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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >携帯電話の通信塔に国軍が地雷を敷設

携帯電話の通信塔に国軍が地雷を敷設

メコン河開発メールニュース2021年11月22日

 

テレノールなどの携帯通信事業者が所有またはリースしている通信塔に、国軍が地雷を敷設しているとミャンマー・ナウが報じました【注1】。

国軍に対抗する市民が各地で立ち上げている人民防衛隊(PDF)の攻撃から通信塔を「守る」ため、という名目です。ミャンマー・ナウの取材に対し、ノルウェーのテレノール社は、同社が所有またはリースしている通信塔の一部に地雷が敷設されていることを確認しており、通信塔を管理する事業者と連携して周辺住民らの安全をはかっているとしています。一方、国営携帯通信事業者MPT社を共同経営するKDDIと住友商事は、MPTの通信塔に地雷が敷設されたとは聞いていないと回答しています。しかし、ミャンマー・ナウは、MPTの通信塔にも地雷は敷設されていると報じました。

ミャンマー国軍は、長年日本が支援してきたバルーチャウン第2発電所の送電鉄塔の下にも地雷を敷設していました。近隣住民やその家畜が地雷を踏んで負傷したり死亡したりしても、補償されるどころか軍から地雷の損害費用を請求された、と伝えられています。

これまでの国軍の行動を見れば、今回も人々が傷つくことを気にかけていないことは明白です。そもそも地雷の使用は、対人地雷全面禁止条約に反する国際法違反です。通信塔に敷設された地雷による被害が今後増えることが強く懸念される中、企業はどのような責任を果たすべきか、問われるまでもないことではないでしょうか。

 

【注1】“Telecoms tower sites mined by Myanmar military,” Myanmar Now, November 5, 2021
リンク先(ミャンマー・ナウのページへ)

以下に記事を全訳でご紹介します。
***

(ミャンマー・ナウ 2021年11月5日)

ミャンマー国軍が通信塔に地雷を敷設

携帯通信事業者とノルウェー政府はミャンマー国軍による地雷使用を止めるためさらなる行動を、と専門家ら

 

ミャンマー国軍が9月以降、テレノールなどの携帯通信事業者が所有またはリースしている通信塔に地雷を敷設していることがミャンマー・ナウの取材でわかった。

ミャンマー国軍が出資する携帯通信事業者であるマイテルでストライキ中の複数のエンジニアがミャンマー・ナウに対し、軍政がこの数カ月で同社の通信塔の多くに「警備用地雷」を敷設していると述べた。

2月1日のクーデター後に職を離れたこれらのエンジニアによれば、地雷敷設は反軍政の人民防衛隊(PDF)が、マイテルが国軍と関係を持っていることを理由に爆弾や手作りの爆発装置を使ってマイテルの通信塔を攻撃したのを受けてのことだという。

ミャンマー・ナウは携帯通信事業者であるMPT、オレドー、テレノールに連絡し、ミャンマー国軍が各社の通信塔、または第三者企業が所有し各社にリースしている通信塔にも地雷を敷設したとの情報についてコメントを求めた。地雷の存在を認めたのはテレノールだけだった。

テレノールのスポークスパーソンは、地雷敷設は「携帯通信事業者や通信塔運営者を問わず無差別に」起きているようだと述べた。

「…複数の通信塔に対人地雷が敷設されている」とこのスポークスパーソンはミャンマー・ナウへの電子メールで述べた。

「テレノール・ミャンマーはこうした慣行を深く懸念している。運営や管理に関わる職員や通信塔の周辺に暮らすコミュニティの安全に対して重大な問題となるからである」とスポークスパーソンは説明した。

テレノールは通信塔安全プログラムを設け、危険な通信塔の近くに住むテレノール利用者に通信インフラに近づかないよう警告するテキストメッセージを送っている。テレノールはまた、地雷が敷設されたテレノール所有の通信塔に物理的に警告板を置き、それらの通信塔の運用を停止している。

しかし地雷が敷設された通信塔の大半は通信塔会社が所有しテレノールその他のオペレーターにリースしているものである。テレノールのスポークスパーソンは、その場合に通信塔の安全を確保する責任を負うのは通信塔所有会社だと述べた。

「テレノールは、地雷が敷設された疑いのある通信塔の監視や報告についてパートナーである通信塔会社と頻繁に対話しており、[それらの会社が負う(※メコン・ウォッチによる補足)]すべての通信塔の物理的安全を確保し看板や情報を設置する責任をあらためて表明する」とスポークスパーソンは述べた。

ミャンマー国有の携帯通信事業者MPTを共同経営する日本企業のKDDIと住友商事はどちらも、MPTの通信塔に地雷が敷設されたとは聞いていないと回答した。

「われわれは関係者全員の安全を最優先としながら社会的インフラを維持する努力を続ける」とKDDIのサチカ・オダ氏は述べた。

しかし、ミャンマー・ナウの取材によればMPTとオレドーの通信塔にも地雷が敷設されている。

カタール政府が過半数株を所有するミャンマーの通信事業者オレドーは、コメント要請に応じなかった会社の一つである。ノキアのスポークスパーソンは、ノキアがオレドーの通信塔に設置されている電波装置を提供していることを認め、それ以上の問合せはオレドーにするよう求めた。

通信塔事業会社であるイラワディ・グリーン・タワーズ、アポロ、OCK、edotcoも通信塔の地雷敷設についてのコメント要請に応じなかった。

ミャンマー・ナウは本記事が出るまでに、地雷が敷設された通信塔についての警告や詳細が携帯通信事業者や通信塔事業者のウェブサイトに公表されているのを見つけることはできなかった。

テレノールは、同社が所有またはリースしており地雷が敷設されている通信塔のリストを公表してほしいとの要請には応じなかった。

国連のミャンマーに関する独立した国際事実調査団にいた専門家のクリス・シドティ氏は、テレノールなどの通信事業者はさらなる行動をとるべきだと述べた。

「通信事業者は、国軍が地雷を敷設した通信塔のリストの提供を国軍に求めるべきであり、予防的措置としてそのリストを広く公開するべきである。罪を犯しているのは国軍だが、関係する事業者にも責任がある」

オスロの平和研究所の平和研究者でミャンマー経験のあるステイン・トネソン氏は、抗議するようテレノールに求めた。

「テレノールは主要な競争相手であるミャンマー郵電公社(MPT)とオレドーの二社と連携した抗議も試みるべきである。テレノールの株主を代表する同社の理事会は本件についてできることがすべてされるようにするべきである」とトネソン氏は述べた。

テレノール・ミャンマーは、最近では2017年に通信塔の安全が侵されたことについて批判された。ロヒンギャに対するジェノサイドが行なわれた際、ラカイン州マウンドー郡アレタンチョー村で、イラワディ・グリーン・タワーズが所有しテレノールにリースしていた通信塔が、村人を攻撃するミャンマー国軍に狙撃兵の拠点として使用された。

2019年12月、テレノールが人権デューデリジェンスを怠ったとしてOECDの連絡窓口に問題提起が行なわれた。「アレタンチョー村のための正義を求める委員会」によるこの問題提起は現在も継続中である。

「この武器に正当な使用理由はない」

RFAの報道によればシャン州北部で9月、通信塔の修理をしていたマイテルの技師が地雷を踏んで脚に重傷を負った。テレノールの通信塔で死傷者は出ていないが、危険は残る。

地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)のスポークスパーソンはミャンマーで地雷使用が継続していることを非難した。

「誰が、どこで、いつ使用するかに関わらず、文民を無差別に殺すこの武器に正当な使用理由はないというのがICBLの見解である。ICBLはミャンマーに対し、いっさいの地雷使用を直ちに止め、地雷で汚染された土地から地雷を除去するためにあらゆる努力をし、文民の命を守るためにリスク教育を広く提供するよう求め続ける」

トネソン氏によれば、軍政による地雷使用は1997年の対人地雷全面禁止条約に反する国際法違反である。同条約は加盟国ではないミャンマーにも適用される。

「ノルウェー政府は、対人地雷全面禁止条約の違反について声高にはっきりと抗議するべきである」と氏は述べた。

ノルウェー政府はテレノールの53.97パーセントを所有する。

シドティ氏は、ノルウェーにはテレノールの所有者としてミャンマー政府に地雷使用を止めるよう圧力をかける格別の責任があると述べた。

ノルウェー外務省はコメントの要請に応じなかった。

テレノールはミャンマーでの事業を、レバノンのミカティ家が所有するM1グループに売却する手続きをしている。この売却は人権やプライバシーについての懸念から活動家に批判されており、現在OECDの問題提起の対象となっている。

M1グループは通信塔事業者であるイラワディ・グリーン・タワーズの株主である。

 

(翻訳・文責 メコン・ウォッチ)

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