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ナフ川大虐殺についてのロヒンギャ団体による共同声明

メコン河開発メールニュース2024年9月6日

 

ミャンマーのラカイン州で、2017年8月にミャンマー軍によるロヒンギャ・ムスリムに対する大規模殺害やレイプを伴う作戦が起きてから、7年が経ちました。この時、74万人を超える人が隣国バングラデシュなどへの脱出を余儀なくされています。

当時の状況を伝えるヒューマンライツ・ウォッチの報告

ミャンマー軍によるクーデター以降、情勢は悪化の一途を辿っている中、今年8月に再び、ロヒンギャ・ムスリムに対する弾圧が発生しました。今回は、ミャンマー軍と戦闘を続けるアラカン軍(AA)によるものと分析されています。国境付近を流れるナフ川の河岸で起きた虐殺の被害者の大半は、子どもと女性でした。

複数のロヒンギャ団体が、今回の事件の詳細や各方面への要請を記した「ナフ川大虐殺についてのロヒンギャ団体による共同声明」を発表していますので、和訳で紹介します。

原文 Rohingya Organisations Joint Statement On Naf River Massacre

また、メコン・ウォッチと5団体で共催する「連続セミナーミャンマーからの声を聞く」は、7月に「追い詰められるロヒンギャ 終わらない迫害」と題し、英国ビルマ・ロヒンギャ機構(BROUK)の会長であるトゥンキン氏からお話をうかがいました。BROUKは「ナフ川大虐殺についてのロヒンギャ団体による共同声明」の署名団体の一つです。

ウェビナーの詳細と録画はこちらに掲載しています。

連続セミナー:ミャンマーからの声を聞く第5回「追い詰められるロヒンギャ 終わらない迫害」

あわせてご覧ください。

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ナフ川大虐殺についてのロヒンギャ団体による共同声明

私たちロヒンギャの諸団体は、2024年8月5日にラカイン州マウンドーで起きた「ナフ川大虐殺」の事実関係を確定させようとしてきた。生存者や目撃者への聞き取りや、彼らが自ら語った内容の記録に基づき、これまでのところ以下の事実関係を確定した。

2024年8月5 日、ラカイン州マウンドー郡で、バングラデシュ国境を流れるナフ川の河岸に避難していたロヒンギャの民間人の少なくとも200人がドローンに攻撃や砲撃によって殺害された。この攻撃−−「ナフ川大虐殺」−−の犠牲者の大半は女性と子どもだった。彼らはアラカン軍(AA)が進攻し、ビルマ軍が増援部隊を送り、両軍間の攻撃が激化していたマウンドーの町からナフ川に逃げざるをえなかったのだった。逃げ場を失った民間人は川を渡ってバングラデシュに入るほかなかった。

多数の目撃者から聞いたところによれば、今回のドローン攻撃と砲撃はAAの支配下にある地域から発されていた。ナフ川大虐殺は、最近AAが行っている類似したドローン攻撃のパターンを踏襲している。これによりマウンドーの町の人口密集地区や周辺にあるロヒンギャの村々で毎日数十人のロヒンギャが殺された。ナフ川大虐殺はまた、ロヒンギャの民間人が、AAとミャンマー軍との武力紛争に無差別に巻き込まれていることに加え、AAとミャンマー軍によって戦略的に残虐行為の標的にされているという現地からの報告にも沿っている。

女性や子どもを含む何千人もの民間人を攻撃することは国際人道法に違反する行為であり、戦争犯罪と人道に対する罪である可能性もある。

同時に、ナフ川大虐殺を行うためにどんな武器が選ばれたかを見ると、大虐殺が「無差別」に行われたかどうかに疑問が生じるだろう。ドローンとは、攻撃の制御と精度を高めるために製造された無人航空機の一種である。その精巧さの程度に関わらず、ドローンのオペレーターは標的を特定し、必要であれば不必要な攻撃を防ぐために離陸前に位置を調節することができる。また、この数カ月間、ドローンの使用がAAのラカイン州での作戦の特徴であることを記しておくことが重要である。このため、まったく悲惨なことに、失われなくてもよいはずのロヒンギャ民間人の命が過剰に失われる結果になった。マウンドー郡では、ビルマ軍や民兵組織の兵士の一部が同郡の人口密集地域に隠れているという報告がある。大半は付近の国境警備警察の大隊の基地に集中しており、そこはナフ川の河岸からは遠い。AAとその指導部がこのような攻撃を繰り返し、ロヒンギャに対するヘイトスピーチを使用していることは、ラカイン州の民族的、宗教的マイノリティであるロヒンギャを標的にしようという意図の存在をよりはっきりと示している。これらの事実を総合すると、自分たちが何を標的にし、その標的がどこにいたかをAAが知っていたという私たちの確信は強まる。

ナフ川大虐殺の置かれる文脈

今回の攻撃は、最近AAがマウンドーの人口密集地区やロヒンギャの村々で行い、数人のロヒンギャ民間人死者を出した、類似するドローン攻撃のパターンを踏襲している。アラカン軍がマウンドーの町に向けて前進するにつれ、ミャンマー軍は人口密集地域に増援部隊を送った。戦闘が激化することを恐れ、逃げ場を失ったロヒンギャ民間人は、ナフ川の河岸に逃げた。8月5日の攻撃の犠牲者たちは、比較的安全であるバングラデシュに行くために川を渡る方法を見つけようとしていたところ、アラカン軍によって残忍に殺された。

マウンドー郡にいるロヒンギャの民間人は、アラカン軍とミャンマー軍との激しい戦闘によって身動きがとれない状態である。彼らは国際的な保護と人道支援を緊急に必要としている。

アラカン軍は、ブティダウン郡の支配権をめぐって残忍な作戦を行い、その作戦が5月18日に終わってからは隣のマウンドー郡を支配下に置くことに狙いを定めた。この作戦の最中、アラカン軍はロヒンギャの家屋や村に焼き討ちをかけて2,000人以上のロヒンギャを殺しただけでなく、ロヒンギャ民間人に対してその他の重大な人権侵害を行った。アラカン軍は、火事が起きたのはミャンマー軍による空爆のせいだとしようとしたが、この主張に対しては広く異議が唱えられている。アラカン軍は8月5日の攻撃についても関与を否定している。

数十年にわたり、ロヒンギャはすでにミャンマー軍から様々な形の暴力と抑圧を受けて苦しんできた。最近、ミャンマー軍はアラカン・ロヒンギャ救済軍(ARSA)、アラカン・ロヒンギャ軍(ARA)、ロヒンギャ連帯機構(RSO)など、自らの代理となる犯罪者集団を使ってバングラデシュのキャンプにいるロヒンギャ難民を拉致し、マウンドーでミャンマー軍とともに戦わせている。これらは犯罪者集団である。私たちはこれらの集団を強く非難し、それらの集団がロヒンギャのコミュニティの代表ではなく、ロヒンギャのコミュニティのために行動しているのでもないことを明言する。私たちは最大限強い言葉で彼らの行動を非難する。

署名団体 28のロヒンギャ団体

*共同声明にはアラカン軍(AA)、ロヒンギャのコミュニティ、国民統一政府(NUG)やミャンマー市民社会等、バングラデシュ政府、そして国際社会に対する要求や要望も含まれている。国際社会に対しては、国連安保理で緊急会合を開くこと、アラカン軍とミャンマー軍に民間人への攻撃を直ちに止めるよう圧力をかけること、難民を受け入れているバングラディシュに際する援助などが求められている。要望・要請の詳細については共同声明の原文を参照のこと。

*共同声明を出したのは英国ビルマ・ロヒンギャ団体ほか28のロヒンギャ団体で、このほかに115の団体(公開59、非公開56)が連帯を表明した。

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参考

MYANMAR Humanitarian Update No. 40, OCHA, 16 August 2024
https://www.unocha.org/publications/report/myanmar/myanmar-humanitarian-update-no-40-16-august-2024
ミャンマーで続くロヒンギャ迫害、軍事政権からも反体制の武装勢力からも BBC August 23 2024
https://www.bbc.com/japanese/articles/cdrlnxlmr1mo
ミャンマーの少数民族ロヒンギャ、ドローン攻撃で200人死亡か CNN, August 13 2024
https://www.cnn.co.jp/world/35222685.html

(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)

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