ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >政府が人権団体ウェブサイトの国内閲覧を遮断
メコン河開発メールニュース2020年9月5日
ミャンマーの人権団体ジャスティス・フォー・ミャンマーは9月1日、「ある報告から判断するとミャンマー政府の命令により、団体のウェブサイトへのアクセスが遮断され、国内で閲覧不可能になっている」と明らかにしました。同団体は、ミャンマー国軍の関与するビジネスについて調査しており、最近では日本の公的資金も投入されたヤンゴン市内の複合不動産の開発・運営事業(通称Y Complex)についても発信していました。同団体は「権力に対して真実を語り続ける」との声明【1】を発表しています。
ロイターもこの件を報じています【2】。また、ジャスティス・フォー・ミャンマーは、翌2日に、ウェブサイトの情報を写したミラーサイトを立ち上げたことを表明しました【3】。
Y Complexの問題に関してはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20200616_01.html
ミャンマーでは今年3月下旬に同国運輸通信省から、コロナウィルス感染に関連する「フェイク・ニュース」を規制するためとして、すべての通信会社に対し、電気通信法第77条に基づき、独立系メディアや少数民族系メディアを含む200以上のウェブサイトへの接続規制の命令が出され、市民社会から批判の声が上がっていました【4】。
2月には、少数民族武装勢力アラカン軍と国軍との戦闘が激しくなったことを受け、西部ラカイン州と北西部チン州の計9郡区でインターネットの遮断も行われ、人権団体などからその解除を求める声明が出されました【5】。
ミャンマーでは現在、通信事業者としてノルウェーのテレノール社とカタールのオレドー社、ベトナム系のマイテル社、そして、ミャンマー郵電公社(MPT)等が営業していますが、MPTの通信分野にはKSGM【6】を通し、KDDI、住友商事が事業参画しています。
また、日本の国際協力機構(JICA)は、通信網改善事業として2015年に105億円の円借款の供与を決定しました。JICAはこの事業の事前評価で、「通信インフラは、すべての経済活動及び国民生活の基盤となるものであり、少数民族地域も含めた国土の均衡ある発展のためには、全国的な通信網の改善は必要不可欠である」としています【7】。
ノルウェーのテレノール社は、今回のウェブサイトの閲覧遮断について、ミャンマー政府から電気通信法第77条により特定のサイトを遮断するよう指示を受けたため、法的根拠をもつ指示に従い遮断した、と明らかにしました。一方同社は、「ミャンマー政府はこのような命令の法的根拠を示しているが、それは国際的な人権法と相いれるものではない」、「表現の自由と情報へのアクセス権が尊重されるべきである」という同社の立場を示し、こうした遮断が解除されるよう努力を続けるとともに、ミャンマー政府が公に対する透明性を高めるよう奨励していく、と表明しています【8】。
しかし、カタールのオレドー社やベトナム系のマイテル社、MPTに参画する日本の事業者は現在のところ、この問題について沈黙しています。
ミャンマーの通信インフラが、すべての人やグループに開かれたものとなるため、日本政府はミャンマー政府に対し、国民の情報へのアクセス権が尊重されるよう対話を行うべきでしょう。ハード面の整備だけでは、国土の均衡ある発展には結びつきません。
注
【1】http://www.justiceformyanmar.org/press-releases/justice-for-myanmar-responds-to-myanmar-government-censorship
【2】https://uk.reuters.com/article/uk-myanmar-politics/myanmar-blocks-activist-website-for-fake-news-idUKKBN25S4UP
【3】https://justiceformyanmar.github.io/justiceformyanmar.org/
【4】参考記事:NNA新型コロナで報道の自由抑圧、市民団体反発
https://www.nna.jp/news/show/2030495?id=2030495
【5】https://www.hrw.org/news/2020/02/13/myanmar-lift-internet-restrictions-rakhine-and-chin-states
【6】KSGM (KDDI Summit Global Myanmar Co., Ltd.) : KDDIと住友商事がシンガポールに合弁会社「KDDI SUMMIT GLOBAL SINGAPORE PTE. LTD.」を設置、この合弁会社がミャンマーに子会社KSGMを設立している。
【7】https://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2014_MY-P9_1_s.pdf
【8】https://www.telenor.com.mm/en/article/directive-block-website-and-3-ip-addresses
(文責 メコン・ウォッチ)