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ベトナム・石炭火力発電>ギソン2とブンアン2の保険会社

メコン河開発メールニュース2022年6月13日

先週NGOが発表した報告書『石炭事業を最後まで支援している保険会社が判明』(原題Exposed: The Coal Insurers of Last Resort)【※】により、ベトナムのギソン2とブンアン2石炭火力発電所の保険会社が明らかになりました。日本の大手損害保険会社(MS&AD、東京海上、SOMPO)が引受者に入っており、ブンアン2については、主要な担い手(3社の引受額の総額はブンアン2全体の約46%)となっていることがわかりました。

両発電所とも建設中の案件で、判明している保険会社は建設期間の引受者です。

報告書は、2018年にギソン2の保険契約が行われたのは、「多くの大手保険会社が脱石炭方針を発表した時期の直前だったため、この頃までの典型的なパターンと推測される、多数の大型マルチライン保険会社、専門保険会社、そして再保険会社による引き受けである」と分析しています。一方でその3年後の2021年のブンアン 2 の契約は、「国際的な保険会社の大半が、新規石炭事業の保険引受を排除する方針を発表した後だった」とし、「欧州の保険会社の市場撤退が2018年以降、日本、韓国、ベトナムの保険会社に対し、自国の企業が開発する事業の保険引受において以前よりも積極的役割を果たすよう圧力となった」と分析しています。

両発電所とも、事業者は日本企業と韓国電力公社(KEPCO)で、ギソン2は今年、ブンアン2は2025年の稼働を予定しています。稼働期間になれば、保険会社の顔ぶれは変わってくると予測されますが、建設期間と違い、稼働期間の保険は毎年更新が必要になります。報告書は、保険業界で脱石炭が浸透していく中、稼働期間の保険を確保していくことが今後ますます困難になることも示唆しています。

現在、ギソン2、ブンアン2だけでなくバンフォンでも、日本企業が事業者になっている案件の建設が、日本の官民による融資や保険によって押し進められていますが、これらの案件はパリ協定の1.5℃目標と整合しません。保険会社には、保険引受を停止することで、気温上昇を抑止できる役割があり、その役割を果たすべきです。

ベトナムの石炭火力発電事業についてはこちらをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/vietnam/coal.html

以下、報告書より抜粋。

■ギソン2石炭火力発電所(ベトナム、2018年に保険契約締結)

ギソンは、ベトナムのタインホア省における石炭火力発電事業である。各300メガワットの2基(ギソン1)は、すでにベトナム電力公社によって稼働されており、現在、丸紅(50%)とKEPCO(50%)によって、各660メガワットの2基(ギソン2)が建設されている。

ギソン2には、オールリスク型保険、賠償責任、貨物海上、テロリズムの4種のリスクへの保険がかけられている。本事業の保険契約が行われたのは、多くの大手保険会社が脱石炭方針を発表した時期の直前だったため、この頃までの典型的なパターンと推測される、多数の大型マルチライン保険会社、専門保険会社、そして再保険会社による引き受けである。

ギソン2の10大引受者の内訳は、アリアンツ(ドイツ、11億2000万米ドル)、タルボット(アメリカ、AIGが買収、6億2100万米ドル)、SOMPO(日本、6億1000万ドル)、AIG(アメリカ、5億6200万ドル)、チューリッヒ(スイス、5億3500万米ドル)、XL(バミューダ、アクサが買収、4億9300万米ドル)、スター(アメリカ、4億8900万米ドル)、スイス再保険(スイス、4億3700億米ドル)、アライド・ワールド(バミューダ/カナダ、3億9500万米ドル)、現代(韓国、3億3400万米ドル)である。

その他に、ペトロベトナム保険(PVI、ベトナム)、コリアンリ(韓国)、Samsung Re(韓国)、ビーズリー(イギリス)、キャノピアス(イギリス)、東京海上(日本)、リバティ・ミューチュアル(アメリカ、Ironshoreを含む)、三井住友海上(日本、MS&ADの一部)、QBE(オーストラリア)が保険を引き受けている。

■ブンアン2石炭火力発電所(ベトナム、2021年に保険契約締結)

ブンアン発電所は、ベトナムのハティン省の石炭火力発電所である。現在、ペトロベトナムが1,200メガワットのブンアン1石炭火力発電所を運営している。一方で、KEPCO (40%)、三菱商事(25%)、中国電力(20%)、四国電力(15%)で構成されたコンソーシアムによって、1,200メガワットのブンアン2石炭火力発電所が建設中である。さらに2,400メガワットの建設計画が提案されたが、実現しない見込みである(*8)。

世界環境法律家連盟(ELAW)による分析で、ブンアン2の環境影響評価は、多くの点において国際的な基準を満たしていないことが判明している(*9)。

ブンアン2の保険契約が締結されたのは、国際的な保険会社の大半が、新規石炭事業の保険引受を排除する方針を発表した後だった。事業の10大引受者の内訳、MS&AD(MSファースト、MSIG、MSアムリンを含む、日本、12億1600万米ドル)、東京海上(日本、5億6900万米ドル)、スター(アメリカ、4億9000万米ドル)、SOMPO(日本、2億3800万米ドル)、バークシャー・ハサウェイ(アメリカ、2億1800万米ドル)、AIG(タルボットを含む、アメリカ、2億1500万米ドル)、リバティ・ミューチュアル(アメリカ、2億600万米ドル)、PVI(ベトナム、2億300万米ドル)、コンベックス(バミューダ、1億5100万米ドル)、アライド・ワールド(バミューダ/カナダ、1億2200万米ドル)である。

その他に、ヒスコックス(イギリス)、ヘルベディア(スイス)、W.R.バークレー(アメリカ)、ビーズリー(イギリス)、マーケル(アメリカ)、トランスリー(アメリカ)、コリアンリ(韓国)、キャノピアス(イギリス)、チョーサー(中国再保険の一部、中国)、アンタレス(カタール)、シンシナティ(アメリカ)、AEGIS(アメリカ)、India International(インド)が保険を引き受けている。

ブンアン 2 は、新規石炭事業の開発を停止する必要性について世界的な合意に達した時期に、複数の日本の大手保険会社(MS&AD、東京海上、SOMPO)および日本以外の事業関与国の保険会社(PVI、Korean Re)、世界各国の専門保険会社(スター、バークシャー・ハサウェイ、コンベックス、アライド・ワールド、ヒスコックス、W.R. バークレー、ビーズリー、マーケル、その他数社)、アメリカの大手保険会社(AIG、リバティ・ミューチュアル)、そしてスイスのヘルベティアのような日和見主義的な数社、という組み合わせによって保険契約が締結された。

驚くべきことに、ブンアン 2 の保険の大半を引き受けている日本の 2 社、MS&AD と東京海上は、ブンアン2 の契約が開始した 2021 年 10 月 26 日よりもずっと以前(MS&AD は 2021 年 6 月、東京海上は 2021 年の9 月)に、新規石炭事業への支援を排除する脱石炭方針を発表していた。MS&AD は、同方針は、すでに交渉段階に入っていた事業には適用されないと主張している。この主張がいささか問題だとしても、今後はMS&AD の保険が他の新規石炭事業に付くことはないだろう。

同様に、完全子会社で中国再保険とは「一心同体」のチョーサーが、中国は今後海外で石炭火力発電所を建設しないと習近平国家主席が国連総会で発表した 1ヶ月後に、ブンアン 2 への保険引受を決定していたことも驚きだ(*10)。中国再保険は、自社の海外子会社が国家主席の石炭に関する発表に従うのを当然とはしていないと見える。

[注番号は原文(和訳)のママ]
(*8)Global Energy Monitor Wiki, Vung Ang power station を参照。
(*9)ELAW, Evaluation of the 2018 Environmental Impact Assessment (EIA) Report For the Vung Ang II Thermal Power Plant Project, April 2020
(*10)中国再保険(2019年4月12日)「中国再保険集団はチョーサーの全株式を取得」


【※】2021年6月9日に環境NGOの国際ネットワーク「Insure Our Futureキャンペーン」と韓国の環境NGO「Solutions for Our Climate (SFOC) 」が発表した報告書。
英語原文“Exposed: The Coal Insurers of Last Resort”
https://global.insure-our-future.com/wp-content/uploads/sites/2/2022/05/IOF-KEPCO-Briefing.pdf
和訳『石炭事業を最後まで支援している保険会社が判明』
https://sekitan.jp/jbic/wp-content/uploads/2022/06/kepcoreportjp.pdf


(文責 メコン・ウォッチ)

 

 

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