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ミャンマー国軍が天然ガス開発から得る収入

メコン河開発メールニュース2021年6月17日

 

ミャンマーの独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が、ミャンマー国軍が天然ガス開発から得ている収入について調査報道団体の「ファイナンス・アンカバード(Finance Uncovered: https://www.financeuncovered.org)」と共同でまとめた記事を出しました。

出典: “How much money does Myanmar’s military junta earn from oil and gas?”

(ミャンマー・ナウ、2021年6月3日)

 

ミャンマーの主要な収入源の一つである天然ガス開発には日本も関わっています。
「ミャンマー 天然ガス開発には日本政府の権益も」メコン河開発メールニュース(2021年6月11日)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20210611_01.html

 

ミャンマー・ナウは、天然ガスによる収入が軍政に入り続ければ軍政の存続を支えるだけでなく、腐敗した政府高官によって盗まれる危険もある、と締めくくっています。 (*メコン・ウォッチでは軍政が成立したとは考えておりませんが、原典にあるMilitaly Juntaをそのまま軍政と翻訳しています)

以下、記事の要点です。

***

・収入の大きさ
クーデター前に作成された予算書によれば、ミャンマーは2022年3月までの1年間で石油・天然ガスから2兆3050億チャット(約14億ドル)を稼ぐと予想されていた。石油と天然ガスの値段は頻繁に変動するため実際の収入がこの金額となるとは限らないが、これは政府歳入合計の10パーセント以上である。

 

・収入はどこから?

ミャンマーの採掘産業からの収入のうち、四つのオフショア天然ガス田からの収入がもっとも大きい。

ヤダナ・プロジェクトはオペレーターであるフランスのトタルが32.14パーセントを所有する。その他の株主は米国のシェブロン、タイのPTTの一部門、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)である。ガスの大半はパイプライン経由でタイに送られPTTが購入するが、一部はミャンマー国内市場に供給される。

シュエ・プロジェクトは韓国のポスコがオペレーターで、ガスはパイプライン経由で中国に送られる。他の株主は韓国ガス公社(KOGAS)、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)、インド国営のONGCビデシュ、インドガス公社(GAIL)で、パイプラインには中国国有のCNPCも投資している。

イェタグン・プロジェクトはマレーシア国営のペトロナスがオペレーターで、他の株主はMOGE、タイPTTの子会社、日本のJXミャンマー石油開発(日本政府も所有)である。ペトロナスは2021年4月、政治面ではなく技術面の理由で生産を一時停止した。

ゾーティカ・プロジェクトはオペレーターのPTTの子会社が大半の株を所有しているほか、MOGEが20パーセントを所有している。ガスは主にパイプライン経由でタイに送られる。

・天然ガスによる収入の種類

ミャンマー政府は天然ガス輸出による収益配分、使用料(天然ガスの量に基づく料金)、石油会社に課税される所得税を得る。政府が得る収益配分や使用料とは別に、MOGEは天然ガス田やパイプラインの持分に基づく収入も得る。

政府とMOGEとの区別はあるものの、現実には軍政がMOGE、財務省、国有銀行を支配しているため、天然ガス収入は軍政に入る。したがって、海外の石油会社が「国軍とは取引していない」と主張するのは紙面上では真実かもしれないが、現実には意味がないと言える。

・株主配当停止の影響

トタルとシェブロンは先日、ヤダナ・パイプラインからの株主配当を停止すると発表した。これによりMOGE(15パーセントを所有)は年間4000万ドルの収入を失う可能性があるが、専門家によればパイプラインからの株主配当はヤダナ・プロジェクトから軍政が得る収入のほんの一部にすぎない。また、株主配当は通常年度末に支払われるもので、ミャンマーの年度末は2022年3月であるため、今回の停止は軍政の財政に直ちに影響しない可能性がある。

軍政の財政を圧迫するには、トタルをはじめとする石油会社はミャンマーの国家機関への収入の流れを全面的に停止し、軍政がアクセスできない口座に資金を送る必要がある。

・天然ガス収入の行き先

具体的な行き先は正確にはわからないが、1995年のヤダナ・プロジェクトに関してトタルとミャンマーが交わした契約が参考になる。この契約の下ではPTTがガスを買い、ミャンマー国外にある銀行口座に支払いをする。その銀行はオペレーターであるトタルからの指示に基づいてその収入を分配し、ミャンマー政府や株主のそれぞれの銀行口座に振り込む。

現在の天然ガスプロジェクトも同様の方式を使っている可能性が高い。また、収入が振り込まれる国外の口座はミャンマー外国貿易銀行(MFTB)の口座である可能性がある。その場合、MFTBを支配している軍政が資金を追跡困難な場所に移すようMFTBに命じることもできるだろう。そうなれば軍政が国際制裁を回避し資金を自由に使うことがより容易になる。

(文責:メコン・ウォッチ)

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