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JBIC「質高インフラ環境成長ファシリティ」案件がミャンマー国軍を利する可能性―人権団体が指摘

メコン河開発メールニュース2020年6月16日

 

国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)は2018年12 月、「質高インフラ環境成長ファシリティ(エネルギー効率化分野も含め、地球環境保全目的のインフラ整備)」の一環として、東京建物株式会社、株式会社フジタ(大和ハウス工業株式会社の完全子会社)が、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN。日本政府が90%以上の株式保有)と共に設立したシンガポールの法人Yangon Museum Development Pte. Ltd.(YMD)との間で、融資金額約4,700万米ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結しています。また、この融資は、三井住友銀行とみずほ銀行との協調融資で、協調融資総額は1億4,400万米ドルとなっています。
 
YMDはこの資金を、ミャンマーの法人Yangon Technical and Trading Company Limited(YTT)と共に設立したミャンマー法人Y Complex Company Limitedを通じて、ヤンゴン市で、ホテルやサービスアパートメント等を備えた複合不動産の開発・運営事業(2020年末に竣工予定)に投じています。
 
JBICは、日本企業のミャンマー進出をサポートするとともに、日本の最新のビルで用いられているビルエネルギー管理システムを導入する予定のこの事業がミャンマーで実施されることで、地球環境保全に貢献するとしています。

これに対し、ヤンゴンを拠点に活動する人権団体、ジャスティス・フォー・ミャンマーから、数々の人権侵害への関与が疑われる国軍にこの事業に絡んで利益が流れる可能性があるが、それを第三者が監視・確認することができない、という問題点が指摘されました。
https://www.justiceformyanmar.org/stories/y-complex

この件に関し、ネットメディアのミャンマー・ナウの報じた内容を以下に紹介します。この疑義に関し、日本の公的機関であるJBICやJOIN、また、日本の民間銀行・企業は、国軍の人権侵害への加担をどのように回避しているのか、また資金の流れの透明性をどのように確保するのか、公に説明する責任があります。

***
豪華ホテルなどが入る複合不動産開発は国軍を利する、と人権団体
3億3,000万ドルの事業から国軍に入る賃料は、文民による監視なしに年間200万ドル以上【1】

ミャンマー・ナウ
ダニー・フェンスター記者
2020年5月21日

日本が出資するヤンゴン中心部近くの不動産開発事業からの賃料がミャンマー国軍による「ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪」の資金となるだろう、と人権団体が述べた。

3億3,000万ドル(4,632億チャット)のYコンプレックス・プロジェクトはヨーミンジー地区の近くに国軍が所有する9エーカー(約3万6,000平方メートル)の土地に計画されている。同プロジェクトは五つ星のホテルオークラが運営する252室の宿泊施設のほか、オフィスや商業施設からなる複合不動産事業となる。

「ミャンマーの少数民族居住地域での国軍による人道に対する罪や戦争犯罪に資金を提供する可能性が高いにも関わらず、この契約は民間の監視が一切ないまま結ばれた」とヤンゴンに拠点を置くジャスティス・フォー・ミャンマーは声明で述べた。

ミャンマー・ナウが確認した2013年の賃貸借契約書によれば、アヤヒンター社の子会社であるYTT社がミャンマー国軍の兵站総局と最高司令官室から直接土地を借りている。

賃貸人は国軍の兵站副総局長のアウンミンテイン大佐である。賃貸借契約書によれば、賃料はミャンマー・チャットまたは米ドルで「防衛口座」という名義の口座に振り込まれることになっている。YTTのネネフルワンモーはミャンマー・ナウに対し、同社は年間218万ドルを支払っていると述べた。

しかし、YTTが年間の賃料を兵站総局に支払っているにも関わらず、同氏はその金は軍ではなく政府の一般予算に入っていると確信しているとミャンマー・ナウに述べた。

賃貸借契約書によれば、賃料は国軍の銀行口座に直接振り込まれることになっているが、ミャンマー・ナウは昨年度の防衛予算にも政府の一般予算にも、その賃料の明確な記載を見つけることができなかった。

ミャンマー国軍は重大な人権侵害を犯してきた歴史があることで悪名高い。国連の事実調査委員会が2019年8月に出した報告書はミャンマー国外の企業に対し、国軍と、国軍が国内で広く展開する事業活動のネットワークとの関係を断つよう求めた。

この報告書によれば、選挙で選ばれたNLD(国民民主連盟)が政権をとって以来、国軍の公式予算が徐々に削減されてきたため、国軍は活動資金を得るためにこの国内事業網への依存を強めているが、そこに民間による監視は入らない。

現在ミャンマーは2017年8月に73万人以上のロヒンギャをバングラデシュの難民キャンプに追いやった「掃討作戦」について国際司法裁判所で提訴されている。

国軍とミャンマー政府は、一連の作戦は対反乱作戦として正当なものだったと主張する。

「ミャンマー国軍と経済的な関係のある国外企業や出資者は、国軍の犯罪に加担している」とジャスティス・フォー・ミャンマーのヤダナー・マウンは述べた。「Yコンプレックスからの利益はジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪を犯すのに欠かせない支援となるだろう」。

日本側のパートナーや出資企業には、建設を監督するフジタ、オフィスの運営管理をする東京建物、そして国が出資する海外交通・都市開発事業支援機構【2】がある。

日本の三つの銀行が資金を提供している。三井住友銀行、みずほ銀行、そして公的機関の国際協力銀行である。

Yコンプレックス・プロジェクトの日本のパートナーからはこの記事が出るまでにコメントを得ることができなかった。

賃貸借契約書によれば契約期間は50年で、延長も可能である。

ミャンマー投資委員会は当初2013年にこの事業を承認した。外資の参入が決まるとYコンプレックス・プロジェクトは改めて申請をしなければならず、これが2016年に承認された。

この敷地にはかつてジュビリー・ホールという植民地時代の歴史的建造物があった。初めは上流社会の交流の場として使われていたが、のちに反植民地主義の政治活動の拠点となり、第二次世界大戦後には独立運動指導者アウンサンの葬儀がそこで行われた。

ビルマ社会主義計画党政権は1985年に軍事博物館を作るためにこの建物を取り壊した。

軍事博物館は1994年に開館し、2017年にYコンプレックス・プロジェクト開発のために取り壊された。

ティンテッパインが追加取材を行った。

 

【1】原文のリンク:
https://myanmar-now.org/en/news/japan-backed-luxury-hotel-and-office-complex-will-enrich-military-says-rights-group

【2】海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN):日本の事業者の国際市場への参入促進を図り、日本経済の持続的成長に寄与することを目的とし、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法に基づき、設立された株式会社。日本政府が株式の9割を保有する。

 

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

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