ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >メコン上流浚渫>メコン河の保全に取り組む活動家がゴールドマン環境賞受賞
メコン河開発メールニュース2022年5月27日
環境保護に功績のあった草の根の運動家に授与されるゴールドマン環境賞の今年の受賞者に、元教師でタイの環境活動家、多くの人からティ先生として親しまれているニワット・ロイゲオさんが選ばれました。昨年は、日本のNGO、気候ネットワークの平田仁子さんが受賞されています。
受賞式はオンラインで行われ、ビデオが公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=-_f0J4P_87A&t=3634s
ニワットさんの登場は00:55:01 から(英語・タイ語)。
メコン河本流は、ダム建設や中国との大型貨物を運ぶための上流部の浚渫事業に脅かされてきました。中国が強く推進してきた上流浚渫は、2000年代初頭から始まっています。
過去の状況については、「メコン河上流浚渫プロジェクト」のページをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/tb/rapidblasting.html
ニワットさんたちのグループ、グルム・ラック・チェンコン(チェンコンを守る、または愛する会と訳される)は、この問題に当初から取り組み、受賞のビデオにあるようにさまざまな地元のアクターを巻き込みながら、問題を広く社会に伝えることに成功。この声がタイ政府を動かし、事業は長く中断していました。しかし、2015年にはこれが再開し中国の領域で工事が進みつつも、タイでは再び地元の人たちの強い懸念の声により停止しています。
グルム・ラック・チェンコンはタイの北部で20年以上、メコン河本流の問題だけでなく、支流の環境保全にもコミュニティと共に取り組んできました。その活動の初期には、メコン・ウォッチも協力をしています。
イン川漁業・湿地利用調査プロジェクト
http://www.mekongwatch.org/activity/ing_background.html
2012年には、ニワットさんを日本にお招きし、メコン河開発について日本の外務省との対話も行っています。
今回の受賞は上流浚渫を止めたことが評価されていますが、グループは、重要な生態系であるメコン河の支流、イン川で川と河岸の林の保全などにも取り組んでいます。
こちらは、2019年に現地を訪問した際の記録です。
フォーラムMekong PDF版
「北部タイ 中国の河川開発の影響と人々 チェンライ県の現在」
http://www.mekongwatch.org/PDF/FM-PDF-11.pdf
以下に、ニワットさんの受賞のメッセージのタイ語部分を翻訳しましたのでご一読ください。
「こんにちは。グルム・ラック・チェンコンのニワット・ロイゲオです。私は今、タイとラオス国境であるチェンライ県チェンコン郡にいます」
「ゴールドマン環境賞において、メコン河上流浚渫事業から河を守る私たちの活動を評価してくださり、ありがとうございます。メコン河は重要です。その生態系は重要な体の器官のようなものです。もし、それを壊してしまえば、私たちはメコン河を殺してしまうも同然です」
「私たちは、メコン河流域の人々と政府に、協力してメコン河を守り、保全ほしいと呼びかけます。そして、このビデオを視聴しているみなさん、あなたがメコン河を守りたいと思ったら、例えあなたが世界のどこにいても、メコン河の重要性を語ったり、私たちの声を広げたり、ソーシャルメディアで伝えることでメコン河を守ることができます。次の世代のために、そして、この地球のために」
メコン河の生態系は危機に瀕しています。本流の開発だけでなく、支流に数多くのダムができたこと、土地利用の変化や気候変動の影響も顕著になってきました。先日、ラオスで見ることのできた最後のイラワジ・ドルフィン(カワゴンドウ)の群れが消えた、というニュースも流れてきました。残るはカンボジアに生息する100頭に満たない数となりました。私たちがメコンを見てきたこの20年間、環境の劣化は信じられないほど進み、どの地域でも魚は激減しています。しかし、チェンコンの人たちはメコン河の生態系を守ることを諦めていません。
呼びかけを受けて、私たちも小さな声を届けていく努力を続けたいと思います。
そしてティ先生、受賞おめでとうございます。
(文責 メコン・ウォッチ)