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メコン本流ダム>パクベンダム、買電契約締結

メコン河開発メールニュース2023年10月16日

メコン河流域では、2007年以降に本流でのダム開発が復活しています。現在、ラオス北部のサイヤブリダム、南部のドンサホンダムが稼働中です。また、流域の調整機関であるメコン河委員会の「通知、事前の協議および同意の手順(PNPCA)」の手続が終了しているものは、サナカムダム、ルアンパバンダム、パクライダム、パクベンダムの4つで、これらは全てラオス国内に位置しています。

タイ発電公社(EGAT)は9月13日に、パクベンダムの電力購入合意(PPA)を締結しました。PPAは発電事業者や小売電気事業者と電力の需要家との間で結ばれるものです。同ダムはラオスで建設計画が進むメコン河本流ダムで規模は912MWです。パクベンダムに関しては、PNPCAは2016年12月から行われ、2017年6月17日に終了しています。

メコン河委員会のパクベンダムのページ

メコン河本流ダムの建設には、上流部の中国国内で開発が進んでいる他、メコン河下流5カ国部分では、中国とタイの資本によって、ラオス国内に建設が進む傾向が顕著です。例えばサイヤブリダムには、タイのエレクトリシティ・ジェネレーティング・パブリック・カンパニー(EGCO)が事業参入しています。

実はこのタイ企業を通して日本企業もメコン本流ダムに関係しています。EGCO社には、テプディア・ジェネレーティング社を通し、日本のJERA、三菱商事、九電インターナショナル(九州電力子会社)が資本参加をしています。また、パクベンダムの事業者のうち、タイの電力会社ガルフ・エナジー・デベロップメントは持ち株会社ですが、日本の電源開発(J-Power)社は、ガルフ社との関連事業で合弁企業を複数経営するなど、関係が深いことが窺えます。

最近の報道や市民グループの資料から、このうちの一つ、パクベンダムの建設に向けた動きを紹介します。

各種報道および市民団体情報(出典は以下*)

・パクベンダムの発電の95%についてEGATが購入を決定。残りはラオス分。
・購入期間は2033年から29年間。1ユニット2.70バーツ。
・事業者はパクベン・パワー社。同社は中国の大唐海外投資有限会社が51%、タイのガルフ・エナジー・デベロップメント社が49%を持つ合弁会社。
・事業規模は18.8億ドル(1.88billion USD)。
・ダム建設によりラオス側の26ヵ村が影響を受け、タイ側でも複数の場所が影響を受ける。
・ラオスの村人は、ダムによりメコン河を船で行商できなくなることや漁獲減により、貧困世帯の状況悪化が懸念されるとしている。移転や補償についても不安を持っている。
・タイの住民ネットワーク「チェンコンを愛する会」は、ダムによりメコン河の水が滞るようになれば、川海苔が絶滅すると懸念している。川海苔はチェンコン地域の主要な収入源である。ダムができれば、乾期に流れが合流していた早瀬で水が合流しなくなり、また、渡り鳥が産卵できなくなるとしている。
・タイの住民は、メコン河本流だけでなく支流での氾濫による農作物への影響にも懸念を示している。
・PPAが締結した事実は、9月15日にタイ国家人権委員会が同ダムに関して開催した政府・住民/市民団体間の会合の終盤でEGATの代表者より明らかにされた。
・同会合にて、天然資源環境省(MONRE)の環境政策計画局(ONEP)の代表者は、水力はクリーンエネルギーであるため、隣国から購入しなければならないと述べた。
・PPA締結を知ったタイの8県の住民代表は、タイのセター新首相宛に買電計画を再考または中止するよう求める要請書を送った。

*出典
The Nation, "Mekong’s new Pak Beng Dam will not produce clean energy, warn residents" (2023.9.18)
https://www.nationthailand.com/thailand/general/40031135
RFA, "Power agreement hastens timeline for Laos’ Pak Beng Dam" (2023.09.21)
https://www.rfa.org/english/news/laos/agreement-09202023162437.html
Transborder News, "EGAT secretly signed Pak Beng dam’s Power Purchase Agreement" (2023.9.17)
https://transbordernews.in.th/home/?p=35504
International Rivers, "The Future of Thailand’s Rivers is in the Hands of its Prime Minister" (2023.9.25)
https://www.internationalrivers.org/news/future-of-rivers-in-pms-hands/

(翻訳・文責/メコン・ウォッチ)

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