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国連特別報告者が「死の取引をあてにする銀行について」報告書、日本の銀行もリストに

メコン河開発メールニュース2024年7月26日

 

ミャンマーでは、2021年の軍によるクーデター以降、ミャンマー軍による暴力が激化し、確認されているだけで既に5400人以上の方が殺害され、国内避難民も300万人を超える状況に陥っています。

ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者が2024年6月24日付で「死の取引をする銀行-外国の銀行と政府がいかにミャンマー軍政を助けているか(Banking on the Death Trade: How Banks and Governments Enable the Military Junta in Myanmar)」を発表しました。この報告は、会議室文書(Conference Room Paper)として第56回国連人権理事会に提出されたものです。ミャンマーが輸入する武器に関して、シンガポールの金融機関経由の取引が激減し、タイ経由が増えているとの指摘もなされたことから、タイの国会でも取り沙汰されています。日本の銀行では、みずほ銀行と三菱UFJ銀行の名前が上がっています。

特別報告者は、現在、どこの国の制裁対象にもなっていないミャンマー経済銀行(MEB)とミャンマー農業開発銀行という2つの国営銀行も制裁対象とすべきだと提言しています。この2銀行には、「農業・農村開発ツーステップローン事業」と「中小企業金融強化事業(フェーズ1、2)」というODAのツーステップローン事業の資金がプールされていると見られ、制裁の対象になれば日本のODAにも影響すると考えられます。

以下にこの報告書の概要をまとめましたので、ご覧ください。

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ミャンマーの国家統治評議会(SAC)による民間人を標的にした空爆はこの半年で5倍に増えた。SACがこうした攻撃を行うためには武器と資金が必要だが、その調達にミャンマー国外の銀行が一役買っている。 この1年間で、7カ国(シンガポール、タイ、マレーシア、中国、ロシア、インド、韓国)にある16の銀行が、SACの軍事物資調達に関連する取引を処理した。またクーデター以降に少なくとも25の銀行がミャンマーの国有銀行にノストロ口座(訳注1)を提供した。これには日本のみずほ銀行と三菱UFJ銀行が含まれる。みずほ銀行はミャンマー外国貿易銀行(MFTB)に、三菱UFJ銀行はMFTBとミャンマー投資商業銀行(MICB)にノストロ口座を提供した(p.17、表5)。

2023年4月から24年3月までの1年間にSACが国際金融制度を使って購入した武器や軍事物資は2億5300万ドル分と、22年4月から23年3月までの1年間の3億7700万ドルに比べて30パーセントほど減った。シンガポール、ロシア、中国からの輸出が減った一方で、タイが主要な軍事物資供給源となり、タイの企業からの武器や関連物資の輸出は2022年度は6000万ドル以上だったのが、2023年度には倍増して1億2000万ドル以上になった。

2024年にタイを経由して行われた取引には、ミグ29戦闘機の部品のための300万米ドル以上の支払いや、Mi-35p攻撃ヘリコプターのオーバーホールのための400万ユーロの支払いなどが含まれる。どちらも、ミャンマーの民間人の殺害に直接関与していることが示されている航空機である。またSACは、制裁対象となったミャンマー外国貿易銀行(MFTB)とミャンマー投資商業銀行(MICB)ではなく、制裁対象ではないミャンマー経済銀行(MEB)を使って取引をするようになっている。

特別報告者は「ミャンマーにおける人権を支持する国」に対し、ミャンマーの4つの国有銀行すべて(MFTB、MICB、MEB、およびミャンマー農業開発銀行)に制裁を科すよう勧告した。また外国の金融機関に対しては、ミャンマー経済銀行(MEB)を含む国有銀行との金融取引関係をすべて停止または凍結し、金融活動作業部会(FATF)(訳注2)のガイドラインなどに従い、ミャンマーに関連するすべての取引について強化されたデューデリジェンスを行うよう勧告した。「ミャンマーの国有銀行が関わる取引を行う国際銀行は、ミャンマーの民間人に対する軍事攻撃を可能にする危険が高い。そのような取引を止めるべきである。銀行には犯罪を手助けしないという根本的な義務があるが、それには戦争犯罪や人道に対する罪も含まれる」


訳注1:銀行間取引で外貨の決済を行うために、外国に現地通貨で保有する口座。
訳注2:金融活動作業部会(Financial Action Task Force)1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受け、マネーロンダリング対策の国際基準策定・履行を担う多国間枠組みとして設立された。FATFには38か国・地域と2地域機関が加盟しており、年に3回の全体会合にて、FATFの活動に関する事項を決定している。
財務省資料参照:
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/amlcftcpf/2.measures.html

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出典

ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者による報告書
Special Rapporteur on the situation of human rights in Myanmar, "Banking on the Death Trade: How Banks and Governments Enable the Military Junta in Myanmar," 26 June 2024
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/hrbodies/hrcouncil/sessions-regular/session56/a-hrc-56-crp-7.pdf
上記報告書のインフォグラフィック
https://www.ohchr.org/sites/default/files/documents/countries/myanmar/20240613-Infographics-SR-Myanmar.pdf
報告書発表にあたってのプレスリリース
“Myanmar: Report by UN expert spotlights role of foreign banks in facilitating probable war crimes and crimes against humanity,” 26 June 2024
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2024/06/myanmar-report-un-expert-spotlights-role-foreign-banks-facilitating-probable


参考
「ミャンマー軍政、兵器購入で大きく頼るのはタイの銀行 国連」cnn.co.jp、2024年7月4日
https://www.cnn.co.jp/world/35221070.html
「国連 “ミャンマー 戦闘機などの燃料輸入約3割増 制裁強化を”」NHK、2024年6月27日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240627/k10014494131000.html


(文責:メコン・ウォッチ)

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