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カンボジア・セサン下流2>世界銀行が被害住民の申立てを受け、調査開始を決定

メコン河開発メールニュース2022年12月13日


カンボジア東北部で2017年末に運転を開始したセサン下流第二(LS2)ダムをめぐって、先週、大きな動きがありました。世界銀行(世銀)グループの国際金融公社 (IFC)が設置したコンプライアンス・アドバイザー/オンブズマン室(CAO)が、LS2ダムへのIFCの関与を認め、IFCが環境社会政策を遵守したかを調査する決定を下したのです。(文末に用語・参照資料の記載があるので、ご参照ください。)

LS2ダムの被害住民は2018年6月、CAOに異議申立てを行い、LS2ダムを運転管理する水力発電LS2社およびカンボジア政府と土地権の取得や追加補償をめぐる調停を要請しました。しかし、LS2社もカンボジア政府もCAOの申し出に応ぜず、次の段階として、IFC自身の政策遵守をめぐる審査が始まることになりました。

IFCのLS2ダムへの関与は間接的です。CAOが先週末に公表した報告書によると、IFCはベトナムのアンビン商業銀行(ABバンク)に融資、そのABバンクがEVN国際会社(EVNI)に融資、そしてEVNIがLS2社の株を保有しています。報告書では、EVNIがLS2ダムの環境影響評価や設計に影響力を持つ立場にあったことから、もしIFCが環境社会政策の遵守を徹底していたならば、住民が受けた被害を回避・軽減できる可能性があったことを指摘しています。

CAOは今後一年を目途に、LS2ダムがもたらした環境社会影響や人権侵害がIFCの政策上の不作為によるものかを調査し、不作為が原因と判断した場合は、IFCの理事会に解決策を勧告します。これまで15年間以上LS2ダムの建設反対を訴えてきた住民にとって闘いは続きますが、被害を軽減できる可能性が浮上してきました。メコン・ウォッチは住民への支援を継続するとともに、CAOが実地調査を通して被害状況や住民の意見に基づいた勧告を出すよう、各方面に働きかけてゆきたいと考えています。

なお、LS2ダムは、カンボジア東北部ストゥン・トレン州を流れるセサン・スレポック両河川の合流地点のやや下流に建設され、さらに25キロ下るとメコン河本流に達します。ここを高さ75メートル、幅6.5キロ、発電量400メガワットの巨大ダムが遮断したため、水流や魚類の回遊に大きな影響が生じ、メコン河流域全体で魚類が9.3%も減少し、50種以上が絶滅するとの試算もあります。また、330平方キロもの広大な貯水池の出現によって、住民約5,000人が立退きを余儀なくされました。多くは先住・少数民族で、今でも百数十世帯が立退きを拒み、水没した村の周辺で劣悪な居住条件に耐えながら、先祖伝来の土地を守りつづけています。

LS2ダムの建設は、当初、ベトナム・カンボジア両国の企業によって進みました。ところが、2012年、中国華能グループの子会社、華能瀾滄水電(ハイドロ・ランチャン)がLS2社の株の51%を取得して以来、カンボジアの財閥企業ロイヤル・グループとともに事業の主役になっています。同時にLS2ダムは、中国政府が推進する一帯一路構想の事業として位置付けられています。

LS2ダムの詳細については、メコン・ウォッチの関連サイトをご覧ください。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html


【用語・参照資料】
・国際金融公社(IFC):世銀グループの一組織で、民間企業への投融資などを担当する。
https://www.ifc.org/wps/wcm/connect/Multilingual_Ext_Content/IFC_External_Corporate_Site/IFC_Home_Japan/
・コンプライアンス・アドバイザー/オンブズマン室(CAO):IFCが関与する事業で被害を受けた住民から直接申立てを受付け、適格と判断した場合には、当事者間の調停やIFCの政策遵守の審査を行う。
https://www.cao-ombudsman.org/
・水力発電セサン下流第二社(LS2社):英語名は、Hydro Power Lower Sesan 2 Company
・CAO報告書(英文):表題は、”Compliance Appraisal of Complaints Regarding IFC’s Exposure to the Lower Sesan 2 Hydropower Project in Cambodia through ABBank and Vietinbank”
https://www.cao-ombudsman.org/sites/default/files/downloads/CAO_Compliance%20Appraisal%20Report_Cambodia%20FI%2001-3_December%202022_EN.pdf
・アンビン商業銀行:英語名は、An Binh Commercial Joint Stock Bank
https://www.abbank.vn/en/about-us.html
・EVN国際会社(EVNI):英語名は、EVN International Joint Stock Company
https://www.evngenco1.vn/d6/en-US/news/EVN-International-Joint-Stock-Company--1-1303-57
・中国華能グループ:英語名は、Huaneng Group (CHNG)
https://www.chng.com.cn/


(文責/メコン・ウォッチ)


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