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日本による鉄道事業がミャンマー軍政による残虐行為を幇助する恐れ

メコン河開発メールニュース2023年8月3日

 

2021年2月1日にミャンマー軍がクーデターを起こして以降も日本の政府開発援助(ODA)事業は、継続しています。ミャンマーの活動家のグループ、ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)は、日本が支援する鉄道事業がミャンマーの軍による残虐行為を幇助する恐れがある、と指摘したレポートを5月に発表しています。長文ですが以下に訳出してお届けします。

現在、鉄道事業はヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業と、ヤンゴン環状鉄道改修事業の2つで、フェーズの異なる5つの事業が進行中です。5月末の朝日新聞の報道で、これら鉄道事業は既存案件のフェーズで終了し、今後の工事はミャンマー側で実施すると報じられました。日本政府はこの決定に関して、なんら公式にコメントしていません。JFMの発表を受けNGO、ビジネスと人権リソースセンターが各企業(日本企業は、三菱商事、IHI、日本信号、フジタ、住友商事、鉄建建設、りんかい日産建設、東急建設、トーエネック、クリハラント)に問い合わせを行った結果が以下に掲載されています。

「ミャンマー:日本企業等が資金提供した鉄道プロジェクト、軍が列車を使用しているにもかかわらず継続されているとの報告」(ビジネスと人権リソースセンターのページ)

https://www.business-humanrights.org/ja/ 最新ニュース/ミャンマー日本企業等が資金提供した鉄道プロジェクト軍が列車を使用しているにもかかわらず継続されているとの報告/

***

日本による鉄道事業がミャンマー軍政による残虐行為を幇助する恐れ

出典:Justice for Myanmar, "Japan Railway Projects Risk Aiding and Abetting Myanmar Junta Atrocities," May 30, 2023

https://www.justiceformyanmar.org/stories/japan-railway-projects-risk-aiding-and-abetting-myanmar-junta-atrocities

ジャスティス・フォー・ミャンマー

2023年5月30日

ミャンマーで日本が出資する鉄道事業が非合法軍政と共同で進められていることが、企業や事業が開示した情報およびリークされた文書の調査を通じて明らかになった。

これらの鉄道事業は、ミャンマー軍がミャンマー鉄道公社を違法に支配し、兵員や武器その他の補給品の移送に列車を使っているにも関わらず続いてきた。これは国際協力機構(JICA)や事業に参加する諸企業が人権デュー・ディリジェンスの面で大失敗していることを示している。

進行中の事業は、軍による違法クーデター以前に調印された、ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業(フェーズ 1)と、ヤンゴン環状鉄道改修事業のための複数のフェーズにわたるJICAの融資を受けている。ヤンゴン・マンダレー間の鉄道整備は二つのフェーズに分かれており、現在はヤンゴン・タングー間で作業が行われている。

鉄道は軍政にとって戦略的な物流資産である。ネピドーを通るヤンゴン・マンダレー線を含め、軍事的役割を担う列車は攻撃の対象となってきた。チャウセーの人民防衛隊( PDF)は2021年9月、郵便車を装ってミャンマー軍の武器や食料を運んでいる とされた列車に軍事行動を仕掛けた。2021年10月にはミッタのPDFが、マンダレーからヤンゴンまで兵員を運んでいる とされた列車を攻撃した。

鉄道整備事業はミャンマー軍の兵站能力を強化し、新車両と改良された鉄道インフラが、ミャンマーの人びとに対して現在も続く攻撃の際に軍政に利用される可能性が非常に高い。これは戦争犯罪と人道に対する罪に相当する。事業に関与する日本政府と諸企業は、これらの犯罪に関して共謀者となる危険がある。

軍政は以前から輸送援助を軍事目的に悪用してきた。日本政府は4月、軍政が2022年に民間の旅客船2隻を軍事利用し、アラカン州で兵員と武器を輸送したことを 確認し 公式に抗議した。これらの船は2017年と2019年に国民民主連盟(NLD)が率いる政府に寄付されたものだった。

軍政はまた、未遂クーデター前にデンマークから寄付された船を悪用し、現在も続く人道に対する罪に責任のある軍政の警察の管理下に置いた。

軍政が列車を軍事目的に利用する可能性についての問い合わせに対し、JICAは次のように答えた。

この協力の目的はミャンマー軍を利することではない。ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業は日本の ODA[政府開発援助]事業としても実施されており、交換公文と二国間合意で事業が軍事目的には使用されないことが両国の間で定められた。

しかし、JICAも事業に参加する諸企業も、軍政が鉄道を軍事目的で利用するのを止めることはできない。

軍政がこの事業を続けるのを認めることで、日本政府は、ミャンマー軍による未遂クーデターが違法だったという事実にも関わらず、軍政がミャンマー鉄道公社を違法に支配していることを事実上認めているのであり、そうすることで軍政に正当性を与えている。軍政はミャンマーの人びとから圧倒的に拒絶されており、ミャンマーの領土を 実質的に支配しておらず、国際的にもミャンマーの政府として承認されていない。

事業の継続は、違法軍政のために働くことを拒んで市民的不服従運動に加わった、ミャンマー鉄道公社の職員 3万人の90 パーセントと推定される人たちに対する直接的な攻撃である。春の革命の最前線で果たしている役割が原因で、鉄道職員は恣意的逮捕や拷問の対象となり、収入や宿舎を失い、命や生活手段を犠牲にしている。

JICAの支援はプロパガンダにも利用され、軍政の 印刷媒体テレビで大きく取り上げられた。軍政の運輸通信相である元海軍司令長官ティンアウンサンは JICAのヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業を少なくとも2 回 訪れ、写真撮影が行われた。ティンアウンサンはミャンマー鉄道公社を支配しており、米国、カナダ、 EU、英国、オーストラリアから制裁を科されている。

ジャスティス・フォー・ミャンマーは日本政府と鉄道整備事業に関与する諸企業に対し、人権面の国際的義務に従って、ミャンマーが連邦民主制に移行するまで作業を直ちに停止するよう求める。

軍政のための列車

新車両の製造と供給は、未遂クーデターの数週間前に結ばれた5億ユーロを超える 契約のもと、三菱商事とスペイン企業である CAFとの提携を通じて行われている。CAFはミャンマー鉄道公社のためにスペインで日本製の部品を使って電気式気動車 246両を製造している。ジャスティス・フォー・ミャンマーは、すでに車両が一部でも軍政に引き渡されたかどうかは確認できなかった。

CAFは最近、「ミャンマーにおけるまったく新しい国際チーム」の職員の募集を始めた。募集されている職の 一つは「車両保証プロジェクトマネージャー」で、「新車両に設置される機械や装置の保守を行う」ことになっている。 別の職は「保証・保守上級主任技師」で、「車両の改良保全および保守が全体的に円滑で効率よく行われるようにする」ことになっている。これは、 CAFがミャンマー鉄道公社の車両の保守を通じて軍政に継続的な支援を行う可能性があることを示している。
CAFの軍政への車両の供給と、ミャンマーでの計画は、国家統治評議会( SAC)に対するEU の制裁に違反する恐れがある。 SACはミャンマー鉄道公社と事業から生まれる収入とを支配しており、経済・兵站面の能力が高まることから恩恵を受ける。

CAFは次のように回答し、人権デューディリジェンス、車両の供給状況、ミャンマーで事業を始める計画、軍による車両の使用についての情報をジャスティス・フォー・ミャンマーに提供することを拒んだ。

言及される企業として、また情報の性質を鑑みて、残念ながらCAFはこれほどの具体的な詳細を求められた情報を一切共有することはできない …デューデリジェンスに関して定められた社内手続きの適用後、ミャンマー(または他のどの事業に)において CAFグループの関与からの人権侵害や制裁違反の発生は検知されなかった。

三菱商事も、ビジネス上の機密を理由に、事業とミャンマーにおける人権デューデリジェンスについての情報提供を拒否した。三菱商事は次のように回答した。「 MC[三菱商事]は、当社の事業が人権と環境に及ぼす悪影響を特定、分析することで、そのような影響が回避/緩和されるようにし、責任を果たすことが重要だと考えている。 MCはこれを念頭に人権・環境デューデリジェンスを行っている」

JICAは、個別の事業の状況について詳細を出すことはできないと述べ、車両がすでに軍政に引き渡されたかを明らかにしなかった。

軍政のための線路維持作業

大和ハウスグループの子会社であるフジタコーポレーションと、住友商事と日本信号は2019年に共同で、ヤンゴン・バゴー間の線路の修理・維持と、信号システムの近代化をミャンマー鉄道公社から 受注した

リークされた税申告書類によれば、2022年にフジタコーポレーションはミャンマー鉄道公社から 297億チャットの収入を得た。これは1,500万米ドル以上に相当する。

フジタコーポレーションはY コンプレックス事業への出資者としてミャンマー軍とは長年の取引相手である。同事業は BOT契約のもと、軍の兵站局から賃借する土地に建設されている。

税申告書類によればフジタコーポレーションは、日本の株式会社IHIと軍政支配下にある建設省との合弁企業である I&Hエンジニアリングに仕事を下請けに出している。

フジタコーポレーションはまた、軍による未遂クーデター以降にA1コンストラクション社に仕事を下請けに出しており、人権デューデリジェンスの面でいっそうの不足を露呈している。 A1コンストラクションは、子会社であるミャンマーのテラビット・ウェーヴ社(Terabit Wave Co. Ltd.)とシンガポールのブライトスカイ社(Bright Sky Pte. Ltd.)とを通じてミャンマー軍に 武器を供給している政商企業、 A1グループの一員である。

日本信号の申告書類によれば、日本信号はミャンマーでの非公表の事業のために2022年 3月までの半年で39億5,000万チャットの収入を得た。これは 220万米ドルに相当する。日本信号は未遂クーデター以降もヤンゴン循環線で作業を行ってきた。

バゴー・ニャウンレビン間の改修は日本企業である鉄建建設とりんかい日産建設の共同企業体が受注した。この企業体は 2018年に政商企業である マックス・ミャンマー社と提携した。税申告書類によれば、鉄建建設とりんかい日産建設は軍による未遂クーデター以降も軍政との事業の工事を続けた。

鉄建建設とりんかい日産建設がマックス・ミャンマーと提携していることは、人権デューデリジェンス面のいっそうの不足を示している。 国連のミャンマーに関する独立国際事実調査団は、マックス・ミャンマーが 2017年にミャンマー軍が行ったジェノサイド作戦を支援する大口の寄付をしたことを明らかにした。調査団は「マックス・ミャンマーについては刑事捜査が行われるべきであり、その結果によっては、上述のとおり企業関係者と刑事責任について適用される法的枠組に沿って、「その他の非人道的行為」という人道に対する罪の犯行に重大で直接の貢献をしたことと迫害について訴追されるべき」と勧告した。

鉄建建設とりんかい日産の共同企業体は、担当区間のポイントと信号に関する工事を日本企業である株式会社トーエネックと株式会社クリハラントに下請けに出した。税申告書類によれば、これら二社は 2022年にも事業に関わっていた。

リークされた税申告書類によれば、ニャウンレビン・タングー間の工事は2018年に東急建設が 受注し、同社は未遂クーデター以降も作業を続けている。東急建設は政商企業であるシュエタウンとの合弁企業を持っている。国連のミャンマーに関する事実調査団は、シュエタウンが、 2017年にミャンマー軍が行ったジェノサイド作戦の支援のために寄付をしたことを明らかにした。

鉄道事業は軍政に力を与え民主主義を損なっている

日本政府と諸多国籍企業はこれまで、ミャンマーの人びとの民主主義的権利を支持し国際人権法上の義務を果たすのではなく、軍政と軍政によるミャンマー鉄道公社の違法な乗っ取りを事実上承認している。

日本政府と諸多国籍企業は、未遂クーデター前に交わした契約に従い平常通り活動を続け、軍政に正当性を与え、軍政の兵站能力を増強し、一切処罰されることなく戦争犯罪や人道に対する罪を継続する軍政に力を与えている。

ジャスティス・フォー・ミャンマーは、日本政府と鉄道整備事業に関与する諸企業に対し、ミャンマーが連邦民主制に移行するまでは直ちに停止するよう求める。

日本はミャンマーの人びとを支持し、軍政に制裁を科し、ミャンマーでの開発支援事業をすべて停止することで国際的義務を果たすべきである。

スペイン政府はCAFのミャンマー軍政との取引を捜査し、EUによる制裁に対する違反があれば迅速に行動を取るべきである。

情報更新(2023年6月2日):三菱商事から寄せられたコメントを上記に反映させた。


本記事発表後、朝日新聞が、日本政府はヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業にこれ以上円借款を提供しない意向であると報道した。

*「日本、ミャンマーの大規模>ODA打ち切り 鉄道改修、4分の>1程度で」(朝日新聞2023年5月31日) https://www.asahi.com/articles/ASR5Z52T3R5ZUHBI00V.html

(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)

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