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メコン河開発メールニュース2021年9月17日
ミャンマー各地の少数民族居住地域で起きている人道危機についての情報をまとめたブリーフィングペーパーが発表されました。
ブリーフィングペーパー “Nowhere to Run: Deepening Humanitarian Crisis in Myanmar”(2021年9月)はカレン人権グループ、カレンニー市民社会ネットワーク、パオー女性連合など10の団体によるもので、報道や各種資料に基づき、2月1日のクーデター以降8月初めまでの約7カ月間で、主にカチン、カレン、シャン、カレンニー、チン、ラカイン各州でもともとあった人道危機がひどく悪化したことが述べられています。また、国連や国際人道支援団体などに対し、ミャンマーでの人道援助をより効果的に行なうための提言もしています。
Nowhere to Run: Deepening Humanitarian Crisis in Myanmar (September 2021)
https://progressivevoicemyanmar.org/wp-content/uploads/2021/09/No-Where-To-Run-Eng.pdf
抄訳でご紹介します。
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クーデター未遂(※)以降、カレン、カレンニー、カチン、シャン、チン州ではミャンマー国軍による攻撃により25万人以上が国内避難民となり、食料や水、医療、住居、生活手段の不足や喪失の問題が未解決のままである。
ラカイン州各地にある国内避難民キャンプでは、間に合わせの住居が風雨に耐えられず、適切な衛生設備や排水設備もないため、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。チン州のミンダ地区では1万人が避難中で、食料や水、医療や通信装置を必要としている。またインドとの国境沿いのチン州北部からは1万6000人が迫害を恐れてインドに逃げたと推定されている。
カレンニー州やシャン州南部では国軍が民間人の住居や教会を標的にした砲撃や空爆を行ない、8月15日現在、カレンニー州内では12万人以上が国内避難民となっている。国軍は同州への人道支援も制限している。また、カチン州でも国軍による砲撃や空爆により多数の国内避難民が出ている。
カレン州では昨年12月に再開していた国軍による攻撃が、今年の春から夏にかけても続き、5月現在で7万人以上の国内避難民がいた。現在もカレン州内の国内避難民には非常に限られた支援しか届いていない。
このような人道危機に加え、現在ミャンマー全国を新型コロナウイルス感染の第三波が見舞っている。報告によれば、国軍側は公立病院ではない診療所やそこで働く医療従事者を攻撃しており、7月1日現在少なくとも17人が死亡した。
(※)訳注:このブリーフィングペーパーでは2021年2月1日に起きたことを「クーデター未遂(attempted coup d’état)」と表現している。
(訳・文責:メコン・ウォッチ)