ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >官民ファンドJOIN事業の環境社会配慮情報の不開示取り消しを求め、国土交通省を提訴(第1回)
メコン河開発メールニュース2025年3月28日
メコン・ウォッチは、官民ファンドの「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」がミャンマーで行う複合不動産(通称Yコンプレックス)事業がミャンマー軍への資金の流れを生み出していることから、これまでもJOINを注視してきました。
日本政府は、国民に開かれた行政の実現を図るため「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」で、行政機関等が保有する文書について開示請求権等を定めています。しかし、多額の公的資金を使っていたとしても官民ファンドは民間資金が入るため、請求対象外です。
一方、JOINを監督する国土交通省は対象となります。 メコン・ウォッチでは、国土交通省からYコンプレックスに関する情報を得ようと、複数回の請求を行ってきました。その中で、令和5年(2023年)8月8日付で国土交通省から届いた行政文書一部開示決定(国総海推第73号)のうち、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)のミャンマー事業(Yコンプレックス事業)における環境社会配慮に関する部分が不開示となったため、この取り消しを求め、2025年2月20日、東京地方裁判所に国土交通省を提訴しました。
提訴に踏み切ったのは、この不開示決定が、これまで市民が日本政府に対して働きかけ、情報公開の実績を積み上げてきた成果を著しく毀損する重大な問題だと考えているからです。
昨年、国土交通省は有識者委員会を設置しJOINのあり方を検討しましたが、いくつかの提案がなされてJOINは存続することになっています_前述のように、JOINのあり方には議論されなかった様々な問題があります。
これまでメコン・ウォッチがJOINに関し国土交通省に対して行った働きかけや、情報公開請求とその結果について、全5回のシリーズでお伝えします。
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海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)とは
2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」のもと、「日本産業再興プラン」、「戦略市場創造プラン」、「国際展開戦略」の3つのアクションプランが作られています。JOINは、その実現のため新設された12の官民ファンドのうちの一つです(※1)。ホームページには、「JOINは、日本の知識、技術及び経験を活用し、海外の交通及び都市開発等のインフラ事業を行う日本企業の海外市場への参入促進と、日本経済の持続的な成長への寄与を目的に、官民により2014年に設立されたインフラファンドです」とあり、国土交通省が所管しています。
官民により設立されたとありますが、設立後に大量の公的資金が投じられ、現在JOINの資本の9割以上は公的資金です。しかし、民間資金が入る「官民ファンド」であるために、国の情報公開制度の対象とはなっていません。ただし、監督官庁である国土交通省にはJOINに適切な情報提供をさせ、監督する義務があります。
JOINは先ごろ、2023年度の決算で約799億円という損失を計上したことが明らかになり、大きな批判を受けました。国土交通省はJOINの今後について議論する有識者会議を設置しました。
国土交通省.「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会」について
メコン・ウォッチを含む複数の団体は、国交大臣と有識者委員会委員長に向けて、JOINがミャンマーで抱える人権問題に触れて、情報公開と人権配慮に関する制度整備などを求める要請書を出しました。
メコン・ウォッチ他.【要請書】株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)に関する情報公開と人権配慮に関する制度整備を求めます(2024年8月22日)
有識者会議の議論は4ヶ月ほどで終わってしまい、最終報告が昨年12月にまとめられました。会議でJOINによる投資の人権配慮、市民に開かれた情報公開については議論がなされなかったことがうかがえる内容です。
海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の役割、在り方、経営改善策等に関する有識者委員会. 最終報告(2024年12月)
メールニュースの第2回では、国交省のJOINの監督が不十分であることがうかがえる結果となった開示請求についてお伝えします。
注 ※1 薄井.「官民ファンドの現状と課題」.『立法と調査』参議院決算委員会調査室.
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20161201036.pdf
次回:官民ファンドJOIN事業の環境社会配慮情報の不開示取り消しを求め、国土交通省を提訴(第2回)
(文責:メコン・ウォッチ)