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日本と軍政の危険な協力関係

メコン河開発メールニュース2022年9月14日

 

長年ミャンマーの人権問題に取り組んできたNGOプログレッシブ・ボイスは、7月の記事で、日本が人権と民主主義よりもミャンマー軍政との商業関係の維持を優先させている、と指摘しました。「日本と軍政の危険な協力関係」と題されたこのレポートで、日本は人権と民主主義の原則を支持できていない、と厳しい指摘がされています。以下の原文を、和訳でご紹介します。

原文

“Japan and Junta Make Dangerous Bedfellows,” Progressive Voice Weekly Highlight (July 26, 2022)
https://progressivevoicemyanmar.org/2022/07/26/japan-and-junta-make-dangerous-bedfellows/

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プログレッシブ・ボイス ウィークリー・ハイライト

2022年7月26日

日本と軍政の危険な協力関係

カレン州で激化する一方の空爆が続くなか、日本の政府と企業はミャンマー軍政との問題の多い関係をますます深めている。これは、軍政によるミャンマーの人びとに対する残虐行為や恐ろしい暴力を終わらせる目的で科された制裁などの国際的努力を大きく損なうものである。一方、日本以外の国際勢力は、支配権を握ろうとする軍政の卑怯な試みが自分たちの行動によって正当化されないようにするため、軍政との関係を断つ重大な措置を講じている。例えば、米国韓国オーストラリアニュージーランドは、拡大ASEAN国防相会議対テロ専門家会合(ADMM対テロ会合)をボイコットし、英国大使は軍政への信任状提出を拒否した。

市民社会による強い働きかけを受け、オーストラリアとニュージーランドに加えて米国と韓国もADMM対テロ会合をボイコットした。この会合はロシアが主催し、2022年7月20、21日にモスクワで開かれ、ミャンマーが共同議長国だった。これら4カ国は、ロシアとミャンマーの軍政がこの会合を主導したりそこに参加したりする立場にないことを理解している。米国防省は、両国の行動は「ASEANの価値観に明らかに反する」とまで述べた。これらの国々とは異なり、日本はモスクワでのADMM対テロ会合への出席についての立場を公にしなかった。日本はその同盟諸国と一線を画し、国軍の指導部や関連企業に対象限定型制裁を科すなど軍政の暴力を止めるための行動を一切取っていない。それだけでなく、日本はミャンマー国軍の人員の訓練も続けており、最近ではマグウェ管区域での深刻な人権侵害に関与していたとされる部隊を展開させた空軍の中佐を訓練した。ミャンマー国軍はロヒンギャに対してジェノサイドを、その他の少数民族に対しても数十年にわたり人道に対する罪や戦争犯罪を犯してきた。

先週、日本の政府開発援助(ODA)のうち技術協力を担当する国際協力機構(JICA)の内部文書が日本の報道で明るみになった。『東洋経済オンライン』によれば、JICAはミャンマーへの渡航制限を見直し、ミャンマー全土で国軍が極端な暴力行為を続けているにもかかわらず、開発事業を行うために経済協力の専門家を派遣することを決めた。内部文書は、JICAと契約する専門家が、専門家の本格的な派遣が軍政に正当性を与える恐れがあることや自分たちの安全について懸念を表明したことを詳述している。日本は国軍記念日に100人以上の民間人が虐殺されたことを受けて2021年3月31日に人道援助以外の新規開発援助を停止したが、そのほかにはミャンマー国軍の残虐犯罪を止めるための行動は取っていない。

この間、カレン平和支援ネットワーク(KPSN)は先週、カレン州のドーナ山脈南部で住民に対するミャンマー国軍による容赦ない暴力が続いていることを詳述したブリーフィングペーパーを発表した。国軍は激しい空爆を行い、日本財団が資金提供した「平和の町」レーケーコーも破壊された。クーデター未遂以前、失敗に終わった和平プロセスの一環で帰還難民のための安全な避難所であるはずだったレーケーコーは、軍政による空爆や恐ろしい攻撃によって今では廃墟と化し、3,000人が避難している。付近では、日本が出資するインフラ事業が紛争を促進し、軍政の役に立っている。そうした事業には、JICAが出資する東西回廊上の橋再建事業がある。この事業に関与する企業の一つであるIHIは軍政の建設省と合弁事業を行っている。KPSNは、カレン州への投資が時期尚早で、失敗に終わった和平プロセスの最中に経済事業を行うことでミャンマー国軍の強化を助けたとしてJICAと日本のODAを批判している。KPSNは現在の危機を、いわゆる和平プロセスが行われていた10年間での日本の行動と結びつけ、次のように述べた。「日本が提供した何十億ドルもの資金は、国軍が支援する政府(とその諸機関)を援助し、正当化しただけでなく、単一的で中央集権的な統治体制を固めるのを助けた——これによって日本はこの紛争において連邦制を求める民族団体の側ではなく、疑いなく軍政の側につくことになり、ビルマでの国民和解を支援しているという自らの主張を見せかけだけのものにしている」

日本政府はミャンマーに対して表向きは静かで穏やかな外交政策を取っているが、これは見え透いていて、実際には日本はテロリスト的軍政との商業関係を維持し、人権と民主主義の原則を支持できていない。例えば、国軍と関連する事業に持っていた権益を手放した外国企業もある中、日本の企業は、軍政の兵站局(QMG)が支配する土地で開発中の複合不動産事業であるYコンプレックス事業など、ミャンマー国軍と関連する事業への投資を続けている。Yコンプレックス事業では、年間210万米ドルに上る賃料が、米国、英国、カナダの制裁対象であるQMGに支払われ、国有の国際開発銀行(JBIC)が協調融資を行っている。最近では、日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長が非合法軍政と会談し、「経済発展や、経済・金融に関する二国間協力」、また貿易や投資について協議した。日本はミャンマーの人びとの生命、幸福、安全と、真の連邦制民主主義に対する強い願望よりも自らの経済的権益を優先させている。

日本の企業は国連ビジネスと人権に関する指導原則に従い、軍政との関係を断つべきである。さもなければ、軍政による深刻な残虐犯罪の共犯者となる恐れがある。さらに、日本政府とJICAは軍政を国の代表として認めるのを止めるべきである。軍政にはミャンマーを代表し、開発事業を認める正当性も権限もないからである。日本は軍政やその政商を利するODA事業も止めるべきである。日本政府は軍政やその政商に対象限定型制裁を科すために積極的な措置を取らなければならない。それには資金、ジェット燃料、武器へのアクセスを断つことも含まれる。そうしなければ、日本と日本企業は軍政をいっそう図に乗らせ、戦争犯罪や人道に対する罪を含む凶悪な犯罪の共犯となる危険を冒すことになる。日本は同時に、民主主義や人権を支持し、国民統一政府(NUG)と国民統一協議評議会(NUCC)と協力しなければならない。さらに、日本は「春の革命」勢力や市民社会や民族団体が抵抗を強め、この残酷なテロリスト軍隊を打倒し、真の連邦制民主主義を築くのを支援するべきである。

[原注1] 1988年の民主化蜂起の1年後、当時の軍事政権が一夜にして国名を Burma (ビルマ)から Myanmar (ミャンマー)に変更した。プログレッシブ・ボイスは、同国の大半の人びとが「ミャンマー」を使っていることを受け、「ミャンマー」を使用している。しかし、「ミャンマー」がすべての市民を含む包括的な語であるという欺瞞と、当時の軍政だった国家平和開発評議会(SPDC)が人びとの同意なしに「ビルマ」ではなく「ミャンマー」を使うよう強制した歴史的経緯は認識され、忘れられることはない。従って、特定の状況においては「ビルマ」を使用する。

参考
カレン平和支援ネットワーク(KPSN)によるブリーフィングペーパー
Karen Peace Support Network, "SAC regime unleashes war across the southern Dawna Range" (July 19, 2022)
https://www.karenpeace.org/report/sac-regime-unleashes-war-across-the-southern-dawna-range/
東洋経済オンライン「人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非」(2022年7月15日)
https://toyokeizai.net/articles/-/603730

(文責 メコン・ウォッチ)

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