ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >官民ファンドJOIN事業の環境社会配慮情報の不開示取り消しを求め、国土交通省を提訴(第2回)
メコン河開発メールニュース2025年3月31日
メコン・ウォッチは、国土交通大臣がメコン・ウォッチに対し、令和5年(2023年)8月8日付でした行政文書一部開示決定(国総海推第73号)のうち、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)のミャンマー事業(Yコンプレックス事業)における環境社会配慮に関する部分の不開示取り消しを求め、2025年2月20日、東京地方裁判所に国土交通省を提訴しました。
提訴に至る経緯をご説明するため、メコン・ウォッチがJOINに関し国土交通省に対して行った働きかけや、情報公開請求とその結果について、全5回のシリーズでお伝えしています。
前回:官民ファンドJOIN事業の環境社会配慮情報の不開示取り消しを求め、国土交通省を提訴 (第1回)
今回は、事業成果に関する開示請求の件です。
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事業成果を測るKPIを国土交通省は未入手
メコン・ウォッチがJOINに働きかけを始めたのは、ミャンマー陸軍が所有する軍事博物館跡地で建設中である、ヤンゴン博物館跡地再開発(通称Yコンプレックス)事業にJOINが出資および債務保証をし、同軍を利する資金の流れを生み出しているためです。
Yコンプレックスについてはこちらをご覧ください。
ミャンマーでの軍による2021年2月クーデター以降、JOINに対しては、以下の要請書を含む、複数回の要請を行っています。
メコン・ウォッチ他.【共同要請書】ミャンマー国軍を利する日本政府の経済協力事業を直ちに停止するよう求めます(2021年4月1日)
メコン・ウォッチではJOINの活動を理解するため、監督官庁の国土交通省に対し、JOINの事業成果を測るKPI (Key Performance Indicators) の公開を求めることにしました。KPIは一般に、目標を達成するための重要な業績評価の指標とされています。
日本政府は、複数のファンド間の分野の重複や、官業による民業の圧迫のおそれなどの懸念が指摘されるようになったため(※2)、2013年5月、「官民ファンド総括アドバイザリー委員会」を設置し、組織の在り方等について内閣官房長官を主催者とする「官民ファンドの活用促進に関する関係閣僚会議」を開催、「官民ファンドの運営に係るガイドライン(※3)」を公表しています。
ガイドラインには、
2 投資の態勢及び決定過程
2.5 投資実績の評価及び開示
③政策目的との関係で効果的な運用となっているか。その運用状況を適時適切に評価、検 証できるよう、個別案件及びファンド全体において、次の点を踏まえたKPI(Key
Performance Indicators)を設定、公表しているか。
という項目があります。
JOINを所管する国土交通省がYコンプレックス事業のKPIを保管していると考え、2022年11月14日付で、「株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)のヤンゴン博物館跡地再開発事業のKPI (Key Performance Indicator)に関連するすべての文書」の開示請求を行いました。
国土交通省は、2022年12月15日付の行政文書不開示決定通知書(国総海推第198号)で「当該請求に係る行政文書については、作成・取得しておらず不存在」と通知してきました。
2022年12月15日付の行政文書不開示決定通知書(国総海推第198号)
国土交通省がKPIを入手していないとしたら、同省は監督省庁としてどのようにJOINの個別事業をモニタリングしているのか、疑問が生じる結果でした。
次回から、環境社会配慮に関する情報公開の経緯をお伝えします。
注
※2 薄井.「官民ファンドの現状と課題」.『立法と調査』参議院決算委員会調査室.
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2016pdf/20161201036.pdf
※3 「官民ファンドの運営に係るガイドライン」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/fund_kkk/pdf/guideline.pdf
(文責:メコン・ウォッチ)