分配の割合が20パーセントに減った。ミャンマー・タサキはフロンティア誌のインタビューに応じなかったが、チュンス郡のドーメル島周辺に二つの真珠養殖場を持っている。MPEのミョールウィン氏によれば養殖場の面積は2万9000エーカー(約1万1735ヘクタール)に相当する。
タニンダーリ管区の天然資源大臣であるフラトウェ氏は11月13日にフロンティア誌に対し、ミャンマー・タサキ社の政府との契約は2020年に失効する予定で、すでに800万ドル以上を投資してきた同社は契約の5年間延長を求める申請を2018年に出した。この申請には、ランガンを含む5つの島からなるシスター諸島で新たに1万7000エーカー(約6880ヘクタール)に及ぶ3つの養殖場を作る計画が入っている。
[中略]
フラトウェ氏は、この3つの養殖場は実は2001年に結ばれた最初の契約で使用が認められていた5つの養殖場に含まれていたが、ミャンマー・タサキ社がこれまでに養殖を行なったのがそのうちの2つだけだったのだと述べた。ランガン島のモーケン住民はフロンティア誌に対し、同社はシスター諸島の一つに建物を立て、立ち入りが制限されることを示すためにブイを置いたと述べた。
モーケンの住民は、2001年の契約の詳細については何も知らされなかったと述べた。ミャンマー・タサキ社が養殖を認められている区域がどこかも知らず、ドーメル島周辺でだけ許可されているものと考えていたという。
[中略]
2018年、ミャンマー・タサキ社が契約更新申請をした後、ランガン島の住民はミェイ諸島の他地域のモーケン住民とともにタニンダーリ管区政府に書簡を出し、同社にシスター諸島で養殖をさせないよう求めた。
2019年9月、モーケンの住民たちが首都ネーピードーを訪れ、天然資源・環境保全副大臣のイェミンスウェ氏と会った。
11月3日、タニンダーリ管区の天然資源大臣フラトウェ氏はランガンと周辺の島々を視察した。イェミンスウェ氏は、ミャンマー・タサキ社の契約更新についての政府の決定はフラトウェ氏の報告に従ったものになるとモーケンの住民に約束した。フラトウェ氏はフロンティア誌に対し、年末までに報告書を提出すると述べた。
出典:Moken fear a sea grab in the Myeik Archipelago, Frontier Myanmar, December 29, 2019
(https://frontiermyanmar.net/en/moken-fear-a-sea-grab-in-the-myeik-archipelago)
(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)