ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >イェタグン・ガス事業からの資金は国軍の武器購入に使われる高い可能性、とNUG大臣がコメント
メコン河開発メールニュース2021年11月17日
ミャンマーの独立系メディア「ミャンマー・ナウ」の、国民統一政府(NUG)の大臣が、イェタグン・ガス事業からの資金が「国軍の武器購入に使われる高い可能性がある」とコメントした記事【注1】をご紹介します。
同ガス事業については、以下のメールニュースでお伝えしている通りですが、この事業には日本政府(経済産業大臣)、JX石油開発、三菱商事が関与しています。
天然ガス開発には日本政府の権益も(2021年6月11日)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20210611_01.html
ミャンマー国軍が天然ガス開発から得る収入(2021年6月17日)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20210617_01.html
記事中では、ミャンマー・ナウが事業オペレーターのペトロナス社に質問したものの、同事業が操業中か回答せず、事業に参画するPTTEP社もコメント要請に応じていません。同ガス田はガス生産量の低下で4月から操業を中断、しかし7月には再開し、作業員の新型コロナウイルス感染で8月に再び中断したものの【注2】、10月には再開したことをPTTEPが公表しています【注3】。
メコン・ウォッチでは、これまでも経済産業省前でのアクションで懸念を伝え、また、経済産業大臣宛に以下の要請書を9月に提出しています。
【要請書】 (経済産業大臣宛)イェタグン・ガス田開発プロジェクトからミャンマー国軍に資金が流れないよう早急な措置を求めます(2021年9月15日)
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210915.pdf
しかし、国軍に資金が渡らないような措置を講じたのか何の説明もないまま、10月に操業が再開されていることは、日本の私たちの公的資金が入っている事業として、許されるものではありません。
【注1】“NUG hits out at Japanese government for funding junta via lucrative gas project”, Myanmar Now, November 8, 2021
https://www.myanmar-now.org/en/news/nug-hits-out-at-japanese-government-for-funding-junta-via-lucrative-gas-project
【注2】http://www.mekongwatch.org/PDF/Yetagun_METI_response_20210831.pdf
【注3】PTT Exploration and Production Public Company Limited, Management Discussion and Analysis (MD&A) for the third quarter of 2021, p.12
以下、ミャンマー・ナウの記事を全訳でお伝えします。
***
(ミャンマー・ナウ、2021年11月8日)
NUG、実入りのいい天然ガス事業を通じ軍政に資金提供しているとして日本政府を痛烈に批判
イェタグン事業からの資金は国軍に流れていないかもしれないと日本は主張
「予算の仕組みを理解していない」とNUGエネルギー副大臣
日本が出資するミャンマーのオフショア天然ガス事業からの収入が軍事独裁政権の武器購入に使われている「高い可能性」がある、と国民統一政府(NUG)の大臣が述べた。
日本政府はJXミャンマー石油開発の50パーセントを所有しており、そのJXミャンマー石油開発はミャンマー南部沖、アンダマン海にあるイェタグン天然ガス事業の約5分の1を所有している。同事業は2000年以来、何億ドルもの収入を生み出してきた。
現在、軍政の支配下にあるミャンマー石油ガス公社(MOGE)もイェタグン事業の権益を持っている。タイのPTTEPとマレーシアのペトロナスも事業の主要な権益保有会社である。
NUGの電気・エネルギー副大臣であるモートゥンアウン氏はミャンマー・ナウに対し、「この事業からの資金が国軍の武器購入に使われる高い可能性がある」と述べた。
軍政は司法、立法、行政を支配しているため、MOGEのような国有企業からの資金を自由にできる、と氏は述べた。氏はまた、イェタグン事業の権益保有会社はそれぞれの株主との緊急会議を開き、その後NUGと会うべきだと付け加えた。
「権益保有会社にできることは、すべての株主との特別な緊急会議を開き、なるべく早くNUGと会う手はずを整えることである。そうすればNUGは、倫理的な事業として操業を続けられる方法を指導することができる」と氏は述べた。
日本政府はこれまでのところ、日本が事業への参加を通じてミャンマー軍政による残虐行為への資金提供を助けている可能性があるとの見方を退けてきた。
8月、当時は梶山弘志氏が大臣を務めていた日本の経済産業省は国会議員からの質問への回答で、JXミャンマー石油開発は「ミャンマー軍事政権に対し、当該ガス田事業に係る資金が渡ったとの事実は承知しておらず」と述べた。
また「ミャンマー国軍にその資金が渡っているのかを確認することは極めて困難」とも回答した。
しかしモートゥンアウン氏は、国軍がMOGEを支配しているのが明らかな中で経産省の主張は信用できないとした。「予算の仕組みを理解している人なら誰もこんなことは言わないと思う」と氏は述べた。
日本政府は、ヤンゴンのYコンプレックス不動産開発事業で土地賃料がミャンマー国軍に支払われているとの批判に対しても同じ主張をした。
JXミャンマー石油開発はミャンマー・ナウに対し声明で、同社が現在イェタグン事業における立場を検討していることを示唆した。
「われわれはミャンマーにおける多数の死傷者や被拘束者、そしてミャンマー人の生命に対する重大な影響について深く懸念している」と声明は述べた。「われわれはミャンマーの状況を注視しており、事業の将来について日本政府…とイェタグン事業におけるパートナーたちと協議している」。
●大きな利益を生み出す事業
天然ガスの生産量は減っているものの、イェタグン事業は今でもミャンマーの国家予算にとって最大の歳入源の一つである。ミャンマーは法人税のほか、パイプラインからの収益の一部、そして他の出資企業が得る利益に課される所得税を得ることができる。
日本の経産省は、イェタグン事業からどれくらいの収入がミャンマー軍政に行くかは機密事項であるとして明らかにしなかった。
しかしこの情報は過去に採掘産業透明性イニシアティブの下で公表されている。同イニシアティブは石油、天然ガス、採掘産業についてのよりよい報告や開かれた議論を促進するための国際的な取り組みである。
同イニシアティブの下で公表された情報によれば、2018年までの一年度でミャンマーはイェタグン事業のミャンマー所有分の天然ガスの販売から2140億チャット(1億5900万ドル)、さらにロイヤリティからさらに550億チャット(4100万ドル)を稼いだ。
2月1日の軍事クーデター後、ミャンマーはこのイニシアティブで一時資格停止となった。
イェタグン田からのパイプラインも大きな利益を生んでいるとして知られている。ミャンマー・ナウが7月に報じたとおり、パイプラインを所有するタニンダーイ・パイプライン・カンパニーは2017年から19年までの間に3億800万ドルを配当金として権益保有企業に支払った。
パイプラインの20パーセント余りを所有しているMOGEはこの期間に6300万ドルの配当を得たはずである。
環境団体であるメコン・ウォッチとFoEジャパンは日本政府に対し、イェタグン事業からの収入のうちミャンマーの分が軍政に渡らないような措置を取るよう求めた。
これは軍政がなくなるまで収入をミャンマー国外の銀行口座に保持するか、それが不可能である場合にはイェタグンからの生産を停止することを意味する、と日本の活動家たちは述べている。
日本の経産省によればペトロナスは4月に技術的問題を理由にイェタグン事業を停止し7月に再開したが、一部の従業員が新型コロナウイルスに感染したため8月に再び生産を停止した。
ミャンマー・ナウはペトロナスに対し、ガス事業とパイプラインが操業中であるか、また収入が軍政に流れているかを尋ねたが、同社は回答しなかった。
PTTEPはコメント要請に応じなかった。
(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)