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市民社会から日本政府への提言

メコン河開発メールニュース2023年6月20日

 

民主化・人権運動家のキンオーンマー氏(NGO Progressive Voice 創設者・会長)は、大学時代から民主化運動に参加し、1988年の軍事クーデターでタイ国境に逃れて以降、海外を拠点にミャンマーの民主化を目指す世界各国の団体の調整を担っている方です。先頃来日し、6月4日には、メコン・ウォッチと法政大学国際文化学部、法政大学大学院メコン・サステナビリティ研究所共催で、セミナーも行っています。

セミナーの録画はこちらで視聴できます。

FICオープンセミナー: ミャンマーの民主化を考える 国軍による見せかけの「選挙」と日本からできること
https://youtu.be/18C5S24oW6E

キンオーンマー氏が、日本に関してオンライン・メディアのミャンマー・ナウに投稿したオピニオンを以下に紹介します。

出典:Japan needs to sack Sasakawa and stand with the people of Myanmar, Myanmar Times, June 14, 2023
https://myanmar-now.org/en/news/japan-needs-to-sack-sasakawa-and-stand-with-the-people-of-myanmar/

日本(政府)はいつもの沈黙を続け、民主主義と人権を直接損なう政策を続けるのか、という問いかけ、日本政府がとるべき政策についての提言です。

***

日本は笹川陽平氏を解任し、ミャンマーの人びとを支持するべき

キンオーンマー
2023年6月14日

先週、私は日本を訪れて国会議員や政府職員、市民社会団体やジャーナリストたちと会い、ミャンマーに平和と民主主義をもたらすのを助けるために日本政府に何ができるかについて提言を行った。2024年まで国連安保理理事国であり、アジアの主要な民主主義国家でもある日本は、ミャンマーにおける危機を終わらせ、同国の人びとを保護するために局面を変えうる特別な立場にある。

しかし、ミャンマーの危機に対する日本の取り組みは笹川陽平氏の行動と、日本政府の長年にわたるミャンマー軍への支援によって繰り返し損なわれてきた。氏は2013年から「ミャンマー国民和解に関し、関係国政府等と交渉するための日本政府代表」としての任務を負っているとされる。

ミャンマーの民主化運動は、笹川陽平氏が軍政トップでありジェノサイド実行犯であるミンアウンフラインと公然と関係を持っていることを懸念してきた。関係を持つことで笹川氏は軍の違法なクーデター未遂を正当化しているからである。氏は2月、軍政が計画する見せかけの選挙についてメディアに対し「何が何でもやらないといけない」と述べて軍政への支持を強めた。

この衝撃的な発言に対し、日本政府は沈黙で応じた。このためミャンマーの人びとの間では、日本が、非常事態宣言が解除されて事態が「正常」に−−−−言い換えれば、新たな形をとった軍事支配に−−−−戻ることができるように見せかけの選挙が行われるのをただ待っているのではないかとの深刻な懸念が持ち上がった。

日本はいつもの沈黙を続け、民主主義と人権を直接損なう政策を続けるのか?

日本政府は長年、ミャンマー軍を支持してきた。日本はビルマ軍の設立を助け、1988年に起きた全国的な民主化蜂起を軍が残忍に弾圧し、平和的に抗議していた約3,000人が殺された後も、軍政を政府として最初に承認した国の一つだった。

日本はその寛大な姿勢を正当化するために軍との「特別な関係」を繰り返し強調してきた。ミャンマー軍が残虐行為をしていることを示す紛れもない証拠を前にしても、軍を怒らせうる措置を日本政府に取らせるためには非常に大きな圧力が必要となる。2021年2月に軍が権力を奪って以降、日本は、表面上は軍政をある程度批判してきたが、軍との関係を断つための手段は講じていない。

未遂クーデター以来、ミャンマー軍は 3,600 人以上を殺害し、2 万 3,000 人以上を逮捕した。2022年には、ミャンマーは 民間人を標的 にした暴力について世界で最多を記録した。軍は民間人に対して殺害、拷問、性的暴力、空爆、砲撃、焼き討ちなどを続けているが、これらはすべて人道に対する罪や戦争犯罪であると正確にみなすことができる。国連による控え目な見積りによっても、未遂クーデター以降に 180 万人が避難民となった。このうち150万人は未遂クーデターの直接の影響として避難を余儀なくされた。

ミャンマーでの危機は明らかに悪化しており、軍政はいたる所で人びとに対して非常に大きな損害を与えている。一方で、連邦民主制をめざすミャンマーの運動は全国各地で前進を遂げている。日本は今度こそ対応の仕方を変え、人びとの努力を支えるべきである。軍が計画している「選挙」が行われても、ミャンマーの人びとが暮らしたいと思い、若い世代がそのために犠牲を払っているような国にはならない。笹川氏の行動は軍による犯罪を助長し、ミャンマーの人びとの持つ日本のイメージを損なうだけである。

ミャンマーに関して日本がどんな選択をするべきかが今ほど明確になったことはない。日本は、人びとを殺し拷問しても処罰されない軍を暗黙に支持するのではなく、自由で繁栄するミャンマーをもたらすことに専念し、そのために文字どおり命を犠牲にしている人たちを支えることができる。

日本がミャンマーに対する姿勢を正すためにはいくつもの手段を講じなければならない。第一に、軍政下で行われるいかなる「選挙」も正当なものとして認めないことを公表するべきである。

第二に、日本は笹川陽平氏のマンデートを明確にするべきである。訪日中の会合で外務省のある職員は、笹川氏は未遂クーデター以降、国の資金を受け取っていないと述べたが、笹川氏が今も日本政府代表なのかどうかは明らかにしなかった。笹川氏の公式な立場は明らかにされるべきである。また、今でも日本政府代表である場合には、直ちに解任されるべきである。

第三に、日本はミャンマーの人びとの正当な代表である国民統一政府(NUG)と民族革命組織との公式の連絡ルートを開くべきである。また、連邦民主制を確立させようという人びとの意志を効果的に支えるため、現地の市民社会団体と協議するべきである。

第四に、日本は軍政によって実施されている政府開発援助(ODA)をすべて停止することを通じ、ミャンマー軍による重大な人権侵害や国際犯罪への加担を止めるべきである。また、軍や軍所有企業と事業を行っている日本企業にそのような関係を断たせるべきである。

最後に、国連安保理では、日本は軍政に対する武器禁輸措置や標的制裁を実現させ、ミャンマーの状況を国際刑事裁判所に付託するために協力国と連携するべきである。ミャンマー軍は、ロヒンギャに対するジェノサイドのほか、全国で犯されている人道に対する罪や戦争犯罪について責任を追及されなければならない。

日本訪問中、ある人が私に、なぜ日本政府に働きかけるために時間をかけるのかと訪ねた。長年、活動家や理解のある国会議員たちが力を注いできたにもかかわらず、日本政府はミャンマーの人びとを本当に支持したことはない、とその人は言った。こんな活動は私の時間の無駄ではないのか?

そんなことはない、と私は答えた。「春の革命」は、これまでにミャンマーであった民主化運動のうちどれよりもずっと強力である。春の革命は若者によって率いられ、多世代が参加している。また社会の様々な階層が参加しており包摂的で、多数派のバマー民族がロヒンギャを含む少数民族と連帯し、すべての人のための正義を追求している。従って、ミャンマーの春の革命と、平和で繁栄する連邦民主制国家の指導者になろうとしている若い世代を支えることこそが日本の長期的利益にかない、その民主主義的な価値基準にも合うと私は考える。

キンオーンマー氏はミャンマーの人権団体であるプログレッシブ・ボイスの創設者・会長。

(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)

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